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Volume 25, No.2 Pages 169 - 170

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2017A期 採択長期利用課題の事後評価について – 2 –
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2017A -2-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 2017A期に採択された長期利用課題について、2018B期に2年間の実施期間が終了したことを受け、第66回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(2019年12月17日開催)による事後評価が行われました。
 事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
 なお、2017A期に採択された長期利用課題4課題のうち2課題の評価結果は「SPring-8/SACLA利用者情報」Vol.24 No.4(2019年11月号)に掲載済です。

 

-課題1-
課題名 低コストフレキシブル太陽電池の実現に向けた有機無機ハイブリッド材料の構造および電子状態解析*
実験責任者(所属) 宮寺 哲彦(産業技術総合研究所)
採択時課題番号 2017A0136
ビームライン BL46XU
利用期間/配分総シフト 2017A~2018B/86シフト

 

[評価結果]
 本長期利用課題は有機系の新材料や低温プロセスで作成可能なペロブスカイト太陽電池など、低コストで高効率な太陽電池開発を目指した社会的意義が高い課題であり、微小角入射X線回折法によるその場観察技術を用いて(1)レーザー真空蒸着法、及び溶液塗布法における薄膜形成過程解明、(2)コンビナトリアル成膜法を用いた高能率材料・プロセス探査を目標に実施された。(1)薄膜形成過程のその場観察においては、その場観察用成膜装置を開発し、レーザー真空蒸着法、溶液塗布法ともに成膜時のその場観察を実現し、ペロブスカイト膜形成過程の乾燥方法による違い等が明らかにされた。(2)コンビナトリアル成膜手法による材料・プロセス探査においても巨大な結晶粒塊を形成するPTCDI-C8薄膜条件を見出すなどの結果が得られている。以上のような当該長期利用課題で得られた成果は5報の論文が掲載されるとともに1報の学位論文も発表されていることから、その場測定技術開発とコンビナトリアル成膜による材料・プロセス探査法開発は、その目標を達成している。
 一方、高性能太陽電池を実現する材料とプロセスの開発が本課題の最終的な目的であるが、現段階においては目標達成に向けた有用な知見が得られているようには思えない。本課題の実施によって高能率な材料・プロセス開発に向けた技術を確立したのであるから、今後は一般課題の実施を通じて薄膜の状態把握に加えて膜の構造が発電効率等の物性に与える影響を明らかにし、高効率太陽電池実現に向けて研究を進展させることを期待する。

* 申請時にはHAXPESによる電子状態解析も計画されていたが、GIXDによる成膜過程その場観察とコンビナトリアル成膜を中心に実施するとして採択されたため、課題名にある電子状態解析は行われていない。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1] SPring-8 publication ID = 36425
K. Yamamoto: "Research and Development of New Fabrication Methods for High Performance Perovskite Solar Cells" Doctoral Thesis (Kanazawa University) (2018).

[2] SPring-8 publication ID = 36693
K. Yamamoto et al.: "Molecular Orientation Control of Semiconducting Molecules using a Metal Layer Formed by Wet Processing" Organic Electronics 63 (2018) 47-51.

[3] SPring-8 publication ID = 37111
S. Maruyama et al.: "Ionic Conductivity in Ionic Liquid Nano Thin Films" ACS Nano 12 (2018) 10509-10517.

[4] SPring-8 publication ID = 37300
Y. Akiyama et al.: "Effects of Solvent Vapor Annealing on Organic Photovoltaics with a New Type of Solution-Processable Oligothiophene-Based Electronic Donor Material" Japanese Journal of Applied Physics 57 (2018) 08RE09.

[5] SPring-8 publication ID = 37893
A. Yoshii et al.: "Fabrication of Ionic Liquid Polycrystalline Nano Thin Films and Their Ion Conducting Properties Accompanied by Solid-Liquid Phase Transition" Thin Solid Films 677 (2019) 77-82.

[6] SPring-8 publication ID = 39166
N. Ohashi et al.: "Evaluation of Exciton Diffusion Length in Highly Oriented Fullerene Films of Fullerene/p-Si(100) Hybrid Solar Cells" Japanese Journal of Applied Physics 58 (2019) 121004.

 

 

-課題2-
課題名 電気化学反応速度とHAXPESの複合同時計測を目指した新規operandoフローセルシステムの開発と燃料電池触媒への応用
実験責任者(所属) 犬飼 潤治(山梨大学)
採択時課題番号 2017A0138
ビームライン BL46XU
利用期間/配分総シフト 2017A~2018B/54シフト

 

[評価結果]
 本課題は電気化学反応測定と同時にHAXPES測定を行う技術を開発し、反応中の燃料電池触媒の化学状態を明らかにすることを目的としている。完成した装置は燃料電池触媒のみならず、二次電池、腐食、鍍金等の広い分野での利用が期待される上、一般ユーザーによる利用も提案されていることから長期利用課題として採択された。
 HAXPES装置導入前に実験室でのX線照射耐性試験を行うなど、採択時のコメントも十分尊重しながら装置開発に取り組んでいる。最終的に電気化学測定が可能なセルを用い、電流測定をしながらAuからのHAXPESスペクトル取得に成功したことは評価に値すると思うが、窓の破損による測定中断などもあり、残念ながら反応中の燃料電池触媒の化学状態を明らかにするとした目標を達成できていない。
 本長期利用課題が目標とした電気化学反応測定とHAXPESの同時測定は発展性のある技術である上、申請者も今後とも技術開発を継続する意向であることから、本長期利用課題で得られた経験や知見を活用するばかりでなく、当該技術分野の技術開発経験者やJASRI職員等からの助言や協力を得るなどして、早期に当初目標が達成できるよう努力されることを期待する。また、広い波及効果が期待できる技術であることから、測定装置に関する技術情報や開発した装置を用いて得られる燃料電池触媒の化学状態に関する成果を論文誌等で速やかに公表されるようお願いしたい。

 

[成果リスト]
 なし

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794