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Volume 21, No.1 Pages 32 - 37

4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)への第1回科学技術助言委員会の提言内容
The 1st JASRI Advisory Committee on Science and Technology

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SPring-8

 

(概要)
 財団JASRIは、1990年12月1日に発足して、昨年12月に創立25周年を迎えた。JASRIの役割は、SPring-8とSACLAの共用施設を理研とともに効率的に運転・高度化し、登録機関として共用ビームライン利用者の公正な選定と効果的な支援を行い、利用研究成果を最大化することにある。とくに、利用者の方々が学術的にも産業的にもインパクトのある研究成果を創出されるよう効果的な支援と技術開発を実行することがJASRIの重要な使命である。
 利用支援業務(研究開発、技術支援、情報支援等)の最適化のために、その業務の実施状況、技術開発の現状と将来計画を報告して有識者の助言を受けることを目的に、JASRIに科学技術助言委員会(委員長:雨宮慶幸東京大学教授)を設置した。下記の有識者17人により構成される第1回委員会は、2015年9月8日から9日の2日間にわたりSPring-8キャンパスにて開催された。
 JASRIの経営・運営活動報告として、土肥義治理事長が登録機関JASRIの使命と現状について、田中良太郎常務理事が研究系のこれまでの活動について、そして山川晃常務理事がSPring-8産業利用の現状と課題について発表した。その後に施設の現状について、加速器部門(後藤俊治部門長)、光源・光学系部門(後藤俊治部門長)、制御・情報部門(松下智裕部門長)の各部門長から報告があった。ついで利用者を支援する利用研究促進部門(櫻井吉晴部門長)、産業利用推進室(廣沢一郎室長)、タンパク質結晶解析推進室(八木直人室長)、XFEL利用研究推進室(矢橋牧名室長)、利用推進部(木下豊彦部長)そして研究調整部(大端通参事)からそれぞれの組織の活動と課題について発表があった。各報告の後に委員会メンバーとの質疑応答を行った。
 このたび、委員長の雨宮先生から理事長あてに下記の助言を頂いたので、その提言内容を本誌に公表して、利用者各位に報告する次第である。本助言委員会は毎年開催され、今後とも提言内容は本誌に掲載する。


(科学技術助言委員会メンバー)
(委員長)
雨宮 慶幸 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
石川 哲也 理化学研究所 放射光科学総合研究センター センター長
岩田 忠久 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
上田  潔 東北大学 多元物質科学研究所 教授
北岡 良雄 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授
佐々木 園 京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 教授
佐野 雄二 内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) プログラム・マネージャー
(副委員長)
下村  理 高エネルギー加速器研究機構 名誉教授
高原  淳 九州大学 先導物質化学研究所 所長・教授
月原 冨武 兵庫県立大学 特任教授・大阪大学 名誉教授
中川 敦史 大阪大学 蛋白質研究所 教授
沼子 千弥 千葉大学 大学院理学研究科 准教授
濱  広幸 東北大学 電子光理学研究センター センター長・教授
平井 康晴 佐賀県地域産業支援センター 九州シンクロトロン光研究センター 所長
古川 和朗 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設 加速器第5研究系 研究主幹・教授
古屋 和彦 富士フイルム(株) フェロー
松原英一郎 京都大学 大学院工学研究科 教授

 

 

 

 

 

第1回JASRIへの科学技術に関する助言

 

第1回科学技術助言委員会
2016年1月31日

 

1. はじめに
 SPring-8は、1997年に稼働を始めてからまもなく20年が経過し、立ち上げ期、拡大期を経過し、成熟期にあると言える。JASRIは、SPring-8における課題選定と利用者支援(技術支援と研究開発)の役割を担い、これまでその責務を果たしてきた。成熟期は、様々な側面において安定した運営を行うことができるフェーズであると同時に、マンネリ化、惰性化、タコツボ化、高齢化といった負の側面が入り込むフェーズでもある。また、我が国の経済状況はもはや楽観的な状況にはなく、科学技術の推進は不可避的にその負の影響を受けている。そのような状況下、本委員会の役割は、JASRIがこのような負の側面を首尾良く回避し、引き続きその使命と役割を果たし、SPring-8の利用研究(基礎・応用)成果の最大化に資するための助言を行うことにあると考える。
 全般的に非常に高いレベルで利用者支援や研究開発が進められていることは、委員全員が一致して認めるところであるが、そのうえで助言を求められているという付託に応えるために、さらに前進するために必要と思われる事項を報告書としてまとめる。利用研究(基礎・応用)成果の最大化を目指すことは、2021年以降に計画されているSPring-8のアップグレードにとっても必須の事柄であり、本助言委員会の任務の大きさを痛感するものである。
 本委員会では、相互に密接に関連する以下の3つの課題に関心を払いつつ、助言の取り纏めを行った。
・利用者支援における2つの側面である技術支援と研究開発の両立。
・新規利用者開拓と高度化利用者への積極的な対応の両立。
・若手研究者・技術者にとって魅力あるJASRIの在り方。


