Volume 24, No.2 Page 145
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告3 −XAFS・蛍光分析分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – XAFS and Fluorescence Analysis –
SPring-8利用研究課題審査委員会 XAFS・蛍光分析分科会主査/(公財)佐賀県地域産業支援センター 九州シンクロトロン光研究センター Saga Prefectural Regional Industry Support Center, Kyushu Synchrotron Light Research Center
平成29~30年度(2017B~2019A期)のXAFS・蛍光分析分科会主査を仰せつかり、この期間微力ながら今井英人先生(日産アーク)、鈴木基寛先生(JASRI)と共に務めさせていただきました。本分科会が関係するビームラインは、従来からの6本のビームラインに加え、この期間中に顕微蛍光X線分析やX線顕微分光を行うビームラインBL05XU(課題募集当初はBL05SSという名称であったかと記憶しています)が新たに加わり、7本のビームラインにまたがる課題の審査を行いました。ビームライン毎の採択率はビームラインによって大きく異なり、汎用的なXAFS測定を行うビームラインでは比較的高く、多くの有用な課題を拾い上げられたと思います。一方、顕微分光や軟X線分光のビームラインでは半分程度の課題しか採択することができませんでした。これは、顕微分光や軟X線分光の実験では光学調整などの実験準備に時間を要し、また最近ではin-situ測定やoperand測定などの測定試料の環境を制御しながらの測定など、実験の特性に係わることもあるかと思います。その分、実験の意義や目的、目的を達成するための手段や手順などをレフェリーに分かり易く、かつ助長でない読み易い申請書の作成がより求められます。
分科会の議論の中で一番頭を悩ませたのが採否のボーダーライン上にある課題のうち、どの課題を採択し、どの課題を採択しないか、といった判断です。判断の基準には、各分科会のレフェリーの先生方の評価やコメントを参考にさせていただくのですが、ボーダーライン上の課題に限って評価が大きく分かれ、また、レフェリーコメントの記載がない課題も少なからずあり、分科会での議論に時間を要しました。レフェリーの先生方も忙しい通常の業務の時間を割いて審査をしていただいており、無理も言えないのですが、将来ご自身が委員になる可能性もあることを考慮していただき、可能な限りコメントの記載に協力をいただければと思います。利用研究課題審査委員会(PRC)では、レフェリーや委員の負担を如何に減らし、かつ有用な課題を採択するための方策や「本質的な課題の見極め」についての議論が相当な時間をかけて行われました。このような議論を続けていくことにより、より良い課題選定の方針が定められていくものと期待しています。
つい先日、NSLS-IIを訪問する機会がありました。NSLS-IIは誰もが知っているアメリカを代表する放射光施設です。そこでは先端的なビームラインや計測装置を見学させていただいたのですが、案内していただいた研究員に、「アメリカは4つの放射光施設に集中して先端的な研究を行っているのに、なぜ日本には先端的ではない多くの放射光施設を作るのか?」といった質問を受けました。SPring-8は誰もが認める世界最先端の放射光施設です。一方、報告者が所属するSAGA-LSはここを利用する利用者にとってなくてはならない施設です。そしてそれぞれの施設で設置目的や目標が異なります。SPring-8は常に世界最先端の放射光施設として、ハード面だけでなく課題選定などのソフト面での役割も果たしていくことを期待します。
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