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Volume 22, No.4 Pages 327 - 330

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

38th International Free Electron Laser Conference会議報告
Report on FEL’17 (38th International Free Electron Laser Conference)

金城 良太 KINJO Ryota

(国)理化学研究所 先端光源開発研究部門 Innovative Light Sources Division, RIKEN SPring-8 Center

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SPring-8 SACLA

 

1. はじめに
 2017年8月20日から25日、アメリカ合衆国のロスアラモス国立研究所(LANL/Los Alamos)に近いニューメキシコ州の州都サンタフェにおいて38回目となる自由電子レーザーに関する専門国際会議38th International Free Electron Laser Conference 2017が開催された[1][1] http://fel2017.lanl.gov/。ホストは、1993年に光陰極RF電子銃と46 MeVライナックからのビームを使った3次光発振でUV-FELを実現した、ロスアラモス国立研究所である。FEL Conferenceは2015年の37回(韓国太田市、PAL主催)から、それまでの毎年の開催から2年毎の開催となったため、2年ぶりにFELの専門家が一堂に会する会議となる。
 サンタフェはスペイン人によって築かれたアメリカの中でも最古の都市のひとつであり、合衆国、アメリカン・インディアン、メキシコ、スペインの文化を融合した独自の文化を持ち、多くの建物はプエブロを模した特徴的なアドビ風建築である。食文化はメキシコ料理をアメリカナイズしたTex-Mexに近い。標高2,000メートルを超えているため、常におならが出そうな感覚である。会場はSanta Fe Conference Centerで、参加者は徒歩圏内のホテルに政府料金で滞在することが可能である。ちなみに岡山県津山市の姉妹都市である。
 今回は19ヵ国から276名が参加し、発表は273件(口頭64件、ポスター209件)、日本人の参加者は17名であった。SACLAからは田中均氏、原徹氏、登野健介氏、金城良太の4名が参加した。金城の本会議への参加は8回目である。日本人の口頭発表はユーザーマシンであるSACLAからの4名のみで、日本におけるFEL研究が心配となった。金城の出身である京大赤外FEL施設からは3件のポスター発表があった。
 今回の会議では、特にX線ポンプ+X線プローブに使われる二色FELや、時間コヒーレンスを改善するセルフシードをフレッシュバンチで行うFELのための電子ビームマニピュレーションについての報告が多かったように思う。特にLCLSでは、加速器の設計通りの電子ビームで数mJレベルのFELが安定に出ていることやアンジュレータの後ろに電子ビームの診断系があることを利用して、各種電子ビームマニピュレーションの実験を行っている。
 本報告では、Prof.、Dr.などの敬称を省略させていただくことをお許しいただきたい。本会議報告は筆者の個人的なメモを元に書かれており、かなり間違いを含んでいると思われるが、正確さよりできるだけ多くのトピックを紹介することを選んだ。興味を持たれた方はWeb[1][1] http://fel2017.lanl.gov/で公開予定のスライドおよびプロシーディングスをご覧いただきたい。本SPring-8/SACLA利用者情報誌の報告では内容を簡単な紹介にとどめ、物理的・技術的な詳細については加速器学会誌第14巻第4号の会議報告に記すことにする。

 

 

