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Volume 23, No.3 Pages 246 - 249

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第18回SPring-8夏の学校を終えて
The 18th SPring-8 Summer School

八木 直人 YAGI Naoto

SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 SPring-8 Summer School Executive Committee, Chair

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SPring-8

 

夏の学校の概要
 「第18回SPring-8夏の学校」は、2018年7月8日(日)~7月11日(水)の3泊4日の日程で、全国21校から60名の学生の参加を得て、放射光普及棟およびSPring-8蓄積リング棟を会場として開校されました。この夏の学校は、SPring-8サイトに施設を持つ各機関((公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所放射光科学研究センター、日本原子力研究開発機構・物質科学研究センター、量子科学技術研究開発機構・放射光科学研究センター)と、これらの機関と連携大学院協定を持つ大学(兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科/産学連携・研究推進機構 放射光ナノテクセンター、関西学院大学大学院理工学研究科、岡山大学大学院自然科学研究科)およびSPring-8サイトにビームラインを持ちそこで教育を行っている大学(東京大学放射光分野融合国際卓越拠点、大阪大学・未来戦略光科学連携センター・蛋白質研究所・核物理研究センター)が主催して、ビームタイムや教官を供出し合って行ったものです。校長は東京大学大学院新領域創成科学研究科の雨宮慶幸先生にお願いしました。実行委員会は主催団体のスタッフで構成され、事務局はJASRI利用推進部が行いました。なお、主催大学の中には夏の学校への参加を講義として単位認定しているところもあります。

 

図1 講義風景

 

 

カリキュラムについて
 夏の学校では通例として、初日に3講座、2日目に4講座の講義を行い、その後の2日間に2テーマの実習を行っています。また、SACLAとSPring-8実験ホールの見学、さらにはSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学が行われました。参加者間の交流を深めるため、自己紹介や懇親会も行っています。今年のスケジュールは以下の通りでした。

 

第18回SPring-8夏の学校 日程表 − 2018年7月8日(日)~11日(水)

 

 

ビームライン実習について
 実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。

BL01B1 “その場”XAFS計測
(加藤和男・伊奈稔哲・宇留賀朋哉(JASRI))
BL02B1 単結晶構造解析の入門
(野上由夫(岡山大学)・杉本邦久・安田伸広(JASRI))
BL04B1 大容量高圧プレスと白色X線を用いたX線回折実験
(肥後祐司(JASRI))
BL04B2 高エネルギーX線を用いたガラス・液体の構造解析
(尾原幸治(JASRI)・廣井慧(NIMS))
BL07LSU 推理の放射光元素分析
(松田巖・原田慈久・和達大樹(東京大学))
BL08B2 XAFSによる担持試料酸化及び還元反応のその場観察
(李雷・篭島靖・横山和司(兵庫県立大学))
BL13XU サブミクロン集光放射光ビームによる局所領域回折実験
(木村滋(JASRI/岡山大学)・隅谷和嗣(JASRI))
BL14B1 放射光を利用した高温高圧合成
(齋藤寛之・城鮎美(QST))
BL14B2 XAFS分析の基礎
(本間徹生・大渕博宣(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))
BL19B2 粉末X線回折
(大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))
BL19LXU 放射光時間分解X線回折法
(田中義人(兵庫県立大学))
BL20B2 放射光X線画像計測の基礎
(星野真人・上椙真之(JASRI))
BL23SU 放射光光電子分光による物質の電子状態分析
(川崎郁斗・藤森伸一(JAEA))
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光
(横谷尚睦(岡山大学)、室隆桂之(JASRI))
BL33LEP GeV光ビームと物質の相互作用
(與曽井優・郡英輝・堀田智明・中野貴志(大阪大学))
BL38B1 単結晶回折(タンパク質)
(熊坂崇(JASRI/関西学院大学)・馬場清喜・河村高志(JASRI))
BL39XU 硬X線磁気円二色性分光による磁性体試料の解析
(鈴木基寛・河村直己・水牧仁一朗(JASRI))
BL40B2/BL45XU X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析
(八木直人・関口博史(JASRI)・引間孝明(理研))
BL43IR 顕微赤外分光による種々の組成分布解析
(池本夕佳・森脇太郎(JASRI))
BL44XU 単結晶回折(タンパク質)
(山下栄樹・高木賢治(大阪大学))
BL46XU 硬X線光電子分光
(小金澤智之・安野聡(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))

 

図2 実習風景

 

 