2. JASRIの経営・運営に関する助言
 右肩上がりの経済は過去のものとなり、その中で、我が国において科学技術をいかに効率良く効果的に推進していくかは解決すべき重要な課題であり、大学、国立研究機関、民間研究機関の経営・運営の在り方が議論されている。JASRIは、共用法に基づく登録利用機関であり、上記の機関とは異なるものの、科学技術の推進とその成果の社会への還元という点においては、共通点は多いと考える。新たなアイデアや価値を生み出す源泉は人であり、組織に属する1人1人が高いモチベーションを持てる経営・運営が最も肝要な点であると考える。
 SPring-8とSACLAを同じサイトに有し、文字通り、世界最先端の性能を有する研究施設の課題選定と利用者支援に責任を持つ登録機関としてのJASRIの果たすべき使命は極めて大きい。その使命の自覚を組織の1人1人が共有できるような経営・運営が極めて重要である。また、若手研究者・技術者にとって魅力ある職場作りが重要である。
 放射光科学は、文字通り、学際的かつ国際的な研究分野であり、そのような特性を有する研究分野の経営・運営は極めて高いバランス感覚と広い視野が必要とされる。関連する諸科学分野の動向を的確に捉える視野の広さと海外との競争・協調をバランス良く行う視点が求められる。
 SPring-8とSACLAの利用者支援は、放射光科学が持つ学際性と国際性に加えて、先端性と高い専門性を有する人材の確保が必要である。そのような高い能力を有する人材の育成と若い人材の確保に注力した職場作りを目指す運営・経営が極めて重要である。
 限られた予算と人的資源の中で、SPring-8の特性を活かした研究を行ううえで、何を重点的に行い、何をやらないかという「選択と集中」を行う視点も重要である。例えば、JASRI内で確保すべき技術分野と、民間により進んだ技術が存在する分野があるが、民間の進んだ技術は民間に任せ、JASRI内で確保すべき技術分野をより充実させることは、「選択と集中」の一つの方向であろう。また、国内の他の放射光研究施設でできないことに重点をおく研究開発における「選択と集中」も検討すべき事柄である。また、厳しい予算状況にあっても、利用者動向と成果創出を把握したうえで、適切な年月でビームラインのスクラップ&ビルドを行うことも「選択と集中」の一例であると考える。
 部門長、さらには、グループリーダーを含め現場の見える経営・運営の視点が重要であり、現場研究者の志気向上と人材育成に対する仕組み作りをさらに検討することが重要である。ポスドク受け入れ制度を有するが、その制度の更なる活性化を期待する。
 日々の支援業務、特に、SPring-8のアップグレードを視野に入れた研究開発に関して、理研研究者とJASRI研究者の緊密な情報交換と意志の疎通が重要である。


3. 部門、室等の各活動に関する助言
(1)利用研究促進部門
1-1 利用研究促進部門
 基礎・応用研究の幅広い利用研究領域をカバーするために構造物性 I、構造物性 II、バイオ・ソフトマテリアル、分光物性 I、分光物性 II、応用分光物性の6つのグループと、SPring-8の特性を活かした研究を推進するためにナノビーム利用研究推進グループ及び未踏研究領域グループ、及びこれらのグループを技術支援するグループからなっている。
 担当するビームラインは21本(全体の38%)であるが、そこから生まれる論文数はSPring-8全体の半数を超えている。その成果が最大になるようにするために、(1)放射光利用技術の高度化、(2)ユーザー支援の高度化、(3)動向調査に基づく新利用分野開拓を柱として取り組んでいる。
 部門としてGIGNOやSOLUTUSに積極的に取り組み、また、1.5億円近い競争的資金を獲得していることは研究スタッフの研究意識の高さを示すものと言える。
 放射光利用技術の高度化については評価できる内容であるが、シーズ側とニーズ側の会話に基づいて担当者がニーズをより明確に把握し、例示研究を示す方向で進めることが望まれる。
 ユーザーの実験手法、応用分野、利用頻度等は多岐にわたっているので、ユーザー支援は高度化というよりは最適化と考える方が妥当であろう。多様化への対応のためのマンパワーとして、ポスドク、パワーユーザー、退職研究者の効率的活用等を検討する必要がある。
 新利用分野の開拓には平均的なアンケートである動向調査は参考にはなるが、現場を一番理解している担当者の目利きが重要になる。そのためには、担当者が当該ビームラインでのサイエンスのReview Articleを書けるぐらいの姿勢が重要で、最新論文を自分で読む、国際会議への積極的な参加、海外施設との交流(派遣)等を積極的に行ってほしい。

