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Volume 22, No.3 Pages 249 - 250

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8およびSACLAにおける成果公開と公開期限延期制度について
System for Publication of Research Results and Deadline Extension at SPring-8 and SACLA

野田 健治 NODA Kenji

SPring-8/SACLA成果審査委員会 委員兼編集者 SPring-8/SACLA Research Results Review Committee, Editor

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SPring-8 SACLA

 

1. 成果の定義とその公開期限
 SPring-8およびSACLAにおける利用研究課題は、ビーム使用料を支払って利用する成果専有課題と、ビーム使用料の支払いを免除される成果非専有課題に大別されるが、成果非専有課題では、実験責任者は利用期の終了後3年以内に成果を以下の論文または報告書に公開し、当該成果をJASRIにおけるSPring-8/SACLAの研究成果データベースに登録することが求められる。
 a)査読付き科学・技術雑誌の論文(博士論文を含む)
 b)JASRIが刊行するSPring-8/SACLA利用研究成果集
 c)JASRIが認定した、企業等で独自に査読編集される公開技術報告書
 なお、一つの研究課題における実験の実施で十分な結果が出なかった場合には、その後の利用期に一連の関連した複数の研究課題の実験を実施することにより得られた結果もまとめ、一つの成果として公開・登録することが可能である(発表論文等に関連する全ての課題番号を明記し、上記研究成果データベースに登録する際は、それら全ての関連課題番号を登録する必要がある)。但し、最初の研究課題の実施後3年以内に成果を公開・登録することが必要となる。なお、利用制度上、長期利用課題等複数期の利用を前提に採択されている課題種の課題はグループ化し、一連の課題とみなして取り扱い、その成果公開期限は、最終利用期の終了後3年以内とした。
 この期限内に成果公開が間に合わない場合は、後述の成果公開期限延期制度を参照されたい。

 

 

2. SPring-8/SACLA利用研究成果集について
 JASRIでは、SPring-8およびSACLAにより得られた研究成果や知見を学術・科学技術の振興やその幅広い社会還元に最大限役立てることに向け、一般の査読付き論文誌と同等の成果と位置付けたSPring-8/SACLA利用研究成果集を、2013年から刊行・公開している。この成果集では、チャレンジングな研究課題の実験・解析がたとえ不成功となった場合でも、その研究情報を公表することにより、他の研究者にも有益な知見を提供するといった役割も持たせている。これにより、放射光科学コミュニティにおけるチャレンジングな研究課題への取り組みが一層活発化することが期待される。
 なお、このようなSPring-8/SACLA利用研究成果集の性格上、成果や実験内容の十分な科学技術情報が適切に記載されるよう、丁寧な査読により発行・公開までJASRIがフォローしている。但し、投稿者が理由もなく原稿の改訂を拒絶したり、1年以上放置したりした場合は、投稿の取り下げ措置をとる場合もある。
 SPring-8/SACLA利用研究成果集では、現状において、大部分の成果が日本語による成果報告書として刊行されている。一方、国外を含めたより広範囲の研究者や専門家等に成果情報を知ってもらうため、医学関連の学術雑誌等では、既に当該雑誌に日本語にて論文発表されたものを他の英文雑誌が、secondary publicationとして刊行することを認める動きが広がっている。JASRIにおいてもsecondary publicationを取り入れる外国語の学術・科学雑誌には、SPring-8/SACLA利用研究成果集の報告書が原著論文(原著の報告書)として優先的に尊重されることが担保される一定条件の下において、secondary publicationを認めることとしている。これにより、SPring-8/SACLA利用研究成果集として刊行された科学技術的知見をより広範囲の国内外の研究者や科学技術の専門家に普及し、SPring-8/SACLAの利用成果が学術・科学技術の発展や人類社会の持続的発展に一層大きく貢献することにつながることが期待できる。

 

 

3. 成果公開期限延期について
 成果公開期限である利用期終了後3年以内に正当な理由により成果公開が実施できない場合は、公開期限1年前から3ヵ月前までに課題ごとに成果公開延期申請書を提出し、JASRIのSPring-8/SACLA成果審査委員会(以下、委員会という)にて正当な理由として承認されれば、2年間の期限延期が可能である。
 延期申請が認められる主な理由は、

 1)投稿した論文は受理(アクセプト)されているが、まだ公開されていない場合。

 2)実験・解析等の結果が不調であったが、延期期間内の再実験・新たな解析等により論文等の成果の公開が見込める場合。

 3)長期の研究テーマであるが延期期間内に論文等の成果の公開が見込める場合。

 4)その他病気・入院(妊娠・出産を含む)、地震・火災・水害等の不可抗力による場合等。

 なお、特許等の権利取得のためや事業化、製品化準備のために延期することは認められない。期限延期申請の審査の結果、延期が認められない課題は、SPring-8/SACLA利用研究成果集に投稿してその成果を速やかに公開することが求められる。

 

 

4. 成果公開期限再延期について
 上記2年の成果公開期限延期期限(利用期終了後から5年経過)までに成果の公開・登録ができない場合で、以下の条件を満たすものは、延期期限の1年前から3ヵ月前までに成果公開期限再延期申請書を提出し、委員会で承認されれば、更に2年間の期限延期(期限再延期)を可能としている。

 1)投稿した論文が受理(アクセプト)されており、概ね6ヵ月以内に発行される場合。

 2)現時点においても予想される成果の学術・科学技術的価値が十分に高く、成果公開に至るまでの問題点(試料、実験方法・機器、解析等における)が明確で、且つ、その問題点を解決し、その再延期期間内に論文等の成果の公開が確実に見込める場合。

 3)その他病気・入院(妊娠・出産を含む)、地震・火災・水害等の不可抗力により、共同実験者を含め、上記a)、b)、c)のいずれかの成果公開ができない場合。

 上記いずれの理由の場合も、委員会にて精査の上、審査が行われる。このため、その根拠となる証拠の提示や成果公開に向けた状況の説明を上記申請書に記載いただくこととする。説明不足や不明な点があった場合、事務局より審査に必要な情報の提供が求められる。
 なお、本成果公開延期制度では、課題実施利用期の終了から7年を超える期限延期申請を受け付けることは想定されていない。多額の国費により建設・運営されている特定先端大型研究施設であるSPring-8およびSACLAの継続的安定運転や質的・量的に高いレベルのビーム利用を確保し、長期の研究期間を要するチャレンジングな研究も含めたSPring-8およびSACLA全体における、利用研究の一層の促進と発展を図るためには、国民社会に向けた高いレベルでのアカウンタビリティが極めて重要である。このため、課題実施から7年を超える研究については、一旦、SPring-8/SACLA利用研究成果集に研究状況をとりまとめ、アカウンタビリティを確保した上で、研究を継続することがSPring-8およびSACLAにおける研究の適切な進め方として求められる。このため、課題実施利用期の終了から7年以内に成果公開ができない場合は、必ずSPring-8/SACLA利用研究成果集に投稿して、これまでの実施課題に関する研究情報を公表していただくことが必要となります。

以 上

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794