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Volume 24, No.2 Pages 160 - 162

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2019年度に指定期間が延長されたパートナーユーザーの紹介
The Duration of the Designation Period of Partner Users Extended in FY2019

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 2013年度まで運用していた「パワーユーザー」制度について、2014年度より名称および一部運用を変更し、「パートナーユーザー」(以下「PU」という)として運用を開始しました。2019年度は、3名の指定期間延長申請があり、PU審査委員会による審査の結果、3名の指定期間が延長されました。延長されたPUおよびPU審査委員会からの審査結果を以下に示します。

 

 

PUの概要

・PUは、2013年度までの「パワーユーザー」の名称および一部運用を変更したもの。

・2014年度以降のPUは、共用ビームラインおよび測定技術を熟知し、放射光科学・技術の学術分野の開拓が期待できる研究者で、
1)ビームライン実験設備の開発および高度化への協力
2)上記高度化等に関連した、先導的な放射光利用の実施および当該利用分野の拡大・推進
3)上記高度化等に関連した利用者支援
のいずれも満たすユーザーを指す。

・PUの指定期間は原則2年間(PU審査委員会が必要と認めた場合には延長可。最長5年間。ただし、2019年度以降に新規指定された場合は最長4年間)。

 

[延長指定されたPU]
1. 三村 功次郎(大阪府立大学)

(1)延長後の指定期間
 2017年1月11日に指定した期間(2017A期から2018B期までの2年間)を、2017A期から2020B期までの4年間に延長する。

(2)実施内容

 研究テーマ:強相関電子系における量子臨界現象解明のための共鳴硬X線光電子分光および共鳴発光分光の複合計測技術の構築

 高度化:共鳴硬X線光電子分光計測技術の基盤開発
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(3)ビームライン:BL09XU

(4)審査コメント
 本パートナーユーザー課題はHAXPES領域の共鳴光電子分光(rHAXPES)を用いた希土類化合物などの強電子相関物質の研究を行う為、技術開発と実験ステーションの整備を目指したものである。延長申請であり、前回の申請内容と比べると、共鳴発光分光(XES)の測定系整備と複合計測が新たに追加されている。
 これまでの成果としては、高度化に関してはナローギャップのチャンネルカット結晶を設計・導入し、rHAXPESに必要な光学系と分析器の同期制御を実現している。さらにExcelのマクロで実験条件リストを記述し、自動測定できるようにした。また、解析プログラムを構築し、ユーザーが利用できるようにすると共に、プログラムの公開も予定している。上記により、新規ユーザーの敷居を下げる努力を行っている。
 本課題の利用実験としては、開発した計測システムを利用して、Yb系強電子相関物質の物理パラメータUfd値の決定を行っている。PU支援課題数は昨年度から順次増えてきており、上記の開発を行った成果だと考えられる。延長申請では希土類にとどまらず、ステンレスやTiO2光触媒への応用も考えられており、広がりを見せつつある。
 本延長申請ではXESの導入が記載されており、意欲的な内容となっている。しかしながら、XESは元の申請内容と比べると大きな変更である。また、BL39XUで利用されなくなった装置の転用であり、性能問題やrHAXPESとの同時測定の物理的意味については、更に検討するべき余地がある。また装置の転用については関係者への調整も丁寧に行う必要がある。
 以上より、委員会としては実施されたPU活動を評価し、期間の延長を承認する。ただし、本計画中のXES装置に関するビームタイムは承認できない。このXES導入に関しては別途、新たに課題申請するのが望ましい。XESに使うシフト数を考慮すると、申請シフトの約半分の24シフトを承認する。rHAXPESはPETRA IIIやSOLEILでも装置の整備が進んでおり、SPring-8において整備を進めることは意義がある。日本には強電子相関物質の研究者は多く存在しており、rHAXPESの利用を進めつつ、さらなる利用分野の拡大とユーザー開拓に注力をお願いしたい。


2. 廣瀬 敬(東京工業大学)
(1)延長後の指定期間
 2017年1月11日に指定した期間(2017A期から2018B期までの2年間)を、2017A期から2020B期までの4年間に延長する。

(2)実施内容
 研究テーマ:超高圧高温ダイヤモンドセル実験の新展開
 高度化:極限環境下におけるX線回折複合計測技術の高度化
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(3)ビームライン:BL10XU