1-2 ナノ先端技術開発支援チーム
 SPring-8のビーム特性を最大限活かすべく、ナノ・マイクロビームと時分割計測技術開発を行っている。ナノ・マイクロビームとしては集光ビームによる走査方式と結像光学系による直接写像方式を開発し、関連するビームラインに提供しており、時分割については独自の高繰り返しチョッパーを開発し、いずれも成果創出の原動力となっている。
 SACLAとの連携やSPring-8のアップグレードを念頭に置いた更なる開発展開が期待される。

1-3 構造物性 I
 極限構造物性、ナノ構造物性、動的構造物性の3チームで6本のビームラインを担当しており、パワーユーザー等と連携しながら着実に成果を創出している。光学系や試料環境の高度化をパワーユーザーの競争的資金も使いながら進めるとともに、その技術を一般ユーザーにも使えるように普遍化していることは高く評価できる。この分野は幅広い利用者があるので、その中で新たな成果創出を目指すためには、基礎研究として重要な研究、産業利用に展開できる研究について、担当者が適切に判断してリードしていくことが求められる。このための人員が十分でないことは周知であるが、課題の集中と選択とともに、上述のようにパワーユーザー、ポスドク、退職研究者等の有効利用を図ることが望まれる。

1-4 構造物性 II
 コンプトン散乱、核共鳴散乱、高分解能非弾性散乱の3手法により、物質の量子ダイナミクス研究を展開し、超電導機構解明の基礎的なことから蓄電池材料開発関連まで幅広い成果を挙げている。
 種々の高度化によって装置が先鋭的になってきたので、より広範囲のポテンシャルユーザーに使い勝手の良い支援が必要になってくる。また、ダイナミクスの測定と静的構造の利用についての一貫した支援は大変重要であり、具体的な成功例を示すことが求められる。ダイナミクス研究には放射光と中性子の相補利用が重要であるが、それを実証するにはまず双方のビームライン担当者が実際に具体的な実験を行うことが必要な段階であると考えられる。

1-5 バイオ・ソフトマテリアル
 マイクロイメージングでは、SPring-8のビーム安定性の特性を活かした高分解能化、高速化及び高画質化において顕著な進展を見せている。この技術を利用したいユーザーは多くいると考えられるが、その中で代表的なユーザーを開拓し、かつ、利用の普遍性を図ることが望まれる。さらに、SPring-8のアップグレードを見据えた開発に取り組んでいくことが求められる。

1-6 XAFS/XMCD
 XAFS/XRFについては化学反応系や希薄薄膜試料等を含む多種・多様な測定対象・条件での測定、10 msecでの一過性時間分解DXAFS、あるいは100 nm分解能2次元マッピング等、高い水準の測定が行われていることは評価に値する。将来展望として、それぞれの技術の更なる高度化に加えて複合測定システムの構築を挙げていることは妥当ではあるが、ビームライン担当者がニーズをしっかり念頭に置いて進めることが成果創出につながる。
 XMCDは磁気物性測定のユニークな測定手段であり、特に高圧技術との組み合わせで成果を出している。今後は、構造物性 IIのダイナミクス測定やさらに中性子測定との相補利用によって、研究内容がより深まると期待される。

1-7 分光物性
 軟X線分光ビームラインではユーザーのニーズに応えるために大幅な改造を行い、また、研究分野の変化にも対処できるような運営がされている。硬X線分光領域では世界に先駆けて展開した内核・伝導電子状態の解明する手法をさらに高度化してユーザーに提供している。これらの整備に対して競争的資金を獲得する努力をしていることは高く評価できる。将来的に顕微分光に関する技術開発を行うとともにマルチスケール分光解析に取り組む方向は妥当である。