2. 基調講演
 はじめに、Madey and Bonifacio Memorialsと題して、2016年に亡くなったJohn M. J. Madey氏とRodolfo Bonifacio氏の追悼公演が行われた。Madey氏はFELの発明者と言われており、追悼講演を行ったL. Ellias氏、T. Smith氏らとスタンフォードの電子加速器を用いて最初のFEL増幅を行った。近年ではハワイ大学でCollective Radiation Theoryなどの研究を勢力的に行っており、前々回、前回の会議でもMadeyグループから興味深いポスター発表が行われたことを覚えている。Bonifiacio氏はClaudio Pellegrini氏らとともにイタリア(本人曰くシシリアン)のFELグループの大家であるが、もともとレーザー応用の出身で、Self Amplified Spontaneous Emission(SASE)、FELパラメータ、Cooperative Lengthなどの重要な概念をFELに導入した。
 FEL Prizeセッションでは、前回のFEL Prizeを受賞した、Evgeny A. Schneidmiller氏とMikhail V. Yurkov氏の講演があった。二人はEvgeny L. Saldin氏とともにFEL理論についての数々の論文を出すとともに、著名な教科書The Physics of Free Electron Lasersを著した功績がある。Saldin氏については2006年に同賞を受賞している。まずSchneidmiller氏から、電子ビームのチャープとアンジュレータのテーパーについての発表があった。彼らの考案した手法はLCLSでの偏光度の高い円偏光の発生や、基本波を抑えた高調波の発生に使用されている。続いてYurkov氏から、FELのコヒーレンスについての講演があった。残念ながらFELの空間・時間コヒーレンスを100%にすることは不可能であるという結論であった。
 続いて、Young Inventors Prizeセッションでも前回の受賞者の講演があった。上海のHai Xiao Deng氏は、Phase-merging Enhanced Harmonic Generation(PEHG)と呼ばれるエネルギースプレッドの広い電子ビームでの高調波発生に有効な手法での受賞だったと思うが、今回の講演では、高調波を用いて、a few GeVの電子ビームでXFELO(共振器型XFEL)を達成するとともにパワーを上げるアイデアについて発表していた。SLACのAgostino Marineli氏はレーザーによる電子ビームマニピュレーション(Optical Shaping)で受賞し、LCLSにおけるsub-fsディレイでの二色などの可能性について語っていた。

 

 

3. 発表
 各施設からの報告は表1にまとめた。UV-、SX-FEL施設では、High Gain Harmonic Generation(HGHG)と呼ばれる光学レーザーで立てたマイクロバンチからの高調波をシードとして時間コヒーレントなFELを得る手法が当たり前になっている。より短波長(4 − 20 nm)でもFERMIのフレッシュバンチを使った2段HGHGがうまくいっているのだが、Echo-Enabled Harmonic Generation(EEHG)に変更するということで、ユーザーが求める光を作るため電子ビームマニピュレーションのしやすさを選んだということであろうか。
 SASE FELセッションでは、DESYのS. Schreiber氏から、THzアンジュレータをFLASHの下流に置いて時間的に遅らせたXUVと使うTHz-Doublerの話があった。EuroXFELの谷川氏によると、THzポンプ+FELプローブの需要は結構あるとのこと。原氏からはSACLAの振り分け部におけるDual DBAを用いたCSRによる横キックの抑制について発表があった。PKUのS. Huang氏からは、LCLSにおいて200 asのシングルパルスの発生を実証したとの発表があった。
 Seeded FELセッションでは、SLACのE. Hemsing氏から、LCLSでのHX/SXセルフシードの結果およびLCLS-IIでの高繰り返し負荷に対応したセルフシードの可能性について発表があった。
 FEL Oscillatorsセッションでは、Duke大のJ. Yan氏から、Duke Storage Ring FELにおいて完全なFEL偏光制御を可能にしたとの発表があった。またいくつかのXFELOについての発表があった。XFELOでは高い負荷の下でX線光学系の性能を維持することが重要な問題であり、ハンブルグ大の学生I. Bahng氏からはブラッグ結晶ミラーの熱・機械的安定性の解析結果が示された。APSのKwang J. Kim氏からはXFELOのためのダイアモンドブラッグ結晶ミラーおよびBe Compound Refractive Lensは超高真空であれば15 kW/mm2のX線にも耐えうるとのAPSでのテスト結果が示された。また6月にSLACで開催されたXFELO Science Retreatで、Nuclear Resonance ScatteringやNonlinear X-ray Opticsへの応用に期待が集まったことが述べられた。SLACのW. Qin氏からは増幅帯域が10 meV程度しかないXFELOに必要な電子ビームを得るためのシミュレーションの結果が示された。
 Electron Diagnostics, Timing, Controlsセッションでは、Euro XFEL用に開発された光ファイバーの信号とよく同期したRF信号を作り出すモジュールや、レーザーコンプトンガンマ線を利用した電子ビーム診断についての発表があった。
 Undulators, Photon Diagnostics, Beamlineセッションでは、SLACのD. Coco氏から、Wavefront Preserving Mirrorと名付けられた、形状エラー0.5 nm RMS、200 Wに耐えるミラーの話があった。LCLS-IIでは平均パワーが600 Wになるとの話であった。金城から、SACLAの真空封止アンジュレータで見つかった局所的かつ数十%もの磁場低下についての報告を行った。減磁というよりも電子の直入射に起因し、ハイブリッド構造中で磁石が感じる強い逆磁場による磁化反転であるという結論を述べた。
 FEL Applicationsセッションでは、バイオ、非線形、High Energy Density Science(HEDS)の各分野からバランスよく発表があった。まず登野氏から、SACLAで岡山大学の沈教授らによって行われた光合成タンパクのダイナミクスの観測について発表があった。ElettraのF. Bencivenga氏からFREMIでの4波混合についての発表があった。4波混合実験のユーザー利用環境を整備するとの話であったが、登野氏の印象ではユーザーが使いこなせるだろうかという話であった。SLACのL. Fletcher氏からはWarm Dense Matterに関して、液体水素/重水素のジェットのポンププローブで回折とトムソン散乱を計測した結果についての発表があった。
 Tutrialセッションは、例年FELの基礎講座に近い話であったが、今回は少し毛色が違っていた。Trieste大学のF. Parmigiani氏からFERMIでのシードの話、SLACのP. Emma氏からはXFELに必要なビームの直進性を得るためのBeam Based Alignmentの話があった。
 Advanced Concepts & Techniquesセッションでは、SLACのAlberto A. Lutman氏からアンジュレータ中で電子ビームの発振する部分を時間的に選択する手法についての発表があった。電子ビームのHeadの部分を前段アンジュレータで発振させ、Tailを後段アンジュレータで発振させるなどが可能となり、二色FELの生成などに常にフレッシュな電子ビームが使用可能となる。RadiaBeamのA. Y. Murokh氏から、EUVリソグラフィーの話があった。電子ビームからFELへの変換効率が数十%と非常に高いEUV-FELを目指すアイデアについての発表である。SINAPのChao Feng氏からは、蓄積リングで特殊なHGHGを行いコヒーレント放射を得る方法が紹介された。
 FEL Theoryセッションは、例年基調講演の次に位置していたが今年は最終日の最終セッションであった。ストラスクライド大学のL. T. Compbell氏からは、FELで周波数モジュレーションをかける方法についての発表があった。通常のレーザーと異なりスリッページがあるためやや複雑であるが、例えば周波数にしてメインから5%ずれたところに強度10%のサイドバンドを立てる、などが可能であるとの話であった。搬送波にのったFELにはどんな利用があるのだろうか。

