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Volume 24, No.2 Page 222

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

放射光利用研究基盤センターの発足
Organization of a New Center for Synchrotron Radiation Research

田中 良太郎 TANAKA Ryotaro

(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター長 Director of Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI

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1. 新組織発足
 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)利用研究促進部門は2019年3月31日をもって発展的に解消され、部門の6グループ12チームは、2室+1グループに再編され(分光・イメージング推進室、回折・散乱推進室、技術支援グループ)、これに既存の産業利用推進室、タンパク質結晶解析推進室を加えて、4室+1グループとして4月1日付けで放射光利用研究基盤センターが発足しました。

 

 

2. 背景と構成
 利用研究促進部門は、共用ビームライン26本のうち21本を担当し、これまで利用研究を促進し、ユーザー利用実験の支援を行ってきました。部門の組織構造は、手法別型(回折散乱Iグループ、分光解析Iグループなど)となっていました。
 時代のニーズに呼応する形で、利用研究促進部門の内部構造は変遷がありましたが、SPring-8の共用ビームライン26本を担う利用系の組織は、学術研究を中心とした利用研究促進部門、産業利用を中心とした産業利用推進室、そしてタンパク質結晶解析推進室という3つの組織に分かれていました。分担所掌という構造は、それぞれの組織単位が担当している領域に特化して、最適な対応がしやすいという利点がありますが、ともすれば、閉鎖的であったり、非効率であったり、情報の共有が上手く出来ないなどの組織構造に由来するマイナス面が出てくることがあります。
 今日の産業利用においては、高度な技術開発には先端的な実験計測手法が必要であり、学術系との連携が求められています。ハイスループットを目指した自動化システムも、タンパク質結晶構造解析だけに求められる測定方法ではなく、より広いアプリケーションがこれを必要とするようになってきました。また、SPring-8は1997年の供用開始から既に20年以上が過ぎ、老朽化が懸念される一方、諸外国において、放射光施設の新規計画があり、既存の第3世代放射光施設も6 GeV級低エミッタンスリングへとアップグレードされていきます(ESRFはすでにシャットダウンしてEBSへと改造中)。ビームラインの光源・光学系、エンドステーションも次世代を見据えて変革が求められる時勢となってきました。
 SPring-8においても、次期計画を視野に入れて、加速器のアップグレードに加えて、新型検出器導入、大容量実験データ収集、遠隔実験の拡大、さらなる自動化など、共用ビームラインの今後を考えていかなければならない状況となってきました。
 このような諸情勢と近未来予測のもと、放射光分野の今後の発展性・方向性を踏まえて、SPring-8の共用ビームラインのエンドステーションを担当する1部門+2室の3組織を再編した上で、これをセンターとして組織化し、JASRI研究担当理事をセンター長とする組織体制へと編成することになりました。新センターは4室+1グループ構成になっています。これは学術と産業の各領域に適した対応が出来るよう4つの室を設けてフラットな配置とし、技術支援を担当するグループをセンター直属にして、横断的な技術支援が出来るようにしたものです。これによって、全ての共用ビームラインを一元的に俯瞰する運営体制をとることが出来るようになりました。また、絶え間なく進歩する利用技術をセンターで共通基盤技術として共有し、部署間での装置運用および人員の協調が強化出来ます。今後、未来を見据えて成果創出の促進に向けて、新組織が機能するように運営を行っていきます。

 

 

 

田中 良太郎 TANAKA Ryotaro
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター長
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0950
e-mail : tanakar@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794