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Volume 24, No.2 Page 149

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告6 −社会・文化利用分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Social Interest –

鈴木 謙爾 SUZUKI Kenji

SPring-8利用研究課題審査委員会 社会・文化利用分科会主査/(公財)特殊無機材料研究所 Advanced Institute of Materials Science

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SPring-8

 

 社会・文化利用分科会は2015A期から2018B期まで8期にわたり領域指定型重点領域に指定されましたが、今回は後半の3期(2017B期、2018A期、2018B期)の課題審査について報告します。

 

 

1. 申請課題数と採択課題数
 下表に示しますように、申請課題数も採択課題数も一定していますが、前半の5期に比して約20%落ち込んでいます。しかし、表中の( )に示す一般課題として採択された課題数はむしろ増加しています。

申請課題数 採択課題数
2017B 17 17 (4)
2018A 17 17 (2)
2018B 18 18 (3)

 

 

2. 分野、測定手法、ビームライン
 申請課題の分野とその比率は凡そ下記のように大別されます。
・歴史的人工物としての文化財(絵画、刀剣、佛像、土器、陶器、ガラス、古代鉄、・・・):70%
・社会生活に関連が深い分野(健康、安全、環境、福島原発放射能汚染、・・・):10%
・自然造形物(生命進化、古生物化石、骨、古代米、・・・):20%
 希望の測定手法の主なものはCT、XRF、XAFS、XRD等であり、使用されたビームラインはBL01B1、BL02B2、BL08W、BL20B2、BL20XU、BL27SU、BL28B2、BL37XU、BL43IR、BL47XUです。

 

 

3. 審査の問題点
 一般課題審査における平均評価点は年々着実に向上していますが、最終の2018B期においても一般課題として採択レベルに達している課題はようやく50%であり、少なくとも70~80%に上がるまでは重点領域指定の継続が望まれます。
 一般課題レフェリー審査においてしばしば低い評点が付けられる理由の一つに、文化財を測定する価値は認めるが緊急性を要しないので、ビームタイムの余裕があるときに採択すればよいという考え方があります。
 2018B期の専門分野レフェリーと一般課題レフェリーによる科学技術的妥当性の評価点の相関を調べた八木プロットから、両者の評価には殆ど相関が無く、かつ一般評価点が専門評価点よりも4.0満点で凡そ0.5低い傾向が読み取れます。現状の専門分野レフェリーと一般課題レフェリーの2本立て審査が果たして合理的に機能しているか否かは注意深く検討する必要があると思います。

 

八木プロット

 

 

4. コメント
 申請書の記述不備、一部ユーザーの固定化、成果の国際的発信の不足等々の問題点が顕在化しているので、可能なところから有効かつ速やかな改善策を講ずることが必要でしょう。

 

 

 

鈴木 謙爾 SUZUKI Kenji
(公財)特殊無機材料研究所
東北大学 名誉教授
〒982-0252 仙台市太白区茂庭台2-6-8
TEL : 022-281-0572
e-mail : k.suzuki@aims.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794