 

表1 各施設からの報告
PAL
H. Kang
(PAL)
17/06~供用開始、15 keVまで発振、20 fs/2.5 kAで300 uJ。
光学レーザーとの同期精度がよく、タイミングモニタを使った並び替えが不要。
SLEDに熱問題があり繰り返しは30 Hz。温調を導入する。
Swiss-FEL
S. Reiche
(PSI)
16/12~345 MeV/24 nmでFirst Lasing、スイス大統領による除幕式。
17/05~4.1 nmで発振(30 uJ)。
~1 GeVはほぼ完了、1.5 GeVを目指す。秋からは2, 3 keVの供用開始。
18年春~1 Å発振、秋~供用開始を目指す。
APPLE-Xアンジュレータを設置してSXビームラインをコミッショニング。
Euro-XFEL
H. Weise
(DESY)
17/05~9 ÅでFirst Lasing、2 Åで1 mJ程度。
17/06~14.5 GeV(計画17 GeV)まで超伝導空洞のコミッショニングが進んだ。
~1 ÅがSASE1実験ハッチ(SPB、SXE)まで届いた。
17/09~Early User Operation開始。
DCLS(Dailen)
W. Q. Zhang
(DICP)
16/11~First Lasing。
17/06~供用開始~SASEは90 – 148 nmで150 uJ、HGHGは88 nmで30 uJ程度。
Correction Cavityを入れてバンチ長を短くする予定。
LCLS-II
P. Emma
(LCLS)
順調にアップグレード中。18/01~電子銃コミッショニング。
19/06~超伝導RFキャビティを冷却、19年中~First Lightを予定。
LCLS-II-HE(High Energy)計画:20クライオモジュール追加で8 GeV、13 keV。
FLASH
K. Honkavaara
(DESY)
16/04~可変ギャップアンジュレータを備えたFLASH2供用開始。
~Reverse Taper + AfterburnerやHarmonic Lasingの実験なども実施。
HHGシードを止めてFermiで実績のあるHGHGに切り替えか(sFLASH)。
17年~25 TWレーザーでさらに1 GeV加速(FLASH Forward)。
SACLA
H. Tanaka
(RIKEN)
16冬~BL2への振り分け部をCSR横キックの抑制のためのDual DBA化改造。
17夏~BL2供用開始。
~60 HzパルスtoパルスでBL3と2へのビームのエネルギーと時間構造を制御。
16/09~BL1(SCSS+)C-bandを追加し800 MeVに。
FERMI
L. Giannessi
(FERMI)
FEL1は100 – 20 nmのHGHG、FEL2は20 – 4 nmの2段HGHGでほぼFourie限界。
次の3 – 5年でLinacを1.5から1.8 GeVにアップグレード。
短パルス化とマルチパルス/多色運転のためFEL2を2段HGHGからEEHGに変更。
Shanghai SXFEL
B. Liu
(SINAP)
SXFELのTest Facilityを16年からUser Facilityに改造中、19年~供用開始予定。
2段HGHG、EEHG-HGHGを採用しFERMIの成功に習う。
超伝導のHXFELも計画中(上海LSの地下、全長5.4 km)。
MaRIE
R. L. Sheffield
(LANL)
Matter-Radiation Interaction in Extremesという5 – 126 keV(3次)XFEL計画。
吸収の小さい高エネルギーX線で試料を破壊せずpsフレーム動画撮影。

