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Volume 20, No.4 Pages 351 - 353

2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

16th International Conference on XAFS(XAFS16)報告
Report on 16th International Conference on X-Ray Absorption Fine Structure

本間 徹生 HONMA Tetsuo

(公財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, JASRI

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SPring-8

 

XAFS16について
 2015年8月23日(日)より28日(金)にわたり、ドイツのカールスルーエにて第16回X線吸収微細構造国際会議(XAFS16)が開催された。XAFS国際会議は、XAFSとそれに関連した手法を利用した新しいサイエンス、さらにそれらの基本となる理論的なアプローチと技術的な開発について情報交換および議論する場である。XAFS国際会議は3年に1回、主に世界各地にある放射光施設に近い都市で開催されている。今回は、Karlsruhe Institute of Technology(KIT)が、ドイツに放射光施設があるDESYとHZBの協力を得て主催し、KITの南キャンパスで開催された。会議について細かいことで気になったことがいくつかあったが、全体としてスムーズに運営されていて、参加者の誰もが満足のいく会議であったと思う。

 

 

セッション構成、参加人数、発表件数など
 パラレルセッションおよびポスターセッションでのカテゴリーは、
Ⅰ. Theory and Modeling, Data analysis
Ⅱ. New sources and new instrumentation
Ⅲ. Advanced Methods
Ⅳ. Chemistry, catalysis, operando and time-resolved studies
Ⅴ. Radionuclides, actinides, earth and environmental
Ⅵ. Materials Science
Ⅶ. Energy-related materials
Ⅷ. Soft Matter and biology
Ⅸ. Microscopy, beamlines, application, cultural heritage
という話題で、理論・データ解析、先進的な測定技術からそれらを利用した環境・エネルギー分野はもとより、バイオや文化財にいたる様々な分野における応用研究まで、XAFSに関連した広範な分野にわたっていた。また、それとは別にXFELおよび産業利用に関するセッションが開催された。
 今回の会議では、37ヵ国から500以上の人が参加した。ドイツからの参加者が最も多かったが、日本からも100人以上が参加し、2番目の多さであった。本会議に投稿されたアブストラクト数は559であり、発表の内訳は、Oral:235件、Poster:324件であった。アブストラクトのまとめの部分のみ紙媒体として配布されたが、アブストラクト全体はPDFファイルとして当日配布された。検索などの機能がなく、知りたい発表のアブストラクトを探すのが容易ではなかった。

 

 

会場
 会場は、KITの南キャンパス内にあるメインホール(Audimax Lecture Hall、図1)および講義室などが利用された。プログラムは、プレナリーセッションの後に、パラレルセッション、2日目と3日目のパラレルセッションの後にポスターセッションが行われた。プレナリーセッションはメインホールで行われた(図2)。メインホールは、会場の真ん中で仕切りを入れて二つの会場に分けることによってパラレルセッションにも利用された。大ホールの有効活用として斬新なデザインだという印象の一方で、通路が中央と両端にしかないので出入りが不便に感じた。ポスターセッション会場は、プレナリーセッションの会場から少し離れた講義室や研究室が入っている建物の1階の廊下で行われた(図3)。カテゴリー毎に分かれていて、興味がある分野を集中して見やすい配置になっていたのが良かった。メインホール以外にポスターセッションの両サイドにある講義室がパラレルセッションの会場として使われていたが、メインホールとも離れており、会場間の移動に時間がかかるためカテゴリーが異なった講演を聴きに行けなかったことがあった。

 

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図1 XAFS16のメイン会場(Audimax Lecture Hall)

 

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図2 メインホール(Audimax)

 

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図3 ポスターセッションの様子

 

 

 会場の規模は適当で、KITの学生と思われるスタッフが各会場に3人程度配置され、スムーズに講演が行われた。午前中のプレナリーセッションとパラレルセッションの間と、午後のパラレルセッションの中頃に30分程度と少し長めのコーヒーブレイクがあり、長い講演の合間にほっと一息つける貴重な休憩時間であった(図4)。また、この時間を利用して離れた会場に移動することができた。

 

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図4 コーヒーブレイクの様子

 

 