(2)産業利用推進室
 SPring-8の主要業務として産業利用を担ってきており、民間企業による利用と成果創出の促進を図るシステムを試行錯誤しながら構築し、社会から認知される幾つもの有用な成果が得られている。測定器の高効率化や測定の自動化等の機器整備高度化に加え、支援対象として利用実績の少ない分野に絞ること等が功を奏している。測定代行については測定器の高効率化に加えて随時受付、短時間利用等によって実施課題が増加してきている。
 将来構想として産業界の技術開発上の課題解決に参加するという態度は妥当である。対象分野として産業規模の大きな分野へ展開していくことがインパクトを与える意味で重要であると考えられる。また、企業の立場からは、課題解決手法は放射光だけとは限らないので、分析全般に実績のある機関との連携やアウトソーシングを取り入れることにより、より一層有効な結果が得られることが期待できる。さらに、これまで支援してきて実績の挙がっている企業が自立して放射光利用ができるようにリードしていくことも必要であると考えられる。

(3)タンパク質結晶解析推進室
 タンパク質結晶解析は放射光利用により大きく進展した分野であり、SPring-8でも共用ビームラインに加えて、理研、阪大、NSRRCの合計7つのビームラインが設置され、測定環境の連携協力をしながら、機関ごとの運営を行ってきた。共用以外のビームライン運用の長所を参考にしつつ、共用ビームラインをより有効に利用するために、推進室が設けられ、利用支援の効率化、測定技術の高水準化、潜在的利用者の掘り起こし、わかりやすい利用制度を目指し、見事に成功した。特に、L1分科会の課題選定方式を大きく変更したことは利用者にとって使い勝手が良くなったと言える。
 更なる測定技術の向上により、遠隔測定の充実や測定代行を拡大することは妥当な方針であると考えられるが、測定代行についてはスタッフの負担増加につながらないよう配慮することが必要である。汎用型測定の簡易化の一方で、この分野での重要研究課題を持つパワーユーザーとの連携研究の発掘にも力を入れることが望まれる。

(4)XFEL利用研究推進室
 推進室はSACLAの利用研究の中枢としての機能を持っており、装置・手法開発、利用システム高度化、ユーザー対応等を重点的に行っている。FELの利用研究はまだ始まったばかりで、手探り状態で行わざるを得ないところがあるが、スタッフとユーザーが一体となって取り組む新たな体制を組んでおり、若手研究者がビジブルで、かつ、モチベーションが高い。世界をリードする成果が創出されることが期待できる。順次ルーチン化、汎用化の方向も検討してほしい。

(5)利用推進部
 利用者選定や利用者利用手続き等で早くから電子化して利用者の利便性を図ってきたことは評価できる。また、相次ぐ利用システムの多様化等にもその利便性を損なわないための努力を続けてきている。しかし、基本システムが古いことと屋上屋を重ねるような方式が続くことにより、次第に新たな対応が困難になっている。SPring-8のアップグレードの機会にシステムを一新することが望まれる。
 SPring-8に関する統計情報の利用は大変有効であるが、その解析には施設側がその結果をどのように今後の課題選定に活かすかという明確な意思を持って行う必要がある。そのためには例えば国立情報学研究所の研究者との共同研究を行うぐらいの価値があると思える。


