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Volume 25, No.2 Pages 167 - 168

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2015年度指定パートナーユーザー事後評価報告 – 1 –
Post-Project Review of Partner Users Designated in FY2015 -1-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 パートナーユーザー制度は、SPring-8の共同利用ビームラインの更なる高度化および優れた成果の創出を推進するために、2014年度より運用しています。パートナーユーザー(以下「PU」という)は、公募・審査を経て指定されます。
 PUの事後評価は、PU審査委員会において、あらかじめ提出されたPU活動終了報告書に基づいたPUによる発表と質疑応答により行われます。事後評価の着目点は、PUとしての(1)目標達成度、(2)活動成果(装置整備・高度化への協力、科学技術的価値および波及効果、ユーザー開拓および支援、情報発信)です。今回は、2015年度指定のPU2名(指定期間:2015年4月1日から2019年3月31日まで)について、事後評価(2019年12月4日開催)を行いました。
 以下にPU審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」にPUによる紹介記事を掲載しています。

 

 

1. 森吉 千佳子(広島大学)
(1)実施内容
 研究テーマ:粉末・多粒子X線回折によるその場構造計測基盤の構築
 高度化:迅速オペランド構造計測ステーションの整備
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL02B2

(3)評価コメント
 本PU課題は、BL02B2(粉末結晶構造解析)に設置されている大型デバイシェラーカメラに一次元半導体検出器(MYTHEN検出器)を導入するとともに、迅速オペランド構造計測システムを整備し、ユーザーが使いやすいシステムを構築することを目指したものである。
 本課題の高度化に関しては、ビームラインの高度化計画に沿って、大型デバイシェラーカメラへの6連装MYTHEN検出器システムの導入と整備を進め、角度分解能の向上、計測時間の短縮などを実現した。また、この特徴を活かして、電場下、ガス吸脱着下、材料合成下、などのさまざまな試料環境下でのオペランド構造計測を実現するための整備を行い、一般のユーザーが使い易く、信頼性の高いシステムに整備した点は大変評価できるものである。
 利用実験に関しても、整備した構造計測システムを活用し、圧電セラミックスの電場誘起歪み発現機構の解明、多孔性配位高分子のガス吸着状態や合金ナノ粒子の水素吸蔵・放出、触媒特性の研究、などの多くの分野から、成果が論文として出版されており、本課題が果たした役割は大きいと判断できる。
 さらに、利用支援に関しても、研修会や学会などを通じた広報活動などを行い、新規ユーザーの開拓に成果をあげている。また、新規ユーザーなどのニーズをきめ細かく引き出した上で、PUメンバー間およびビームライン担当者との連携を積極的に図り、ユーザーニーズに沿ったオペランド構造計測システムをタイムリーに整備することに努め、ユーザーの成果創出に繋げる支援を実施したと評価できる。
 以上のように、本PU課題は、延長を含め4年間の指定期間に、装置の高度化、利用実験、利用者開拓および支援をバランス良く実施し、成果の創出に大きく貢献したと高く評価されるものである。

 

 

2. 入舩 徹男(愛媛大学)
(1)実施内容
 研究テーマ:大容量高圧装置を活用した地球および関連物質の高温高圧物性研究の推進
 高度化:高圧高温条件下での弾性率および変形・破壊挙動測定システムの高度化
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL04B1

(3)評価コメント
 本PUは、多アンビル装置を用いた高温高圧(BL04B1)ビームラインの建設当時から研究活動、利用者支援、人材育成に貢献してきた。2015A期から2018B期の6期(3年間)のPU活動では、地球マントル深部に関する研究を静的な構造・物性研究からダイナミクス研究へと進化させることを主目的として、高温・高圧条件下での弾性率および変形・破壊挙動測定システムの高度化を中心に、利用実験、利用者支援を行ってきた。
 高度化として、単色X線回折・X線透過像の同時測定を可能にする光学系の導入、試料中での“ミニ地震”を検出するアコースティックエミッション測定システムの導入、ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)を用いた超高圧の発生、超音波測定装置や高解像度CCDカメラなどの高性能化、を行ってきた。特に、ヒメダイヤアンビルの導入により従来の約1.5倍の最高圧力を達成し、さらに入射X線強度が増大することでX線回折データやX線透過像の高精度化が格段に進んだ。
 利用実験において、弾性波速度、変形・破壊、融解・元素分配などをテーマとした研究を行い、インパクトの大きな成果を創出している。超音波測定と放射光X線計測技術を組み合わせた弾性波速度測定システムを用いて、下部マントルのCaSiO3ペロブスカイトの弾性波速度の測定を行い、その成果をNature誌に発表している。その他、含水鉱物の鉄スピン転移や地球惑星深部における水の大循環に関する研究を行ってきた。また、50~300 kmの地球深部で発生する稍深発地震のメカニズムを解明するために、圧力下での岩石破壊実験を行い、カンラン石の圧力誘起相転移と地震メカニズムとの相関を議論し、Nature Geoscienceに発表している。
 利用者支援に関しては、愛媛大学の全国共同利用・共同研究拠点(PRIUS)と連携し、実験技術指導などを行ってきた。近年は、地球科学に加えて、材料科学分野でのユーザー開拓を進めてきた。その一つの成果として、世界初の透明ナノセラミックスの開発がある。
 上記のような成果から、本PUは所期の目標を達成していると判断できる。さらに、関連プロジェクトとの連携、外部資金の導入や国際連携も積極的に行ってきており、本PUは成功した活動の一つであると高く評価できる。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794