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Volume 22, No.2 Page 145

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告4 −分光分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Spectroscopy –

木村 昭夫 KIMURA Akio

SPring-8利用研究課題審査委員会 分光分科会主査/広島大学大学院 理学研究科 Graduate School of Science, Hiroshima University

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SPring-8

 

 平成27、28年度のSPring-8利用研究課題審査委会(PRC)委員として分光分科会の主査を務め、実験課題の審査に携わりました。課題審査は例年通り、S1とS3分科会と合同で行われました。S1分科会では、光電子分光、光電子回折、発光分光、赤外分光等の実験手法を用いた研究課題について審査いたしました。磁気分光を主なツールとする課題と実験責任者のフィールドが近く、ビームラインも共通することが多いため、S3分科会と合わせて審査を行うことで、複数の意見を集約して効率よく進めることができたと思います。S1分科会の審査メンバーは、木須孝幸先生(大阪大学)、室隆桂之氏(JASRI)、S3分科会の審査メンバーは、主査の小森文夫先生(東京大学物性研究所)、中川剛志先生(九州大学)、中村哲也氏(JASRI)でした。
 本分科会は、SPring-8の一般課題を対象としており、長期利用課題や重点課題等については既にシフト配分が決定されている中、残りの限られたシフト枠に配分する課題を決定するものです。レフェリーによりそれぞれの課題について評価点・コメントがつけられており、ビームラインごとにそれが高い順番に並べられた資料を見ながら、審査が行われました。審査の際、ビームライン担当者による、安全審査や技術審査は、課題とビームラインとのマッチングについての情報を得る上で大変重要視されます。また、場合によっては、要求シフト数が実際に必要なシフト数よりも多い場合があり、この点は、技術審査結果を参考にする場合が多かったように思います。このようにレフェリーによる評点でおおよその採否は決定されますが、分科会の最大の役割は、ボーダーラインに位置する課題について慎重に議論し採否を決めていくことでした。また、残念ながら配分シフト数がゼロと判断された課題については、申請者がディスカレッジせず、申請書をより充実させ次回にチャレンジしていただくよう配慮いたしました。
 ビームラインによっては、競争率が4倍を越えるところも見受けられ、他のビームラインでは採択ボーダーラインを十分に越える評価点でも不採択になるというものもありました。もちろん、質の高い課題が実行される意味では喜ばしいことですが、「はやりの研究」には相当せず、真の挑戦的な研究等が排除されてしまうというジレンマに陥りがちなことは否めません。全く新しいアイデアに基づく挑戦的な課題は、やはり一般課題として申請されるはずですので、上記のように他の重点課題で圧迫されたシフト数ではなかなか困難な状況です。これについては簡単に解決できることではありませんが、いまSPring-8ユーザー協同体(SPRUC)でワーキンググループが立ち上がり、議論が始まった「ビームライン高性能化」と合わせて、十分議論されるべきことと感じました。
 最後に、SPring-8の課題審査という重要な役目終え、安堵するとともに、多大なるご協力をいただいた分科会委員の皆様、レフェリーの皆様、JASRI関係職員の皆様に感謝いたします。

 

 

 

木村 昭夫  KIMURA Akio
広島大学大学院 理学研究科
〒739-8526 東広島市鏡山1-3-1
TEL : 082-424-7471
e-mail : akiok@hiroshima-u.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794