4. 登録機関業務に関する助言
 −利用者に対する技術支援とそれに資する研究開発に関して−
 論文数や競争的資金の獲得件数は増加しており、現場の努力は評価できる。技術支援と研究開発の両立とそのバランスは、JASRIにとって必須な事項であり、二兎を追うことを是として進めて頂きたい。1人1人が両面をバランスすることが理想的であるが、実際には容易ではないと考える。1人1人のスタッフの適性・特性を考慮して、チームとして、または、グループとしてバランスをとることが重要である。その意味で、既に導入した技術員制度は評価に値する。加えて、研究スタッフの評価における複数軸の導入も必要であると考える。研究者と同様にテクニカルスタッフの地位向上と活躍の場を広げていくことが今後の発展の重要なポイントになると考える。
 グループリーダーは、それぞれのグループ内及びグループ間の議論の場を適切に設定し、研究及び技術に関する情報が共有化されることを心掛けて頂きたい。この点は今後大いに改善されるべき点である。そこで共有され蓄積される経験と情報こそ、JASRIスタッフが技術支援を高いレベルで行うことのできる場になると考える。特に異なる測定法・コンセプト(回折、散乱、分光、イメージング)の相互乗り入れが新しい手法として繰り込まれて先端的な研究が展開されている動向にあり、今後もそのような方向を目指す取り組みが重要である。ビームライン全体を俯瞰的・横断的に見渡し、マネージメントをする利用研究促進部門の部門長は極めて重要な立場であり、上記の点に特に注力することが重要である。また、ユーザーのニーズをさらに積極的に掌握する必要がある。成果に繋がる対象(例えば、社会的課題)は早い速度で変化し続けているが、それに追随し、あるいは先駆けることが、常に成果の最大化を実現するうえで肝要である。SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)との更なる情報交換が重要である。
 部門長のみならず、グループリーダーも経営者としての意識を併せ持って、グループの取り纏めを行う必要がある。研究スタッフの大学等の他機関との人的交流を積極的に意識して頂きたい。そのためには、研究スタッフが転出しても蓄積された技術が継承される仕組みを構築することも重要である。外国と比較して現場のマンパワーが不足していることは否めないが、定年退職者(再雇用者)の積極的な活用は検討に値する。例えば、新規ユーザーのための相談役、どこで実験を行ったら良いかの相談、ビームライン担当者との橋渡し、実験後のアフターケア等、コンシェルジュとしての役割は退職者(再雇用者)に適した仕事であると考える。
 これまで行われてきたGIGNO、SOLUTUS、匠等のJASRI内部の取り組みは、若手の人材育成に効果があり、良い仕組みである。スタッフの意識の高まり、研究開発能力の向上、及び、研究成果を通してのSPring-8利用の高度化に寄与している。SPring-8シンポジウム等の機会を有効に利用して、研究開発の成果を発表することが重要であり、また、そのような方向で取り組みが行われていることは評価できる。Webは改善され見やすくなってきているが、さらに、研究スタッフの活動状況(論文、研究費等)を積極的に発信していくことが重要であると考える。また、重要な国際会議には積極的に参加できる環境が必要であり、海外との交流を通して、各自が関わる分野での自分の立ち位置における緊張感と誇りを持って技術支援と研究開発に取り組むことが必要である。
 SPring-8とSACLAの技術開発要素には共通する部分と各々異なる部分がある。共通する部分に関しては、同じサイトにある利点を活かして情報交換の場を適宜設けて、相乗効果が期待できる効率的な取り組みが必要である。
 2021年頃を目標に理研がSPring-8をアップグレードする計画を持っており、JASRIの研究スタッフがその議論に積極的に関わるポテンシャルを持つことが重要である。研究スタッフが、SPring-8のアップグレードに積極的に関わる強い意志を持って、日々の業務を遂行することが重要である。今後、低エミッタンス化された光源、それに伴う空間コヒーレンス度の高いビームの利用研究を強く意識して、研究開発に取り組むことが重要である。
 将来計画を実現させることは、長いタームにおける人材育成にとって最も強力かつ効果的な機会になると考えるので、将来計画を後押しする日々の業務の遂行を期待する。


5. まとめ
 以上の取り纏めは、事前に準備された200ページにわたる資料と2日にわたる助言委員会でのプレゼンとその後の質疑応答を基に纏めたものである。
 本委員会の目的は、JASRIのこれまでのアクティビティを評価することではなく、今後の発展に資するための助言を行うことにあると考えて、本取り纏めを行った。
 個々の部門、推進室が非常に高いレベルでその任務を遂行しており、非常に広範にわたる放射光科学の中で、ある意味での選択と集中がなされていることは理解できる。しかしながら、その選択と集中が、SPring-8が今後も世界のフロントランナーの一翼を占めるにふさわしいものであるかどうかは、施設者、利用者との十分な協議を行ったうえで検討していくことが求められる。登録機関JASRI、施設者、利用者が一体となって、他施設の追従を許さない体制を構築することを目指されたい。
 今回の助言委員会は初めての試みであり、本取り纏めは、全体的な視点における助言に重きをおいた。これらの助言を実際の仕組みに落とし込むことは必ずしも容易ではないと考えるが、本助言が登録機関としてのJASRIの使命を果たすうえで、また、SPring-8の利用研究成果の最大化を目指すうえで参考になることを願うものである。
 本委員会は毎年開催される予定であり、個々の課題やより詳細な点における助言は次回以降、適宜行いたいと考えている。

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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