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Volume 22, No.2 Pages 164 - 165

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2017年度に指定期間が延長されたパートナーユーザーの紹介
The Duration of the Designation Period of Partner Users Extended in FY2017

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8

 

 2013年度まで運用していた「パワーユーザー」制度について、2014年度より名称および一部運用を変更し、「パートナーユーザー」(以下「PU」という)として運用を開始しました。2017年度は、2015年度に指定(指定期間:2015~2016年度)されたPU3名のうち、3名の指定期間延長申請があり、PU審査委員会による審査の結果、当該3名が指定期間延長されました。延長されたPUおよびPU審査委員会からの審査結果を以下に示します。

 

 

PUの概要

・PUは、2013年度までの「パワーユーザー」の名称および一部運用を変更したもの。

・2014年度以降のPUは、共用ビームラインおよび測定技術を熟知し、放射光科学・技術の学術分野の開拓が期待できる研究者で、
1)ビームライン実験設備の開発および高度化への協力
2)上記高度化等に関連した、先導的な放射光利用の実施および当該利用分野の拡大・推進
3)上記高度化等に関連した利用者支援
のいずれも満たすユーザーを指す。

・PUの指定期間は原則2年間(PU審査委員会が必要と認めた場合には延長可。最長5年間)。

 

[延長後の指定期間]
2015年4月1日から2019年3月31日まで(4年間)

 

[指定されたPU]
1. 森吉 千佳子(広島大学)

(1)実施内容
 研究テーマ:粉末・多粒子X線回折によるその場構造計測基盤の構築
 高度化:迅速オペランド構造計測ステーションの整備
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL02B2

(3)審査コメント
 本パートナーユーザー課題は、従来のイメージングプレートと新規導入した一次元半導体検出器を組み合わせて大型デバイシェラーカメラを高度化することにより、多彩な粉末・多粒子X線回折による高精度かつ迅速なその場構造解析を実現する重要で汎用性の高いプロジェクトである。
 新しい研究基盤の整備も順調に進んでおり、すでに開始している利用者支援においては、非常に多くのユーザーを獲得しているだけでなく、学会などを通じた宣伝活動も含めて、今後の新規ユーザーの開拓に向けた努力も計画されている。また、PUメンバー間の連携、及びビームライン担当者との連携もよく取れており、論文出版による成果発表も活発に行われている。継続期間においては、ガス・真空・溶液雰囲気におけるその場構造計測の実現が計画されており、これまでの実績から考えても、学術研究だけでなく、産業応用も視野にいれた多彩な発展が期待できる。さらに、ユーザー支援についても、課題申請・ビームタイム時の測定・試料調整・成果発表まで含めた相談や指導も計画に盛り込んでおり、非常にユーザー・フレンドリーな研究基盤の整備につながるものと考えられる。
 以上の理由から、本申請はPU課題としてふさわしい課題と判断し、2年間の継続申請を採択し、2017A期には希望シフトである42シフトを承認する。なお、継続期間においては、解析ソフトの公開など、さらにユーザー・フレンドリーな研究基盤の整備を心掛けていただきたい。


2. 入舩 徹男(愛媛大学)
(1)実施内容
 研究テーマ:大容量高圧装置を活用した地球および関連物質の高温高圧物性研究の推進
 高度化:高圧高温条件下での弾性率および変形・破壊挙動測定システムの高度化
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL04B1

(3)審査コメント
 本申請は、マルチアンビル装置と超音波装置を組み合わせた測定システムの高度化と同システムの利用者支援を継続して行うものである。2015Aから2016Bまでの指定期間において、電気的ノイズの低減対策による弾性波速度の精密測定、新しい光学系の導入によるX線回折とX線ラジオグラフィーの同時測定、微小破壊音検出システムの組み込みによる岩石試料の破壊挙動観測、を可能にしている。利用研究においては、同システムを用いた下部マントル物質の弾性波速度の精密測定と相平衡実験、カンラン石の破壊挙動や地球内核物質の変形挙動の観測を行い、地震メカニズムに関連する物質科学的知見を得て、論文発表を行っている。また、利用者支援も積極的に行い、ユーザー拡大に貢献しており、パートナーユーザーとして十分な成果を挙げていると判断する。
 今後の計画として、申請者グループが開発したナノ多結晶ダイヤモンドをマルチアンビル装置に組み込むことを予定している。これにより、圧力発生とX線計測の両面においてその効率が大きく向上し、地球および関連物質の高温高圧物性研究がさらに進展すると期待される。また、ナノセラミックスなどの超高圧材料科学の開拓も目指しており、利用分野の拡大も期待される。
 以上より、本申請書にあるパートナーユーザーの指定期間の延長は適当であると判断する。


3. 戸田 裕之(九州大学)
(1)実施内容
 研究テーマ:構造材料の4Dイメージング技術およびその周辺解析技術のさらなる高度化
 高度化:マイクロCTの多元イメージング化並びにマルチスケール化
 利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援

(2)ビームライン:BL20XU

(3)審査コメント
 本パートナーユーザーは、これまでSPring-8のX線マイクロCT技術を用いて金属材料の変形・破壊等の問題に関する研究を行ってきた。本PU課題においては、これまでの研究を更に発展させると共に、疲労・引張・圧縮試験機、高温用材料試験機を用いて疲労破壊のその場観察を行う4Dイメージングの実験・解析技術を、施設側と共同して開発することを目的としてきた。
 これまで2年間の研究は、(1)新型材料試験機の試作、改良、実用化、(2)X線トモグラフィーと細束X線ビームを用いた回折コントラストトモグラフィーによる多結晶イメージング、(3)定量解析技術や画像応用解析技術の開発、の3つのテーマを中心に行われてきた。(1)については、新型試験機を利用して高強度チタン合金の疲労破壊のその場観察が行われており、実用化に成功している。一般利用者も同試験機を利用しており、利用者支援への協力も行われている。(2)については、多結晶アルミ合金を用いた利用実験を通して高度化への協力を行い、研究成果もあげている。(3)は主としてソフトウェア開発であり、位相回復等の4D解析に必要なソフトウェアを開発、整備し、他利用者にも提供している。これらの実績から、PUの役割は十分に果たされていると判断できる。
 今後2年間の実施計画の中心課題としては、BL20XUにおけるフレネルゾーンプレートを用いた結像顕微鏡の開発が挙げられている。これは中尺ビームラインの特長を活かして超高倍率を狙うものであり、SPring-8にとって重要な開発テーマである。挑戦的であるが、高倍率化と並行して画像解析手法の開発を進めることにより、金属のみならず高分子等も含めた材料開発に向けて、従来よりも飛躍的に多くの有用な情報を引き出せると思われる。この成果を広く利用者にアピールすれば、本ビームラインの大幅な利用拡大が期待できることから、2年間の期間延長は妥当であると判断される。

 

 

以 上

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794