ページトップへ戻る

Volume 21, No.3 Pages 208 - 209

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2014B期 採択長期利用課題の中間評価について
Interim Review Results of 2014B Long-term Proposals

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

Download PDF (646.83 KB)
SPring-8

 

 第56回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(平成28年4月)において、2014B期に採択された3件の長期利用課題の中間評価が行われました。
 長期利用課題の中間評価は、実験開始から1年半が経過した課題の実験責任者が成果報告を行い、長期利用分科会が、対象課題の3年目の実験を実施するかどうかの判断を行うものです。以下に対象課題の評価結果および評価コメントを示します。

 

-課題1-
課題名 クリーン・高効率次世代エンジン開発へのX線光学技法の適用:超高速燃料噴霧の形成メカニズム解明及び理論モデル構築
実験責任者(所属) 文 石洙((独)産業技術総合研究所)
採択時の課題番号 2014B0111
利用ビームライン BL40XU
評価結果 3年目を実施する

 

[評価コメント]
 本課題は、自動車エンジン内における燃料噴霧の形成メカニズムを解明することによって、エンジンの高効率化・クリーン化を推進することを目的としている。エンジンの燃焼室内に噴射された燃料の噴霧化と空気との混合といった物理現象は、マイクロ秒の時間で生じ、噴霧は数10ミクロンの大きさである。この現象を観察するには、SPring-8のアンジュレータビームラインBL40XUにおいて準単色光を用いる必要がある。申請者らはこれまでにX線チョッパーとX線位相コントラスト法を用いた高速・高空間分解能イメージング技術を確立し、実験を進めている。また、シングルバンチでの単一露光だけでなく、複数回露光した画像の自己相関から噴霧ダイナミクスを解析する手法も開発している。これらの新しい実験手法の開発によって、SPring-8の利用技術高度化に貢献している点は高く評価できる。
 噴霧形成過程のモデルを精密化するために、実験グループは燃料温度、燃料物性、雰囲気密度など多くの要素を変えつつ実験を行っている。これによって数値解析モデルを検証し、より現象と適合したものとすることが可能であり、すでに従来の概念を覆すような現象も見出している。一方で、すべての条件の組み合わせで実験を行うには非常に多くのビームタイムが必要となり、現実的でない。何らかの見通しを立てて、条件を絞って実験を行い、明確な結論が得られる部分に集中すべきである。
 本研究の着眼点はユニークであり、SPring-8を用いた産業応用を志向する研究として多くの自動車メーカーなどに刺激を与えることが期待できる。この点でも本研究の意義は大きく、最終的な高効率エンジンの実用化に向けて研究の推進が望まれる。よって最終年度も本課題を継続することが妥当である。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1]SPring-8 publication ID = 29996
A. Sou et al.: "X-Ray Visualization of Cavitation in Nozzles with Various Sizes" Proceedings of ICLASS 2015 (2015).

 

 

-課題2-
課題名 メガバール超高圧物質科学の展開
実験責任者(所属) 清水 克哉(大阪大学)
採択時の課題番号 2014B0112
利用ビームライン BL10XU
評価結果 3年目を実施する

 

[評価コメント]
 本課題は超高圧力領域における放射光科学の進展を目指している。具体的な目標として、1)シンプルなシステムの極限の姿の追求、2)機能性物質の合成、3)革新的な実験および理論手法の開発、を設定し、超高圧力技術、結晶構造解析、第一原理計算、水素化物実験などのグループが連携して、放射光利用実験を進めている。
 本課題のもと、今までに、液体水素の金属相の探索、硫化水素の超伝導化の検証、4メガバールを超える超高圧技術開発、臭素の圧力誘起構造相転移、の研究と開発が実施されてきた。液体水素の金属相の探索では、超高圧下でのレーザー加熱技術の開発を行い、試料温度の不安定化などの実験上の問題を克服しつつ、液体水素の金属化を実証している。硫化水素の超伝導化の検証では、超高圧力下におかれた硫化水素が示す高温超伝導転移の再現実験を行うとともに、高温超伝導を示す硫化水素の結晶構造を明らかにしている。また、臭素の圧力誘起構造相転移の研究では、加圧により、分子相から非整合中間相を経て単原子相に相転移することを明らかにし、同族のヨウ素の実験結果や理論計算との比較により、臭素特有の構造の出現を示唆している。
 以上のように、本課題では、ダイヤモンドアンビルとレーザーヒーティングを組み合わせた測定技術の開発を行い、超高圧領域の放射光科学を推進してきた。ハイインパクトな論文発表を含め十分な成果創出がなされており、今後も当初計画に沿って研究・開発が進展するものと期待されるため、本課題を継続して実施することを推奨する。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

[1]SPring-8 publication ID = 30509
K. Ohta et al.: "Phase Boundary of Hot Dense Fluid Hydrogen" Scientific Reports 5 (2015) 16560.

 

 

-課題3-
課題名 Energy scanning X-ray diffraction study of extraterrestrial materials using synchrotron radiation
実験責任者(所属) Michael Zolensky (NASA)
採択時の課題番号 2014B0113
利用ビームライン BL37XU
評価結果 3年目を実施する

 

[評価コメント]
 The aim of this long-term proposal using an energy scanning X-ray diffraction with micro beam at BL37XU is to gain deeper insight into the formation conditions and history of extraterrestrial materials in order to understand the birth and evolution of the solar system. Up to the last beamtime in November of 2015, crystallographic analysis had been performed on several precious and scarce samples, such as Stardust Mission samples returned from Comet Wild-2, Asteroid Itokawa samples from Hayabusa Mission, chondrites, products of asteroid impact onto the earth, and Interplanetary dust particles. Energy scanning X-ray diffraction experiments at BL37XU are essential to obtain crystallographic data of these samples. Since the steady progress of experiments can be recognized as described above, the committee supports to continue the experiments at BL37XU of this long-term proposal to the end of 2016.
 It is strongly expected some conclusive papers should be published, since there should be high social interest for extraterrestrial materials. Especially, Hayabusa related samples attract the attention of public in Japan. The committee proposed that experiments should be focused to one scientific subject to find out conclusive results obtained from limited numbers of samples.

 

[成果リスト]
 登録なし

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794