Volume 23, No.4 Pages 428 - 430
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
2018A期におけるSPring-8/SACLAユーザー要望等について
SPring-8/SACLA User Requests in 2018A
SPring-8及びSACLAでは、各ビームタイム終了後に実験グループごとに「ビームタイム利用報告書」を提出いただいております。この報告書には、その実験の概要、次回の利用者へのアドバイスや施設に対する要望、提案等を記入いただいております。
2018A期における要望等の状況は下記のとおりです。これら要望等と、それに対する施設側の回答(内容により、必ずしも全てではありません)につきましては、User Informationで公開されています。
1. 2018A期 要望等全体概要
2018A期 | 実施 課題数 |
利用実験数 (報告書数) |
うち、要望等コメントがある*1報告書数 | ||
技術的要望等 | 施設他要望等 | その他(お礼) | |||
SPring-8共用BL | 755 | 1,118 | 74 | 66 | 103 |
SACLA共用BL | 55 | 57 | 11 |
*1「なし」「None」等のコメントを除く。
<SPring-8共用BL技術的要望等(計74件)の研究分野/手法*2別内訳>
手法\分野 | 生命科学 医学応用 |
物質科学 材料科学 |
化学 | 地球・ 惑星科学 |
環境科学 | 産業利用 | その他 |
X線回折 | 10 | 8 | 11 | 2 | 2 | ||
X線散乱 | 4 | 1 | 3 | ||||
X線非弾性散乱 | 5 | 1 | |||||
X線・軟X線吸収分光 | 1 | 7 | 1 | 2 | 3 | ||
光電子分光 | 4 | 1 | |||||
X線イメージング | 1 | 4 | 1 | ||||
特殊環境実験 | 2 |
*2課題申請時の利用者申告ベース。
2. 2018A期 要望等の内容(一部抜粋)
(1)技術的要望等
○新しい検出器(Eiger 16M)になったが、BSSの仕様が追いついていないようである。同じ結晶から異なる2箇所での測定を試み、従来通り1箇所目を#101-200、2箇所目を#201-300とファイル番号を指定してそれぞれ測定を行った。だが、格納されたh5ファイルでは両方共に#1-100となってしまい、同一の名前の異なるファイルが2種類できてしまい混乱を招いた(Eiger 16Mでのファイルのナンバリングは測定毎に必ず#1から始まるようであり、そもそもナンバリングを自分で設定すること自体に意味がないようである)。幸い、データのサーバーへのアップロードの際に、上書きを回避する機構が働いたので、データ自体はレスキューされていたので、大きな問題にはならなかったが、改善を願いたい。
【生命科学/X線回折】
○本実験では、ループに散在した多数の微結晶から連続的にXAFSを測定する実験を行った。測定毎にセンタリングとジョブの入力が必要になるため、単純な実験に関わらず頻繁に入力が必要なため大変な実験となっていた。そこで、事前に複数箇所の座標を登録し、測定ではその座標に順に自動的に移動して、同じXAFS測定のジョブを繰り返す仕組みの導入を要望としてご提案します。具体的には、BSSのアドバンスドモード測定に実装されているマルチセンタリングで座標を登録して、回折像を順に撮影するのではなく、XAFS測定を、位置を変えて順に実行できればと思っております。
【生命科学/X線回折】
○検出器の素子が、ひとつ具合が悪いようです。全体的に分解能も落ちているようです。整備を望みます。また、超伝導マグネットの部品の具合がわるいようです。整備を望みます。
【物質科学・材料科学/X線非弾性散乱】
○クイックスキャン測定において、測定範囲を変えるとXANESのエッジエネルギーがシフトしてしまうことに気づいた。測定範囲を一定にしていれば問題ないことを確認している。モノクロメータの不調によるものと思われる(モノクロメータが再現よく動かない)。測定を行う上で致命的なので改善して欲しい。
【物質科学・材料科学/X線・軟X線吸収分光】
○BL02B1に今年度から導入された半導体二次元検出器(DECTRIS PILATUS 3X)を初めて使用しました。シャッターレス測定モードでは、短時間で計測ができるので、同一試料で圧力変化など外場条件を変化させたデータが連続的に測定可能となると思いました。さらに使い勝手が良くなるようなユーザーインターフェースの整備をお願いいたします。
【化学/X線回折】
○BL40XUで今期より利用可能となったEigerX1M検出器が、極微小結晶の迅速測定に非常に大きな威力を発揮することを実感できました。Eigerが書き出すDectrisの画像ファイル形式は、読み込むためにフォーマット変換の必要があり、ビームライン担当者のご尽力で開発された変換プログラムを使用することで、画像データの取り扱いが可能となります。現況ではこの変換が必須であり、変換プログラム開発のご苦労をお察し致しますと共に感謝申し上げます。Eigerによるデータ処理周りのソフトウェアはさらなる改善が必要で、今後、より汎用性の高いフォーマット形式に簡便に変換することができれば、施設外(大学等)で再度積分をしたり検討したりすることが可能となり、より威力を発揮するものと思われます。指数付けや積分するための利用実績と信頼度の高いソフトウェア(APEX3など)をビームラインで利用できるようになると、その場での結晶格子定数の決定等が行えるようになり、より一層効果的にEigerを迅速測定に使用できることとなると思います。
【化学/X線回折】
○モノクロ結晶まわりで不調があるようで、入射強度と透過強度の比が一定にならない症状が2時間程度続き、実験に差支えが出ている。改善を要望する。
【地球・惑星科学/X線回折】
○CT-XRD-CTの切り替えが早くなると素晴らしいです。
【産業利用/X線イメージング】
○サンプルが多いため小角散乱データの透過率補正やバックグラウンド補正等のデータ処理にかなり時間と労力を使っており、これが自動的にできるとスムーズに解析、考察に入れるのに、と利用のたびに思っている。そういうソフトやエクセル、IGORのマクロがあれば紹介いただけるとよいと思う。
【産業利用/X線散乱】
(2)施設その他要望等
○高圧ガスは基本的に使わないので講習を免除していただけると助かります。また、講習開始時間についてですが、測定当日の来所のため、交通機関の都合から昨年のように講習開始9時15分からがあるとちょうど10時くらいから測定にかかれるのでご検討いただければと思います。
○本実験中2回目のビームアボート発生の際には音声によるアナウンスが一切なかった。また、chatにも何も情報がなく、運転状況のステータスも入射中になっているのみで、状況が全く把握できなかった。原因調査中でも良いので、何らかのアナウンスをして頂ければ、実験計画を検討する際の参考にもなりますし、精神的にも助かります。
○蓄積リング棟内の移動用自転車が、ハンドルが曲がっていたりブレーキが効きづらい自転車があって危険なので改善していただきたいです(自転車はあった方がいいと思っています。完全に撤去してほしいわけではありません)。
○共同実験者が各自で交流棟の宿泊予約をできるようにして欲しいです。
○北管理棟は距離があるため、来所の手続きも中央管理棟で行えるようにしてほしい。
○夜、実験棟から研究交流施設までが暗すぎる。
○コピー機が減って、実験ノートのコピーが不便になった。
○宿舎にウォシュレットが欲しい。
○ビームライン外のジュースの自販機近くにカップ麺やパンなどが売ってある自販機が欲しい。
○売店は土日の夕方も営業していただけると助かります。
3. 要望等及び施設側回答の公開場所
SPring-8/SACLA User Informationのいずれからも検索・閲覧ができます。
[検索・閲覧手順]
① 「ビームタイム利用報告書(要望・回答)検索」
② 利用期、ビームライン番号等を入力
③ 「検索」