ページトップへ戻る

Volume 20, No.2 Pages 192 - 193

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2011B期 採択長期利用課題の事後評価について -2-
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2011B -2-

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

pdfDownload PDF (604 KB)
SPring-8

 

 2011B期に採択された長期利用課題について、2014A期に3年間の実施期間が終了したことを受け、第51回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(平成26年12月)による事後評価が行われました。
 事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に対象となる長期利用課題3課題のうち、今回評価を受けた1課題の評価結果を示します。研究内容については本誌130ページの「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
 なお、3課題のうち先に事後評価が行われた1課題の評価結果については、「SPring-8/SACLA利用者情報」Vol.20 No.1(2015年2月号)の88~89ページに掲載済みです。残り1課題の事後評価は、平成27年3月に実施し、評価結果は「SPring-8/SACLA利用者情報」Vol.20 No.3(2015年8月号)に掲載する予定です。

 

課題名 放射光X線を用いた多成分からなる自己集合性錯体の単結晶構造解析
実験責任者(所属) 藤田 誠(東京大学)
採択時課題番号 2011B0039(BL38B1)、2011B0042(BL41XU)
ビームライン BL38B1、BL41XU(併用)
利用期間/配分総シフト 2011B~2014A/48シフト(BL38B1:24シフト、BL41XU:24シフト)

 

[評価結果]
 本長期利用課題は、構造生物学ビームラインBL38B1、BL41XUの併用によって、SPring-8の高輝度光源と結晶構造解析技術基盤を活用し、申請者のグループがこれまで創製してきた自己集合性錯体の構造を決定することを目的としている。
 対象とする自己集合性錯体は巨大分子でありながら、一義的に定まり、かつ、非常に安定である。しかしながら、構造決定が容易な小分子に比べ、分子サイズが50 Å以上と大きく、多くの溶媒を含むことで、その構造決定は困難であった。このような物質に対して、溶媒の取り扱い、試料のマウント法、微小ビームの活用による結晶性の良い部分を抽出した回折データ取得などの実験手法の構築を行った。さらに、データの良否判定から構造決定に至るまでの一連の解析手法も合わせて確立した。このように、試料ハンドリング、回折実験手法、解析手法におけるそれぞれの開発と相乗効果により、申請者グループが創製する様々な種類の自己集合性錯体の構造決定に成功した。
 当初の目的は、自己組織化によって構築した様々な多成分錯体の単結晶構造解析であったが、自己組織化中間体や世界最多成分からなる錯体など、新規な結晶構造の決定に成功するなど、当初目標を上回る成果が得られた。特筆すべき成果は、タンパク質ユビキチンを包接した錯体において、最大エントロピー法の適用による精密化をさらに進め、電子密度のヒストグラム解析という新規な解析法により、錯体内部のユビキチンの可視化に成功したことである。これらの成果は、Nature CommunicationsNature Chemistryをはじめとして、高いインパクトファクターの専門誌などに10報以上の成果報告をしている。
 以上のように、長期利用課題を有効に活用することで、実験・解析手法の開発を相乗的に進め、自己組織化による自己集合性錯体の構造決定手法を確立した。また、その手法の応用により、新規物質群の構造決定に成功した。これは、小分子とタンパク質などの巨大分子の中間のサイズ領域にあり、未開拓であった物質群を「フロンティア物質群」として切り拓く成果であり、長期利用課題として非常に高く評価される。

 

 

[成果リスト]
(査読あり論文)

[1] SPring-8 publication ID = 21457
D. Fujita: "Protein Encapsulation within Synthetic Molecular Hosts" Doctor Thesis (The University of Tokyo) (2012).

[2] SPring-8 publication ID = 21458
J. Iwasa: "Synthesis and Functionalization of M24L48 Spherical Complexes" Doctor Thesis (The University of Tokyo) (2012).

[3] SPring-8 publication ID = 22218
D. Fujita et al.: "Protein Encapsulation within Synthetic Molecular Hosts" Nature Communications 3 (2012) 1093.

[4] SPring-8 publication ID = 22819
Y. Fang et al.: "Noncovalent Tailoring of the Binding Pocket of Self-Assembled Cages by Remote Bulky Ancillary Groups" Journal of the American Chemical Society 135 (2013) 613-615.

[5] SPring-8 publication ID = 26898
K. Harris et al.: "M12L24 Spheres with Endo and Exo Coordination Sites: Scaffolds for Non-Covalent Functionalization" Journal of the American Chemical Society 135 (2013) 12497-12499.

[6] SPring-8 publication ID = 26900
S. Sato et al.: "Solid-State Structures of Peapod Bearings Composed of Finite Single-Wall Carbon Nanotube and Fullerene Molecules" Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 111 (2014) 8374-8379.

[7] SPring-8 publication ID = 27550
C. J. Bruns et al.: "Emergent Ion-Gated Binding of Cationic Host-Guest Complexes within Cationic M12L24 Molecular Flasks" Journal of the American Chemical Society 136 (2014) 12027-12034.

[8] SPring-8 publication ID = 27735
Q. Sun et al.: "An M12(L1)12(L2)12 Cantellated Tetrahedron: A Case Study on Mixed-Ligand Self-Assembly" Angewandte Chemie International Edition 53 (2014) 13510-13513.

[9] SPring-8 publication ID = 28009
D. Fujita et al.: "Geometrically Restricted Intermediates in the Self-Assembly of an M12L24 Cuboctahedral Complex" Angewandte Chemie International Edition 54 (2015) 155-158.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794