Volume 24, No.2 Pages 150 - 151
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告7 −長期利用分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Long-term –
SPring-8利用研究課題審査委員会 長期利用分科会主査/関西学院大学 理工学部 School of Science and Technology, Kwansei Gakuin University
2017、2018年度の2年間にわたり、長期利用分科会の主査を担当しました。本分科会での審査の概要を報告いたします。
長期利用課題は、現在、4期2年間有効の課題です。一般課題よりも課題期間が長いため、一般課題の審査基準に加えて、
(1)長期の研究目標、研究計画が明確に定められていること。
(2)SPring-8を長期的、計画的に利用することによって、以下のいずれかが期待できること。
1)科学技術分野において傑出した成果
2)新しい研究領域および研究手法の開拓
3)産業基盤技術の著しい向上
の2つの点が審査で考慮されます。申請課題の審査は、書類審査と面接審査の2段階で行われ、採択された課題は実施後に事後評価を行っています。
本分科会は、今期、施設外委員7名と施設内委員4名の全11名の委員からなり、課題選定の書類審査、面接審査と実施課題の事後評価に加え、実施中課題のビームタイム(BT)配分を担当しました。
本分科会の担当項目はいずれも重要でありますが、課題採択は、SPring-8の目玉となる成果創出にかかわる案件であるうえ、長期間(2年間)にわたり一定のBTを配分することから、一般課題へ提供できるBTにも影響するため、特に慎重な議論が必要な案件です。SPring-8の利用状況を見ると、近年、利用ニーズが一層増加し、また、計測手法の発展や新手法の開発も進み、多くのビームライン(BL)でBTの逼迫が顕在化してきております。このため、本分科会では、今期、それぞれのBLの状況を踏まえたうえで、長期利用課題の必要性のみならず、質の高い一般課題へのBT確保も考慮して、慎重に課題採択について検討しました。採択された課題に対するBT配分に関しては、長期的、計画的に実施されている課題であることから、計画に変更が起こらないよう、できる限り申請BTを尊重して配分しました。その議論を経て、今期2年間で採択した長期利用課題と利用BLは以下の通りです。
[2018A期採択課題] | |
脇原 徹 課題 | BL04B2 |
清水 克哉 課題 | BL10XU |
Hooper Stuart 課題 | BL20B2 |
高橋 嘉夫 課題 | BL37XU、BL01B1 |
藤田 誠 課題 | BL38B1、BL41XU |
文 石洙 課題 | BL40XU |
豊島 近 課題 | BL41XU |
濡木 理 課題 | BL41XU |
[2019A期採択課題] | |
西堀 英治 課題 | BL02B1 |
𡈽山 明 課題 | BL20XU、BL47XU |
高橋 幸生 課題 | BL27SU |
課題実施後の研究成果と事後評価に関しては、それぞれ、課題責任者による報告と本分科会による事後評価報告がSPring-8/SACLA利用者情報に掲載されているので、詳細はそれらを参照していただきたいと思います。全般的には、長期的、計画的にBTを活用することによってはじめて得られる成果が達成されていました。ただし、課題によっては、研究の時間スケールと課題期間の時間スケールの違いから、成果発表が十分ではないと評価されたものもありました。長期利用課題には、科学技術分野において傑出した成果、新しい研究領域および研究手法の開拓、産業基盤技術の著しい向上が求められていますので、インパクトのある成果発表と情報発信を期待します。
今期の2年間は、課題期間が3年から2年間へ短縮されたり、募集時期が年2回から年1回に減ったりした影響が出てくる期間となり、課題審査が集中し、一度に多くの課題を審査する必要がありました。このような状況で、申請課題に対する書類審査と面接審査、BT配分から事後評価まで、長期利用課題のあるべき姿とSPring-8におけるBT配分に対する位置づけを踏まえて慎重に議論していただいた10名の委員に感謝いたします。また、委員会の議事がスムーズに進むように万全の事前準備をしていただいた事務局に感謝いたします。
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