 今年は豪雨の影響で交通機関が止まったため、初日の講義に間に合わない学生も多く、参加キャンセルもありました。しかし初日の夕方には参加者が全員揃って、自己紹介と懇親会にのぞむことができました。
 今回は、夏の学校では初めてSACLAの収納部を見学させていただきました。最新鋭の加速器やアンジュレータを見て、参加者からは、「圧巻だった」、「さすが日本の技術」などの感想が聞かれ、学生に科学技術の最先端に触れてもらうことの重要性を再認識しました。
 2016年、2017年と、夏の学校は参加申込みが100名以上あり、苦労して減らして参加者を90名程度に絞っていたのですが、今年は参加申し込みが70名程度しかなく、最終的にキャンセル等で60名での開催となりました。そのため実習も少人数で行うことができ、教育効果という面では充実しており、また事務局も個々の参加者の把握が容易で安心して運営が行えたというメリットがありました。しかし、参加希望者の減少が大学でのSPring-8への関心の低下によるものであるならば、重大な問題です。今回の夏の学校では参加大学数は参加者数とほぼ比例して減少していますが、その分布が東は筑波大学から西は九州大学までの範囲となっており、地方大学からの参加が減少している傾向が見受けられます。来年度はこの点を考慮して夏の学校の企画を進める必要があると思われます。

 

 

謝辞
 熱意のこもった講義をしていただいた講師の先生方、2日間にわたる実習を熱心に指導していただいた実習担当の皆様、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、特に大人数の参加者にSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学を可能にしていただいたJASRI光源基盤部門の方々、SACLA収納部の見学にご尽力いただいた理研の井上伊知郎氏および関係者の方々に感謝致します。また、事務局としてウェブ作成から懇親会・バーベキューのお世話までご努力いただいたJASRI事務局担当者の方々にも感謝したいと思います。

 

 

八木 直人 YAGI Naoto
(公財)高輝度光科学研究センター
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : yagi@spring8.or.jp

 

 

 

 

第18回SPring-8夏の学校に参加して

 

 

東京大学 新領域創成科学研究科
石原 正輝

 

 

 私の所属する研究室は、SPring-8にて実験を行う機会が多くあります。私自身は今年修士1年として入学したばかりということもあり、SPring-8での実験どころか、その場所にさえ行ったことがないという状況でした。そこで、今後SPring-8を利用することが多くなることも見据え、第18回SPring-8夏の学校に参加しました。
 SPring-8夏の学校は主に、講義と実習、実験施設見学、そしてSPring-8の研究員、他の参加者の方々との交流会から構成されます。まず、講義では放射光やSPring-8に関する基礎知識とその応用などを学びました。講師の方々は、放射光を主に扱っているという点では共通する部分があるものの、様々な研究テーマを持っており、各講義で自分の研究分野に即した応用的な事柄も説明してくださいました。放射光についての基礎知識はもちろんですが、実際の研究も交えた講義は非常に勉強になりました。
 実習では、BL40B2(X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析)と、BL19LXU(放射光時間分解X線回折法)を選択しました。BL40B2ではX線溶液散乱法を用いたタンパク質の構造評価などを行いました。普段の私の研究テーマと似ていたこともあり、これから私が行う研究にもプラスになるようなことを、技術的、そして理論的側面の両方から学ぶことができました。BL19LXUでは、パルスレーザーとX線を用いた時間分解ポンプ・プローブ測定を行いました。自分の専門分野ではないものの、わかりやすい説明をしていただいたおかげで興味を持ち、積極的に実習に取り組むことができました。X線を使用している点は同じでも、普段の研究とは違う分野にも触れることができるのは、この実習の非常に良い点だと感じました。
 また、施設見学では、2日目にSACLAとSPring-8実験ホール、3日目には加速器収納部へ行かせていただきました。引率者の方が実験装置やそこで行っている実験について丁寧に説明してくださり、講義で学んだ内容と相まって理解がさらに深まりました。特に印象的だったのは、加速器収納部見学です。というのも、単にSPring-8を訪れたり実験したりするだけでは気づけない、SPring-8の舞台裏を覗くことができたからです。さらに、そこで働いている技術者の方々からSPring-8の構造や歴史などを聞くことができ、得難い経験をさせていただきました。
 夏の学校ではSPring-8の研究員の方々や他の参加者たちと交流する機会も多くありました。1日目には自己紹介プレゼンと懇親会、3日目にはバーベキューが行われました。夏の学校の参加者のバックグラウンドは多様で、出身大学が異なるのはもちろんのこと、学年や研究分野も人それぞれです。中には、放射光は普段使わないという人さえいました。このような参加者たちと自分のやっている研究について情報交換することは非常に良い刺激になり、今の研究のモチベーションにも繋がっています。私が夏の学校に参加して一番良かったと感じる点は、こうした交流会を通して、同年代の学生と親睦を深めることができ、交友関係を大きく広げることができたことです。

 

図3 懇親会風景

 

 

 最後に、夏の学校という、研究と親睦の両面を深める機会を与えてくださった運営の方々に感謝申し上げます。開校前日は大雨のため開校が危ぶまれましたが、結果的にスムーズに予定が進行したのは運営の方々のフォローによるところが大きかったと思います。また、講師やビームライン担当者の方々にも大変お世話になりました。ここに改めて感謝申し上げます。

 

図4 記念写真

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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