Volume 22, No.4 Pages 373 - 374
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
2014A期 採択長期利用課題の事後評価について
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2014A
2014A期に採択された長期利用課題について、2016B期に3年間の実施期間が終了したことを受け、第61回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(2017年9月12日開催)による事後評価が行われました。
事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
課題名 | グリーンナノエレクトロニクスのための材料・プロセスインテグレーション −超低消費電力次世代トランジスタ開発 |
実験責任者(所属) | 宮崎 誠一(名古屋大学) |
採択時課題番号 | 2014A0109 |
ビームライン | BL47XU |
利用期間/配分総シフト | 2014A~2016B/177シフト |
[評価結果]
本課題は、これまでのLSIの主役であったSiを越えるポストシリコン材料の有力候補として研究されているGe系半導体に焦点をあて、3次元構造を視野に入れた新世代のデバイス実現に必要な材料とプロセスインテグレーションの方法論確立を目標に、1)Ge系MIS構造の化学構造評価、2)Ge系MS構造の内部電位評価と界面化学反応制御、3)高濃度不純物注入・添加Ge層の化学状態分析、4)微細加工した高移動度チャネルの電子状態分析、5)Ge系IV族混晶材料のエネルギーバンド構造解析を主要な研究テーマに掲げている。1)については、Ge系MISではなかったが、Au/SiO2/Siを対象に電圧印加HAXPES測定を行いM、I、S各層の電位分布の印加電圧応答からSi表面(界面)電位の導出に成功した。金属−絶縁膜界面状態に関して同手法でのみ検出可能な興味深い結果が得られている。2)では試料深部の化学状態を分析可能なHAXPESの特徴を活用して、Geとそれに接合される金属電極の間で発生する接合抵抗の低減に向けてショットキーバリアハイトとGe電位との関係を検討している。接合界面に薄いSiGeSn中間層を導入したAl/SiGeSn/Geでは、ショットキーバリアとGeの電位の間に明瞭な相関を見出している。3)はHAXPES測定からGeにドープされたPとGeSn中にドープされたSbの活性化度の定量に成功している。4)のマイクロビームの活用による微細パターン構造の電子状態評価、中でも微細加工したチャネル側壁の化学状態評価は本長期利用課題の中心となる研究テーマと考えられる。申請者らは早い段階から実験に着手して、中間評価実施前には早くもデータの取得に成功した。その後、作製技術の進展により広い領域で均一な試料が得られるようになり、高い技術と精密な調整が必要なマイクロビーム測定技術開発の相対的優先順位が低くなってからは、当初の計画に固執することなく、高移動度チャネルの実現という最終的な目標に向けて新奇高移動度物質の探索的研究に着手している。5)についてはHAXPES測定を用いてIV族元素混晶系であるGeSn及びGeSnSiにおいてSn濃度の調整によりバンドオフセットの制御が可能であることを明瞭に示すなど興味深い成果が得られている。
以上のように、目標を達成することができなかった事項が一部にあるものの、当該分野の研究を進めるにあたりHAXPESが強力な手段であることを示す興味深い成果が多数出ていることから、本長期利用課題は当初の目標を概ね達成していると考えられる。この分野の研究は将来にわたって更に発展するとともにHAXPESの有用性に関する認識も高まると思われる。本長期利用課題で得られた知見と技術を用いて、本課題の実施に参画した研究者がそれぞれのテーマの研究を一般課題の継続的な実施を通じて更に発展させることを大いに期待する。主要な5テーマで早い段階から成果が得られていたので、長期利用課題の特長を生かした課題推進をしていただけていればより望ましかった。
[成果リスト]
(査読付き論文)
[1] SPring-8 publication ID = 28074
S. Yamahori et al.: "Detection of Effect of Strain on the Valence Band Structure of SiGe by HXPES with High Spatial Resolution" ECS Transactions 64 (2014) 431-439.
[2] SPring-8 publication ID = 29444
A. Ohta et al.: "Characterization of Chemical Bonding Features and Interfacial Reactions in Ge-MIS Structure with HfO2/TaGexOy Dielectric Stack" ECS Transactions 64 (2014) 241-248.
[3] SPring-8 publication ID = 33932
M. Kurosawa et al.: "Surface-Segregated Si and Ge Ultrathin Films Formed by Ag-Induced Layer Exchange Process" Japanese Journal of Applied Physics 55 (2016) 08NB07.
[4] SPring-8 publication ID = 34177
S. Miyazaki and A. Ohta: "High-Resolution Photoemission Study of High-k Dielectric Bilayer Stack on Ge(100)" ECS Transactions 69 (2015) 165-170.
[5] SPring-8 publication ID = 34183
M. Kurosawa et al.: "Ultrathin Si or Ge Films on Ag Formed by Metal-Induced Layer Exchange Method −A First Step Towards Creation of Silicene and Germanene−" 表面科学 (Journal of the Surface Science Society of Japan) 37 (2016) 374-379.
[6] SPring-8 publication ID = 34184
Y. Wang et al.: "High-Density Formation of Ta Nanodot Induced by Remote Hydrogen Plasma" Japanese Journal of Applied Physics 56 (2016) 01AE01.
[7] SPring-8 publication ID = 34191
N. Fujimura et al.: "Photoemission Study on Electrical Dipole at SiO2/Si and HfO2/SiO2 Interfaces" Japanese Journal of Applied Physics 56 (2017) 04CB04.
[8] SPring-8 publication ID = 34192
A. Ohta et al.: "Potential Changes and Chemical Bonding Features for Si-MOS Structure as Evaluated from HAXPES Analysis" Microelectronic Engineering 178 (2017) 80-84.
[9] SPring-8 publication ID = 34687
M. Mariappan et al.: "Improving the Barrier Ability of Ti in Cu Through-Silicon vias through Vacuum Anealing" Japanese Journal of Applied Physics 56 (2017) 04CC08.