(4)審査コメント
 高圧構造物性ビームライン(BL10XU)は、短周期型真空封止ハイブリッドアンジュレータを光源とし、高輝度・高エネルギー単色X線を利用した高圧極限環境下のその場X線回折測定をユーザーに提供している。主たる研究分野は、高圧物性、高圧材料科学および地球惑星深部科学である。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置と粉末X線回折法を組み合わせた研究手法により、数百万気圧に至る圧力領域における結晶構造解析が行われている。
 申請者のグループは、長年にわたり、BL10XUのビームライン担当者と協力しながら超高圧高温環境下での物質構造解析の技術開発に取り組み、世界の先端を行く技術を構築するとともに、地球深部科学の研究においてハイインパクトな成果を継続的に創出してきた。また、申請者が代表を務める科研費・特別推進研究のもと、新型アンジュレータをBL10XUに導入するなどSPring-8の高度化においても大きな貢献をしている。
 2017年4月に、研究テーマ「超高圧高温ダイヤモンドセル実験の新展開」でパートナーユーザーの指定を受け、BL10XUの高度化と利用実験を行ってきた。高度化として、超高圧DACとX線回折測定を組み合わせたシステムを定常的に高性能化するとともに、高圧材料科学分野における利用開拓を進めるために、極限環境下での複合計測化を行ってきた。複合計測として、放射光メスバウアー分光、ラミノグラフィー法、X線吸収分光が含まれている。さらに、試料温度3,700 Kを達成するレーザー加熱装置の光学系の改良を行っている。利用実験として、液体鉄の密度測定、地球コアを模擬した電気抵抗率・熱伝導率の測定、Fe-H系の相図の決定、マントル−コア間の水素分配、金属鉄中の軽元素の測定を行い、地球深部科学の研究を着実に進めている。
 本課題は地球深部科学の発展を目指しているが、物質・材料科学に対しても展開が期待できる。申請者が進める利用実験においてもハイインパクトな成果が期待できるデータが得られており、パートナーユーザーの指定を延長すべきと判断した。


3. 戸田 裕之(九州大学)
(1)延長後の指定期間
 2017年1月11日に指定した期間(2015A期から2018B期までの4年間)を、2015A期から2019B期までの5年間に延長する。

(2)実施内容
 研究テーマ:構造材料の高エネルギー4Dイメージング技術の完成およびそのX線回折との連成
 高度化:マイクロCTの多元イメージング化並びにマルチスケール化
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(3)ビームライン:BL20XU

(4)審査コメント
 本パートナーユーザーは、これまでSPring-8の高エネルギーX線マイクロCT技術を用いて、金属材料の変形・破壊等の問題に関する研究を行ってきた。本PU課題においては、これまでの研究を更に発展させると共に、疲労・引張・圧縮試験機、高温用材料試験機を用いて疲労破壊のその場観察を行う4Dイメージングの実験・解析技術を、施設側と共同して開発することを目的としてきた。
 これまで4年間の研究においては、(1)新型材料試験機を用いた引張試験・疲労試験中のその場観察による4D-CTの実現、(2)X線CTと細束X線ビームを用いた回折コントラストトモグラフィーによる多結晶イメージング、(3)定量解析技術や画像応用解析技術の開発、の3つのテーマを中心に行われてきた。(1)については、新型試験機を利用して鉄鋼、チタン、アルミニウムなど各種合金の疲労破壊のその場観察が行われており、一般利用者にも利用され成果が得られている。(2)についても、鉄鋼やアルミニウム合金において3D結晶方位分布が得られており、研究成果があがっている。(3)では位相回復等の4D解析に必要なソフトウェアを開発、整備し、他利用者にも提供し利用支援を行っている。これらの実績から、PUの役割は十分に果たされていると判断できる。
 今後1年間の実施計画の中心課題として、フレネルゾーンプレートを用いた結像顕微鏡の高度化が挙げられている。これは中尺ビームラインの特長を活かして超高倍率を狙うものであり、SPring-8にとって最重要な開発テーマのひとつである。現状でも高分解能画像が得られているが、金属材料における微少な密度差を可視化するためのコントラストが不足しており、その改善を試みる。またマイクロビームX線回折においても、1ミクロン程度のさらなる細束化による実用材料組織への対応と計測の高速化を目指している。これらが達成され、成果を広く利用者にアピールすれば、本ビームラインの大幅な利用拡大が期待できることから、更なる1年間の期間延長は妥当であると判断される。

 

 

以 上

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794