Volume 22, No.2 Pages 143 - 144
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告3 −XAFS・蛍光分析分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – XAFS and Fluorescence Analysis –
SPring-8利用研究課題審査委員会 XAFS・蛍光分析分科会主査/首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 Graduate School of Urban Environmental Sciences, Tokyo Metropolitan University
平成27~28年度(2015B~2017A期)のXAFS・蛍光分析分科会主査を仰せつかり、2年間微力ながら務めさせていただきました。XAFS・蛍光分析分科会では、分科会委員の宇留賀朋哉先生(JASRI)と高橋嘉夫先生(東京大学)に私を加えた計3名で、XAFSと蛍光X線・微量分析および軟X線分光を担うビームラインについて課題審査を担当致しました。
XAFSと蛍光X線・微量分析に関する課題を大雑把に分類するとXAFSに関する申請課題の割合が多いのですが、最近では複数のビームラインの利用を組み合わせるマルチプローブ実験に関する申請課題も増加しつつあります。また、ビームラインの時間分解能・空間分解能の性能向上に加え、ガス導入、無害化装置の設置や、各種分析装置をはじめとして様々なアタッチメントの導入が進んだことを反映して、いわゆるin-situ分析、operando分析に関する課題が増加する傾向にあります。これは、ユーザーのニーズに対してスタッフ・施設サイドの多大な努力があったからこそ、はじめて達成された状況だと思います。ユーザーとしてスタッフ・施設の御尽力に深く感謝の意を表したいと思います。
さて、in-situ分析、operando分析については、例えば、ガスの導入経路の確保やリークテストなどを含めた実験準備段階の時間がある程度必要となることなどを反映して、1申請課題あたりのシフト数が増加する場合があります。最近では、その結果、全体の採択課題数は、見掛け少な目になる傾向があると感じています。また、実験をスムーズに行うためには、ビームライン担当者との事前の打ち合わせやセルなどの設計を含む予備実験の重要性が高くなることは言うまでもありません。ビームライン担当者との事前打ち合わせは、実験の問題点や見落としがちな点について考える良い機会であり、それ以降の課題申請の際に非常に役立ちます。従って、担当者の過度な負担にならないように十分配慮の上、可能な限り事前打ち合わせを実施していただくことが、ビームタイムの有効活用に対して望ましいと考えます。
課題審査は、JASRI安全管理室による安全審査とビームライン担当者による技術審査をパスした上で、4名のレフェリーの評価を軸にして行われます。従って、実験の意義や目的が分かり難いと、傾向として評価が低くなり、ビームタイムの配分が行われないことになります。実験の意義と目的が分かり易い形になるよう申請書を作成していただければと思います。また、サンプルの選定の理由を明確にすることは、必要なビームタイムの算出の根拠を評価する上で重要となります。つまり、闇雲にサンプル数を増やすのではなく、何故そのサンプルの測定が必要であり、データを比較することでどの様な情報が得たいのか?を明確に記載していただくことは、レフェリーからみて、実験の意義と目的の理解を容易にする上でも重要です。
つい先日、Nature誌で重要な雑誌における日本の研究者の貢献度が低下していることが指摘されたことは、皆さんの記憶にも新しいと思います。SPring-8は、世界最高水準の施設とスタッフを有する国内の放射光利用の世界的拠点であり、J-PARC、京コンピュータとの連携も含め、国内外における基礎学術研究と社会の要請に応える戦略的研究の両者に対して果たすべき役割が大きいことは論を俟ちません。上述した様に日本の科学の課題が指摘される状況下において、今後もその役割の存在意義は大きく、ユーザーが魅力的な実験を実施し、有意義な成果を挙げるためにも、ユーザーは、配分されたビームタイムの有効利用に努めることが必要であると考えます。配分された貴重なビームタイムが可能な限り有効利用され、その結果として今後もSPring-8から継続的に研究成果が生み出されること、またそれがトリガーとなって研究が発展することを願ってやみません。
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