 

 

4. サイトツアー、バンケット
 サイトツアーは、ロスアラモス国立研究所のLos Alamos Neutron Science Center(LANSCE)とBradbury Science Museumであった。ロスアラモスは1943年にマンハッタン計画において原爆開発のために作られ、現在では様々な分野の研究を行う世界最大の研究所となっている。見学には申し込み時の履歴書の提出、学会中のインタビュー、バッジオフィスでの顔写真と指紋の登録が必須であった。残念ながらカメラやノートPCの持ち込みは許可されなかったため写真はない。サンタフェからはバスで45分ほどであり、研究所のHistorical Recordsの職員が第二次世界大戦末期の核開発の歴史からその後幅広い研究を行う研究所となった今日までの歴史を語ってくれた。標高2,200 mに位置するため冬には雪が多く降り、水曜日の午後からはスキーを楽しんでその後仕事をするという羨ましい話も聞いた。サイトツアーのあったLANSCEは、プロトン加速器を用いて中性子実験やラジオアイソトープの製造を行っている。日本におけるJ-PARCに該当する施設であるがすでに40年の歴史を持つ。Bradbury博物館は、実物大の原爆(Little Boy、Fat Man)模型から最新の研究成果までロスアラモスの研究の歴史を展示している。
 バンケットは会議場から徒歩3分のEldorado Hotelで行われ、Javier Gonzalesサンタフェ市長とCharlie McMillan第10代LANL所長(初代は原爆開発を率いたJ. Robert Oppenheimer)から挨拶があった。ピアノ演奏とインディアンフープダンスのショーを楽しみながらの食事の後、FEL Prizeの発表があった。今年度の受賞者は、RF Photocathode Gunの発明やEmittance Compensationに貢献のあった、LANLのDinh Nguyen、Richard Sheffield、Bruce Carlstenの三氏が選ばれた。またYoung Investor's Prizeには、Fermiにおいてフレッシュバンチによる二色FELやクロスアンジュレータによるFEL偏光制御の研究を行ったEugenio Ferrari氏(現PSI)と、ストレージリングやFELにおけるマイクロバンチインスタビリティの研究を行ったSOLEILのEleonore Roussel氏が選ばれた。FEL Prizeの副賞として、FELの基本方程式であるPendulum Equationにかけて振り子時計が送られた。最後に、FEL2019の主催であるドイツDESYのWinni Decking氏と、2021の主催であるイタリアElettraのLuca Gianessi氏から挨拶が行われた。

 

 

 

参考文献
[1] http://fel2017.lanl.gov/

 

 

 

金城 良太 Kinjo Ryota
(国)理化学研究所 先端光源開発研究部門
〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0802 ext 3824
e-mail : r-kinjo@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794