Volume 22, No.2 Pages 134 - 135
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて
Report on the PRC (Proposal Review Committee) of SPring-8
SPring-8利用研究課題審査委員会 委員長/大阪大学 蛋白質研究所 Institute for Protein Research, Osaka University
1. はじめに
平成27年4月~29年3月の2年間、SPring-8利用研究課題審査委員会(2015B期~2017A期の審査委員会)の委員長を務めさせていただきました。それまで、生命科学分科会主査を務めさせていただいていましたが、委員長という大役を仰せつかり、何かと不慣れな点もあったことから、JASRI利用推進部の方々には、色々とお手数をお掛けしました。本委員会委員の皆様や関係者の方々のご協力で無事に任を終えることができ、皆様に感謝申し上げます。以下に、この2年間の審査を振り返っての簡単な感想を述べさせていただきたいと思います。
2. 成果最大化に向けての課題審査の役割
SPring-8は共用開始後20年近く経過し、世界トップレベルの研究成果が数多く生み出され、さらに産業応用や社会・文化にも大きく寄与するなど、我が国の科学技術にとって不可欠な基盤施設となっています。その成果は、年1,000報を超える原著論文などとして報告されています。一方、SPring-8の特性を活かした、成果の最大化に向けての努力も続けられています。2015A期から始まった生命科学/蛋白質結晶構造解析分野の特殊性に合わせた独自のビームタイム配分方式や2015B期より始まった「新分野創成利用」制度などはその例ですが、SPring-8利用研究課題審査委員会にも、真に実施すべき本質的なテーマの見極めとその選定が求められています。特に、実質的な審議を行う分科会においては、そのような視点から審査が行われました。
3. 本委員会での審査に関して
利用研究課題審査委員会は、従来の進め方を踏襲し、各分科会から挙がってきた審査結果を基に課題選定作業を行いましたが、それに加えて、各分科会での審査過程や研究動向、審査の過程で問題になった事項などについて議論を行いました。その結果は、SPring-8選定委員会において報告させていただいています。全体を通し、審査に際して大きな問題はありませんでしたが、本利用研究課題審査委員会の2年間の活動において議論になったこと、改善したことなどの中で重要と思われるものを簡単にまとめます。
3-1. 本委員会での主な議論のポイント
●特定の実験手法に対して分科をまたがって申請された場合、同じ基準で審査できるよう、レフェリー審査では手法でまとめて統一的に審査するようにした。これにより、このような課題が他の手法に対し、「相対評価でごっそり低くなる」ことを回避することができた。但し、手法が優先されると研究分野サイドの審査とのバランスが取れなくなる恐れがあり、今後の状況に注意していく必要がある。
●大学院生提案型課題の採択率が低く、指導教官の十分なコミットが必要と認識している。アイデアは学生主体であっても、申請段階からやはり指導教官の十分な指導が必要である。一方で大学院生と指導教官のオーバーラップ申請と思われる課題が散見している。
●SACLAの予備実験的な申請課題に対して、評価がレフェリーで割れることが起きたため、それを避けるために、申請書に連携利用課題であることが明確に判るコメント枠を加えることで、これにより連携の目的、メリットなどを申請者が記載できるようにした。
●1つのビームラインに複数分科会がまたがる場合、分科会開催が別日程では分科会間の議論(分科会間の不公平を生じさせないような調整など)が困難となる場合があった。
●大きな研究テーマやグループでの申請の自由を束縛するようなルールは決めるべきではないが、競争の激しい分野では今後、同時期に多くのビームタイムを要求するような課題もあるかもしれない。他の利用者を圧迫しないような配慮が必要である。
●ビームライン毎の混雑の差を緩和するため、SPring-8全体で、個々のビームラインで何ができるのかなどの相互共有・情報発信を推進することが重要である。
●一層の成果創出のためには、事前の利用相談が重要である。
4. おわりに
本利用研究課題審査委員会では、様々な分野の基礎から応用までをカバーする、各期800件前後にも達する課題を効率良く審査できるシステムがほぼ確立しており、総じて順調に審査が行われていると思います。その一方で、SPring-8は我が国の科学技術の基盤となる重要な施設であり、より様々な分野にまたがる課題を効果的に審査し、成果最大化に向けた真に実施すべき課題を確実に選定することが、今後ますます期待されていると強く感じました。
2年間委員長を務めさせていただきましたが、私自身勉強させていただくことばかりだったというのが実情です。審査にあたって、多くのレフェリーの方々、本審査委員会委員各位、JASRIスタッフの皆様の御尽力に敬意を表すとともに心より感謝申し上げます。
大阪大学 蛋白質研究所
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