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Volume 22, No.3 Pages 241 - 244

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第17回SPring-8夏の学校を終えて
The 17th SPring-8 Summer School

八木 直人 YAGI Naoto

SPring-8夏の学校実行委員会 委員長 SPring-8 Summer School Executive Committee, Chair

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SPring-8

 

夏の学校の概要
 「第17回SPring-8夏の学校」は、7月9日(日)~7月12日(水)の3泊4日の日程で、全国32校から90名の学生の参加を得て、放射光普及棟およびSPring-8蓄積リング棟を会場として開校されました。この夏の学校は、SPring-8サイトに施設を持つ各機関((公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所放射光科学総合研究センター、日本原子力研究開発機構・物質科学研究センター、量子科学技術研究開発機構・放射光科学研究センター)と、これらの機関と連携大学院協定を持つ大学(兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科、関西学院大学大学院理工学研究科、岡山大学大学院自然科学研究科)、およびSPring-8サイトにビームラインを持ちそこで教育を行っている大学(東京大学放射光分野融合国際卓越拠点、大阪大学・光科学連携センター・蛋白質研究所・核物理研究センター)が主催して、ビームタイムや教官を供出し合って行ったものです。校長は東京大学新領域創成科学研究科の雨宮慶幸先生にお願いしました。実行委員会は主催団体のスタッフで構成され、事務局はJASRI利用推進部が行いました。なお、主催大学の中には夏の学校への参加を講義として単位認定しているところもあります。

 

図1 講義風景

 

 

カリキュラムについて
 夏の学校では通例として、初日に3講座、2日目に4講座の講義を行い、その後の2日間に2テーマの実習を行っています。また、SACLAとSPring-8蓄積リング実験ホールの見学、さらにはSPring-8蓄積リング収納部の見学が行われました。参加者間の交流を深めるため、自己紹介や懇親会も行っています。今年のスケジュールは以下の通りでした。

 

第17回SPring-8夏の学校 日程表 − 2017年7月9日(日)~12日(水)

 

 

ビームライン実習について
 実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。

BL01B1 “その場”XAFS計測
(加藤和男・伊奈稔哲・宇留賀朋哉(JASRI))
BL02B1 単結晶構造解析の入門
(野上由夫(岡山大学)・杉本邦久・安田伸広(JASRI))
BL04B2 高エネルギーX線を用いたガラス・液体の構造解析
(尾原幸治(JASRI)・小野寺陽平(京都大学))
BL07LSU 推理の放射光元素分析
(松田巖・原田慈久・和達大樹(東京大学))
BL10XU ダイヤモンドアンビルセルを用いた超高圧X線回折実験
(平尾直久・河口沙織・大石泰生(JASRI))
BL13XU サブミクロン集光放射光ビームによる局所領域回折実験
(木村滋(JASRI/岡山大学)・隅谷和嗣(JASRI))
BL14B1 放射光を利用した高温高圧合成
(齋藤寛之(量子機構))
BL14B2 XAFS分析の基礎
(本間徹生(JASRI))
BL19B2 粉末X線回折
(大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学))
BL19LXU 放射光時間分解X線回折法
(田中義人(兵庫県立大学))
BL20B2 放射光X線画像計測
(星野真人・上椙真之(JASRI))
BL22XU X線回折法を利用した金属材料応力・ひずみ評価
(菖蒲敬久(JAEA))
BL25SU 高分解能軟X線光電子分光
(横谷尚睦(岡山大学)、室隆桂之(JASRI))
BL33LEP GeV光ビームと物質の相互作用
(與曽井優・郡英輝・堀田智明・中野貴志(大阪大学))
BL38B1 単結晶回折(タンパク質)
(熊坂崇(JASRI/関西学院大学)・馬場清喜・河村高志(JASRI))
BL39XU 硬X線磁気円二色性分光による磁性体試料の解析
(鈴木基寛・河村直己・水牧仁一朗(JASRI))
BL40B2 X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析
(八木直人・関口博史(JASRI))
BL43IR 赤外顕微分光による組成分布と電子状態の解析
(池本夕佳・森脇太郎(JASRI))
BL44XU 単結晶回折(タンパク質)
(山下栄樹・東浦彰史・高木賢治(大阪大学))
BL45XU X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析
(引間孝明(理研))
BL46XU X線反射率
(小金澤智之(JASRI))

