Volume 21, No.4 Pages 337 - 338
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
2016B期 採択「新分野創成利用」研究グループの紹介
2016B Newly Approved Research Groups for SPring-8 Epoch-Making Initiatives Projects
2015B期より「新分野創成利用」の運用を開始しています。この利用は、SPring-8の利用研究成果創出を質的・量的に飛躍させるために、既存の研究分野の枠を超えた複合・融合領域等における未踏分野の開拓・創成およびそれに伴う利用の裾野を拡大することを目的としています。公募は、SPring-8で未踏分野の研究を展開しようとする研究グループ(構成は以下の図のとおり)を対象とします。採択されたグループは、代表責任者の裁量により有効期間(2年間)内に各分担責任者が複数ビームラインで「新分野創成利用課題」を実施することも可能となり、またビームタイムも認められた範囲内で期ごとに任意に配分(但し審査あり)することができます。
2016B期は、1グループの応募があり、新分野創成利用審査委員会による審査の結果、採択されました。採択されたグループおよび新分野創成利用審査委員会からの審査結果を以下に示します。
[有効期間]
2016B期から2018A期までの2年間
[採択された研究グループ]
代表責任者(所属):高尾正敏(大阪大学)
・分担責任者1(所属、利用BL※):若林裕助(大阪大学、BL13XU)
・分担責任者2(所属、利用BL※):土井教史(新日鐡住金株式会社、BL27SU)
・分担責任者3(所属、利用BL※):長澤裕(立命館大学、BL申請なし)
・分担責任者4(所属、利用BL※):中島淳一(日産化学工業株式会社、BL申請なし)
・分担責任者5(所属、利用BL※):山添誠司(東京大学、BL01B1)
・分担責任者6(所属、利用BL※):原田慈久(東京大学、BL27SU)
※利用BLは、採択時(2016B期)のものを示す。2017A期以降は、実験計画の進捗状況に応じ変遷する。
[プロジェクト名]
固液界面構造解明と可視化および構成物質間のダイナミクス
[審査コメント]
本提案を採択とする。なお、採択に当たって、以下のコメントを付す。
固液界面の構造とそこで繰り広げられる反応のダイナミクスを研究対象としている本提案は、古くて新しいテーマである。それ故に、2年という短期間で簡単には結果が出るとは期待されにくいテーマである。電池電極、メッキ、腐食など、電気化学反応における固液界面は、電子やイオンが激しく出入りしている大変アクティブな部分で、これらの反応を制御するためにはこの界面(電気二重層)の構造や電子状態、さらにはそれらのダイナミクスを解明する必要がある。本提案は、これらを回折・散乱法、分光法の最先端技術を駆使したSPring-8の特徴を生かした手法により、液体側から立ち向かう野心的なものである。特に提案では、理想系を対象とした実験ではなく、実機を対象としたオペランド実験を計画しており、この点がこれまでの研究とは一味違うものと期待される。ただ、その分、意味のあるデータ取得のためには困難も多くあることが容易に想像されるため、具体的な研究、実験の進め方に関しては、今後内部で掘り下げた議論をして進めていただきたい。また、本提案での固液界面を対象とした個別テーマは、それぞれは新分野とは言い難いが、本提案は、これまで共同研究や議論をしたことがないであろうメンバーが集まって新たな観点から課題を解決しようとするものであり、また、理論グループとの連携を強く意識していることなどから「新分野創成」として期待できる。この期待に応えるためには、研究を推進していくためのしっかりとしたマネージメント体制が確立していなければいけない。ぜひ提案代表者の情熱で若手研究者の力量が発揮される体制を構築し、これまでにない活発な新グループ形成を実現していただきたい。
以 上