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Volume 22, No.1 Page 1

理事長室から -財団JASRIの事業再編成と社会的責任について-
Message from President – Restructuring and Social Responsibility of JASRI Nonprofit Corporation –

土肥 義治 DOI Yoshiharu

(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

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 財団JASRIは、1990年に発足して、先端大型研究施設SPring-8とSACLAの発展とともに歩んできた。しかしながら、財団の法律上の立ち位置と事業・業務内容は、わが国の社会状況とともに変遷してきた。1994年に特定放射光施設の共用の促進に関する法律が施行されて、財団は放射光利用研究促進機構に指定され、1997年に建設を終えてSPring-8の供用が始まった。2006年に法律の改正があり、理研が共用施設の建設、運転、維持管理・保守、高度化などの事業に責任を持つこととなり、財団は共用施設の維持管理・保守、運転、高性能化の業務の一部を理研から競争入札により受託することとなった。2007年に、財団はSPring-8の利用促進業務を行う登録施設利用促進機関に新たに選定された。2007年以降は、理研から競争入札契約により業務執行資金を受け、SPring-8とSACLAの施設運営業務支援を行ってきた。また、共用ビームライン利用者の効果的な選定と効率的な支援を進めて利用研究成果を最大化する事業を実行するために、文科省から財団は法定交付金を受けており、2016年度の利用促進交付金は13.8億円であった。
 財団JASRIは、これらの公益事業を効率的に実施して社会的責任を果たし国民の負託に応えてきたであろうか。四半世紀を経た財団組織は、肥大化してマンネリ化していないか。研究組織の技術開発力や研究支援力は、世界の先端放射光施設と比較して十分な競争力があるか。事務組織は肥大化して非効率ではないか。昨年は、これらの問に応えるため批判的に自己点検して、研究組織、事務組織、職員雇用制度などを見直してきた。研究組織の見直しにあたり、科学技術助言委員会の提言内容を参考にした。また、事務組織は、総務部を研究支援部に、研究調整部を企画調整部に再編してスリム化することとした。さらに、技術員と事務員に年俸制特任職制度を導入して中堅職員の雇用を安定化した。しかし、経費削減と人員削減の大仕事は未だ道半ばである。
 総務省の官民競争入札等監理委員会において、2010年より公共サービス促進のための事業選定と市場化テストが実施されている。この委員会は、民間事業者の創意工夫を活用することにより、良質かつ低コストの公共サービスを実現するために、政府や独立行政法人からの競争入札契約の事業内容を監視している。2012年から2015年において、理研の一般競争入札事業(最低価格落札方式で財団が受託した事業)「大型放射光施設及び関連施設運転業務」をヒアリング対象候補事業として委員会が選定した。この数年間、低コスト化や合理化のために競争入札事業の内容が精査されてきたと聞く。その結果、理研からの受託事業費は、2012年度は40億円、2013年度は39億円、2014年度は38億円、2015年度は38億円、そして2016年度は30億円程度と急激に減少した。2017年度は、財団が落札できる保証はなく、効率化・合理化努力を継続して競争入札に対応したい。
 公益財団法人JASRIの置かれている社会環境と状況は厳しい。今年は、財団の存続をかけて経費削減と人員削減を進め事業再編成に取り組みつつ、文科省と理研との契約業務を着実に実行して社会的責任を果たしたいと考えている。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794