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Volume 23, No.4 Pages 369 - 371

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第2回International SACLA Users’ Meeting会議報告
Report on the 2nd International SACLA Users’ Meeting

大和田 成起 OWADA Shigeki[1]、登野 健介 TONO Kensuke[1]、犬伏 雄一 INUBUSHI Yuichi[1]、籔内 俊毅 YABUUCHI Toshinori[2]

[1](公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI、[2](国)理化学研究所 放射光科学研究センター XFEL研究開発部門 XFEL Research and Development Division, RIKEN SPring-8 Center

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SACLA

 

1. はじめに
 2018年9月6日から7日にかけて、SACLA Users' Meeting 2018がSACLAで開催された。SACLAの利用者会議としては通算で4回目となるが、前回(2017年12月開催)より海外からの参加者にも間口を広げ、国際会議となって今回が2回目となる。開催の直前に西日本を中心に甚大な被害をもたらした台風21号による交通機関の混乱にも関わらず、日本国内からの107名に加え海外からも7名が参加し、XFEL利用研究の在り方について活発な議論が交わされた。なお、本会議は、SACLAの利用実績を持つユーザーだけでなく、ポテンシャルユーザーも参加可能となっている。

 

写真1 参加者の集合写真

 

 

2. 会議の内容
 第1日目は午前中に施設見学、午後からは全体セッションとして、施設の現状報告(2件)と招待講演(3件)が行われた。今回初の試みとなるポスターセッションでは、口頭発表では紹介しきれなかった実験設備の詳細が施設側担当者から発表されたほか、利用者側からもSACLA利用成果に関する16件の発表が行われた。第2日目には、“Biology”、“Ultrafast Chemistry and AMO(Atomic Molecular and Optical science)”、“Material Science”および“XQO(X-ray Quantum Optics)and HEDS(High Energy Density Science)”の4つの分野に分かれてのブレイクアウトセッションが行われた。ブレイクアウトセッションでは、利用研究の今後の方向性や、施設の共用機器・実験環境などの運用や開発に関する要望などについて、それぞれの専門分野の観点から議論が行われた。続くショートプレゼンテーションセッションでは、施設への要望や新しい実験環境の提案が行われた。
 以下では、各セッションの内容について簡潔にまとめたい。

 

第1日目
 まず、施設側からの利用者への情報発信として、SACLA基盤開発プログラムについての説明(矢橋)と、最新のビームライン状況に関する報告(登野)が行われた。SACLA基盤開発プログラムは、利用者の要望に応えながらSACLAの特色をさらに伸ばし、ユニークな成果の創出につなげることを目的として、今年度より新たに募集が開始された。詳細は下記サイトを参照されたい(2018年度の募集は終了しました)。
http://xfel.riken.jp/topics/sacla_basic_development_2018.html

 

 続いて、SLAC(アメリカ)からSebastian Boutet氏、PSI(スイス)からChristopher Milne氏、Sogang大学(韓国)からHyunjung Kim氏の3名を招いての招待講演が行われた。招待講演では、生命科学や超高速化学、材料科学などの分野について海外施設の動向なども交えた講演が行われた。
 第1日目の最後にはポスターセッションが開催された。施設からは11件の発表があり、BL1~BL3の最新情報に関する発表が行われた。とくに、前回(2017年12月)からの更新情報として、波面分割光学系の常設化(BL3)、自己シード型FELの開発(BL3)、500 TWレーザーシステムの本格運用の開始(BL2)、タイミングモニターの導入(BL1)など様々なアップグレードに関する情報が追加され、利用者の関心も高かった。また、利用者からも16件のポスター発表があり、最新のSACLA利用研究成果について、施設側、利用者を交えて活発な議論が行われた。

 

写真2 ポスターセッションの様子

 

 

第2日目
 ブレイクアウトセッションでは4つの分科会を同時開催した。それぞれの分科会では3~5名の講演者から最新のSACLA利用成果や海外施設の動向についての発表があった後、利用支援のあり方や実験環境の高度化についての議論が行われた。また、ショートプレゼンテーションでは、予め募集した5件の口頭発表を通じて、新しい実験の提案や施設への要望などがあげられた。午後には、それぞれのブレイクアウトセッションを総括するサマリーセッションが開催され、全参加者による分野横断的な議論が活発に交わされた。

 

写真3 ブレイクアウトセッションの様子

 

 

“Biology”
 シリアルフェムト秒結晶構造解析などにおける利用支援に対する施設側への要望といったテーマの議論が行われた。とくに現在の構造生物学分野は、タンパク質の結晶化に時間的・人的リソースを費やす必要があるため、その後のXFELを利用した測定を容易かつ確実に進めていくには、どのようにすれば良いのかという観点から議論が進められた。また、MPCCD検出器の画像データ量が非常に膨大なため、施設側による保存データの取り扱いに関するポリシーの策定の必要性についても議論された。

 

“Ultrafast Chemistry and AMO”および“Material Science”
 これらは異なる分科会ではあったが、同期レーザーを併用したポンプ・プローブ実験を共通して行うこともあり、同期レーザーやXFELの高度化についての要望が議論された。装置開発にはSACLA基盤開発プログラムを有効活用したいという意見があがった。また、要望の中には、すでに実現されているものも幾つかあり、施設と利用者の情報共有をどのように行うのかが課題となった。

 

“XQO and HEDS”
 人材育成(とくにハイパワーレーザー関連)や、ハイパワーレーザーの利用についての議論が行われた。SACLAのハイパワーレーザーは世界的にも稀有な設備であり、その運用と利用、実験技術開発といったテーマについては、施設側だけでなく利用者側も巻き込んで議論すべき、との意見が出された。

 

 

3. まとめ
 SACLA Users' Meetingは、単なる学術発表の場ではなく、利用者と施設の情報共有の場を目指して開催された。ポスターセッション、ブレイクアウトセッションやそれに続くサマリーセッションを通じて、それらの目的は果たせたように思える。一方で、ホームページなど、会議以外の場における施設からの情報発信のあり方に関する課題も明らかになった。本会議での利用者からの要望に対して施設側がどのように答え、また、施設側からの情報を利用者がどのように活かしていくのか、注目していただきたい。施設とユーザーコミュニティーが相互に刺激を与えながら、ともに発展していくための礎として、SACLA Users' Meetingは今後も毎年開催されることとなっている。次回は2019年の8月もしくは9月頃に開催される予定である。
 最後に、本ミーティングに関わっていただいた皆様に厚く御礼を申し上げ、SACLA Users' Meeting 2018の報告とさせていただく。

 

 

 

大和田 成起 OWADA Shigeki
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0992
e-mail : osigeki@spring8.or.jp

 

登野 健介 TONO Kensuke
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0992
e-mail : tono@spring8.or.jp

 

犬伏 雄一 INUBUSHI Yuichi
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0992
e-mail : inubushi@spring8.or.jp

 

籔内 俊毅 YABUUCHI Toshinori
(国)理化学研究所 XFEL研究開発部門
〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0802
e-mail : tyabuuchi@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794