 

図2 実習風景

 

 

謝辞
 熱意のこもった講義をしていただいた講師の先生方、2日間にわたる実習を熱心に指導していただいた実習担当の皆様、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、特に大人数の参加者にSPring-8蓄積リング収納部の見学を可能にしていただいたJASRI光源基盤部門の方々に感謝致します。また、事務局としてウェブ作成から懇親会・バーベキューのお世話までご努力いただいたJASRI事務局担当者の方々にも感謝したいと思います。

 

 

八木 直人 YAGI Naoto
(公財)高輝度光科学研究センター
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : yagi@spring8.or.jp

 

 

 

 

第17回SPring-8夏の学校に参加して

 

 

岡山大学 自然科学研究科
矢野 佑幸

 

 

 私は、SPring-8などの放射光施設を多く利用させていただいています。しかし、放射光施設の利用の中で、施設の仕組みや放射光の発生原理などがブラックボックスのようになっていました。そのようなブラックボックスをなくすことは、今後の研究に重要であると考え、岡山大学の推薦枠を利用して第17回SPring-8夏の学校に参加しました。参加するまでは、他の分野の人と同じ講義を受け、同じ実験をするため、ついていけるのかという不安や知らない分野の方と交流する緊張もありましたが、どのような講義や実験をしていただけるのか楽しみでもありました。
 実際に講義を受けてみると、放射光の発生原理の基礎から応用まで、専門性の高い内容を多くの分野の参加者がいる中で分かりやすく教えていただきました。少し分からなかった部分もありましたが、質問すると丁寧に教えていただけました。放射光を発生させてから利用するまでにどのような過程があるのか深く知ることができたことが、自分にとって一番ためになったと思います。また私は物理を専門としており、理解できる範囲で講義が進んでいきましたが、物理を専門としていない人に講義内容の理解度を聞くと、理解できていないことが多くあったようでした。専門ではない人に専門性の高いことを伝える難しさを感じました。1つの講義が80分で教える内容に限界があるため、専門外の参加者は参加前に多くの勉強が必要であったように思います。
 実習は、BL20B2(放射光X線画像計測)とBL01B1(その場XAFS計測)を選択しました。BL20B2では、単に何枚もX線画像を撮るわけではなく、空間分解能などの測定において考えるべきことをメインに教えていただきました。今後BL20B2を使用するときはもちろん、他のビームラインでの研究や日々の研究でも役に立つ実習内容でした。また、BL01B1では、一つの試料についてX線吸収スペクトルの測定を行い、EXAFSの解析を行いました。局所構造の特定で頻繁利用されるXAFSの研究について理解を深めることができました。夏の学校の実習は、日頃使うことのなかったビームラインを利用する貴重な経験になり、非常に楽しかったです。
 夏の学校では、SPring-8内の施設見学が多く盛り込まれていました。SPring-8実験ホール見学では、ビームライン1つ1つがどのような特徴を持っているのか、そしてそこでどのような研究がされているのかなど教えていただいたので、自分の研究で活用できるか考える時間になりました。加速器収納部見学では、講義で教わった放射光発生など原理に関わる装置について細かな説明をしてもらいました。日頃立ち入ることのできない場所なので、とても良い経験になりました。

 

図3 懇親会風景

 

 

 夏の学校の醍醐味である同世代の違う分野の方との交流は、とても刺激になりました。1日目の夜の懇親会では、あまり自分から話しかけることができず、初対面の人に積極的に話しかけることができる人は素晴らしいと改めて思いました。そのため2日目からは積極的に話しかけることにしました。3日目のBBQでは、みんなの仲も深まり楽しい時間を過ごすことができました。その中で、お互いの研究や、学校生活に関して多くの人と話したことは、非常に刺激になり、今の研究のモチベーションに繋がっています。
 最後に、第17回SPring-8夏の学校の期間中は実行委員の方々や講師の先生、ビームライン担当者の方々に大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。

 

図4 記念写真

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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