Volume 26, No.1 Pages 42 - 43
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
「MRM forum 2020」会議報告
Report on Materials Research Meeting (MRM) forum 2020
(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI
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1. はじめに
12月7日から9日にかけて3日間オンラインで開催されたMRM forum 2020について報告する。MRM forum 2020は、国際会議として昨年引き続いて予定されていたMRM2020が延期になったことを受けて企画された。会議は、基調講演・合同セッション、総合討論、公開討論、テクニカル・シンポジウム、チュートリアルで構成された。一般の参加者は概ねオンラインでの参加となり、基調講演や総合討論、公開討論での発表者やパネラー等は主として会場での参加となる形式で開催された。また、東北大学の石田清仁先生、旭化成株式会社の吉野彰先生、分子科学研究所の川合眞紀先生、東京工業大学の細野秀雄先生による4つの基調講演で構成された基調講演・合同セッション(写真1)を除いては、パラレル・セッションとして会議が進行された。参加者は事務局発表の概算で約600名であった。
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写真1 基調講演・合同セッションの講演会場での講演者及び座長の先生方(左より細野先生、福山先生、川合先生、吉野先生、石田先生。写真提供:MRM2020フォーラム)
放射光利用に関連するセッションとしては、後述するテクニカル・シンポジウム以外に、JASRIの木下豊彦氏とCROSSの宮崎司氏がチューターを務めた「放射光、中性子、ミュオンの応用研究の実際と利用について」と題するチュートリアル(写真2)や東京理科大学の福山秀敏先生が企画された公開討論「“元素”から物質・材料へ」というセッション、東京工業大学の細野秀雄先生の司会による総合討論「日本の材料研究の現状と課題・その解決の糸口を探る」が開催された。公開討論や総合討論では活発な意見交換が行われた。
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写真2 チュートリアル・セッションでの会場の様子(左側が宮崎氏、右側が木下氏。写真提供:MRM2020フォーラム)
2. テクニカル・シンポジウムについて
講演の大部分を占めるテクニカル・シンポジウムは、11セッションが設けられ、セッションへの講演者・参加者は全てオンラインで参加する形式で開催された。「Environmental Literacy and Materials Technology for Establishing the Sustainable Society」と題する国際セッションを除く10セッションでは、日本語での討論となった。ここでは、筆者がテクニカル・シンポジウムのオーガナイザーを務めたTS-4「物質材料科学における量子ビームの連携利用の現状と将来」について詳しく報告する。
テクニカル・シンポジウムTS-4においては、シンポジウムのタイトルに掲げた量子ビームの連携利用だけではなく、産業利用やデータ科学を利用した解析技術、国内の放射光施設間の連携活動など幅広い分野での議論を行った。シンポジウム全体は、1件の基調講演、2件の招待講演、10件の口頭発表で構成され、2日目の午前及び午後にわたる議論が行われた。加えて、夕方にはポスター・セッションでの発表も行われた。シンポジウムTS-4午前中のプログラムは、金谷利治先生(京都大学)による「量子ビーム連携の現状と将来」と題する基調講演に引き続き、増井友美氏(住友ゴム工業(株))による招待講演などソフトマター分野における放射光と中性子の連携利用及び産学連携による成果が紹介され、今後の量子ビーム連携や産学連携による成果創出に向けての活発な議論が行われた。午後のプログラムでは、小野寛太氏(KEK)による招待講演を含むデータ科学的解析技術の量子ビーム実験への応用例の紹介や硬X線領域のXAFSや光電子分光におけるラウンドロビン活動の報告、ミュオンや陽電子ビームを用いた成果報告も行われ、ポスター・セッションも含めて、終日活発な議論がなされた。
3. 最後に
今回のMRM forumは、少なくともテクニカル・シンポジウムについて組織委員側も手探りでの準備を経ての開催となったが、筆者が参加したセッションでは聴衆からの積極的な質問やコメントで時間を超過するほどの活発な議論が続き、盛会のうちに終えることができたと思われる。一方で、筆者がオンライン形式で初めてセッションの座長を務めることになったこともあり、今回筆者が担当したシンポジウムにおいてはオンラインならではの経験をすることとなった。普段の対面式の会議と違って質疑応答の際に聴衆全体を見渡すことができないことに加えて質問者側の不慣れも相まって座長が指名する前に質問者からの質問が始まってしまったり、発表者の音声がつながらず急遽プログラムの差替えを行ったり、綱渡りの運営となった部分もあった。会議運営上の窮地を助けていただいた会場係のスタッフの皆様に改めて感謝を申し上げたい。当初予定されていたMRM2020はMRM2021として本年12月に延期され、開催される予定である。
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