トピック
 全てのセッションを網羅することはできないが、いくつかのセッションにおけるトピックについて述べることにする。
 New sources and new instrumentationのセッションでは、一過性反応に対する時間分解計測法であるQuick XAFS計測システムについて各施設から報告された。最高時間分解能:10 msの計測システムが欧米・日本の各施設で整備され、標準的に利用できる時代になったことが示されたが、応用研究についての発表は、燃料電池(SPring-8)以外にはほとんど行われていない状況であり、今後の応用展開が期待される。また、Camille La Fontaineによって、フランスの放射光施設SOLEILのビームラインROCKにおいて、Si(111)とSi(220)の二つのチャンネルカット結晶が取り付けられた分光器が整備され、4 − 40 keVの範囲を20 msでEXAFS測定が可能となっていることが紹介された。それらのチャンネルカット結晶を30秒程度で交互に入れ替えることによって、二つの吸収端のその場測定を可能にした。さらに、XFELを用いたこれまでにないフェムト秒での時分割XAFS測定、コヒーレント光とイメージングを組み合わせた手法、軟X線領域における溶液試料のin-situ測定、新規ではないが、XRDなどのX線回折・散乱法やCTなどのイメージングと組み合わせた手法、ラボ光源での軟X線測定など様々な取り組みについての紹介があった。
 Advanced Methodsのセッションでは、共鳴発光分光(RXES)計測法を用いた応用研究が、触媒に対するin-situ計測を中心に広がりつつあることが報告された。特に、高効率計測システムの開発により、時間分解RXES計測が始められていることが報告された。
 Chemistry, catalysis, operando and time-resolved studiesなどの応用研究に関するセッションでは、RXESを用いた発表が多く、触媒、電池、アクチノイド、環境中の重金属、磁性材料など多岐の分野にわたっていた。RXESのスペクトル解析においてDFT計算などの理論計算を利用しないことは考えられない。実際、多くの発表において実験だけではなく理論計算も行い、構造や電子状態について議論されていた。RXESを利用した応用研究が急速に発展している背景には、高効率測定システムの開発など実験技術の高度化だけではなく、計算科学の進歩とソフトウェアの普及による寄与が大きいと思われる。ヨーロッパならではの研究として文化財・芸術関係の分野では、可視光照射による絵画の退色についての報告が数件行われている点が目立った。絵の具に含まれる金属元素の化学形態とその経時変化を調べることにより、退色の化学機構を明らかにする研究が進められている。最終的には、絵画が描かれた時点の色を再現することが期待されている。また、共焦点XAFS法の開発と応用研究が進められており、絵画や陶磁器の表層下にある絵の具・顔料の金属元素の化学状態について、切片試料を作成せずに非破壊で調べる手法として利用が始まっている。
 XFELのセッションでは、1日の枠が設定され13件の報告が行われた。装置開発と応用研究の割合は半々程度であった。LCLS、SACLAにおいて、フェムト秒時間分解XAFS/RXES計測システムの開発とその応用研究を中心に、着実に利用研究が展開されつつあることが報告された。
 産業利用のセッションでは、産業界および放射光施設から材料開発におけるXAFS利用とその分析技術に関する9件の報告が行われた。産業界からは触媒開発に関するものがほとんどであり、施設側からはXAFSビームラインの産業界への支援体制と利用状況に関する報告であった。中国企業のSinopecが上海放射光施設(SSRF)に専用ビームラインを3本建設する計画を報告した。セッションの最後に、Roundtable discussionを行い、(1)放射光の必要性について、(2)産業利用の割合が低い理由について、(3)産業界から興味を持ってもらうためにはどうすべきか、(4)進むべき方向などについて議論されたが、解析支援の必要性、低コスト利用、産学連携、インパクトが高い論文を出すことではなく、産業界が抱える課題を解決することが重要であるなど、一般的な意見がほとんどであった。講演者の顔ぶれや講演内容から、今後も自動車、化学関連の企業を中心にXAFSの産業利用が発展していくのではないかと期待する。

 

 

最後に
 これまでの会議と同様、XAFS分析における時間、空間分解能の進歩とその応用について報告されてきたが、今回の会議では特に高エネルギー分解能XAFSの応用についての報告が多いと感じた。今後、これらの応用研究が普及することによって、例えば触媒活性などを担う金属クラスターや発光材料における微量添加元素の局所構造および電子状態とそれらの特性との相関についての知見が得られ、反応メカニズムの解明が期待される。
 次回XAFS17は、2018年にポーランドのクラクフで開催される予定である。次回の会議までにサイエンスと測定技術がどのような発展を遂げるのか楽しみである。本報告にあたり、同会議に参加した高輝度光科学研究センター利用研究促進部門の宇留賀朋也氏と加藤和男氏および京都大学の谷田肇氏より有益なコメントをいただきました。心より感謝いたします。

 

 

 

本間 徹生 HONMA Tetsuo
(公財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0924
e-mail : honma@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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