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Volume 20, No.2 Pages 234 - 235

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

JASRIスタッフによる開発研究成果の発信 ~ SPring-8/SACLA利用研究成果集Section Cについて ~
Publication of Development Research Results by JASRI Staff in SPring-8/SACLA Research Report

八木 直人 YAGI Naoto

(公財)高輝度光科学研究センター Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI)

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SPring-8 SACLA

 

1. はじめに
 共用ビームラインにおける開発研究の現状を、SPring-8/SACLA利用研究成果集第3巻1号のSection Cで公表しました。共用ビームラインの活用に役立てていただければと思います。
http://user.spring8.or.jp/resrep/
 以下に公表の経緯を説明します。


2. JASRIの役割と施設利用
 公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)は、文部科学省によって登録施設利用促進機関(登録機関)として登録され、SPring-8およびSACLAの利用促進業務を行う機関として選定されています。この登録機関JASRIの役割の一つに、SPring-8とSACLAの利用技術の開発があります。これにはSPring-8やSACLAの放射光ビームを利用した実験が必須です。しかし一方で登録機関は課題選定業務も行うため、公平性のためにその施設利用には一定の制限が設けられています。これを定めているのは、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(共用法)の第12条で、登録機関が文部科学大臣の認可を経て調査研究その他の目的でSPring-8やSACLAを利用できる旨が定められています。JASRIは毎期(半年)ごとにこの申請を行って、SPring-8では総利用時間(ビームを利用実験に使用できる時間)の20%、SACLAでは15%を上限として認可されています。実際にJASRIスタッフが使用しているビームタイムは、図1に示しているようにSPring-8で12%程度、SACLAでも12%程度です。

 

20-2-2015_p234_fig1

図1 JASRIスタッフによるビームタイム使用

 

 

 これらのJASRIスタッフによるビーム利用は、その内容を報告する義務があるため、成果公開型の利用研究課題という形を取っており、「12条課題」と呼んでいます。12条課題の約半数は、利用研究課題審査委員会(PRC)によって他の共同利用課題と同じ手続きで選定されたもので、残りはJASRIの部門長、室長の承認下で高度化・調整ビームタイムを利用して実施されるインハウス課題です。高度化・調整ビームタイムとは、SPring-8の共用ビームラインのビームタイムのうちPRCが割り当てていない部分で、利用研究課題に共通のビームライン調整(分光器の調整や検出器の校正など)と成果専有時期指定課題の実施が主な目的ですが、余裕があればJASRIの調査研究も実施しています。高度化・調整枠にはSPring-8では総ビームタイムの20%が割り当てられています。これは上記の12条課題の上限20%と混同されがちですが、数値は同じでも全く異なる意味を持っています。
 JASRIスタッフによるSPring-8とSACLAの利用は、(1)放射光共用施設の技術的検討や利用技術の開発に資する調査研究、(2)放射光利用研究分野の開拓に資する調査研究、(3)利用者のニーズ、社会的要請に基づく新たな放射光利用方法の検討等に資する調査研究、の3つのカテゴリーに分けられていますが、これらはどれも一般利用者の利用実験と密接に結びついた研究活動です。これらの利用の成果については、登録機関利用研究活動評価委員会(委員長:東京大学 雨宮先生)による評価が平成25年度に行われ、内容については高く評価されています[1][1] 登録機関利用研究活動評価報告書(平成25年)
http://www.spring8.or.jp/pdf/ja/jasri_review/130620.pdf
。しかしその一方で、JASRIによる研究開発は利用者が利用することで初めて価値を持つにも関わらず、その内容が利用者に十分伝えられていないという点も指摘されました。同様の指摘は他の評価委員会でもなされており[2][2] 大型放射光施設(SPring-8)中間評価報告書(平成25年)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu17/houkoku/1342511.htm
、JASRIが研究開発を行う重要性とともに、その成果を利用者に周知することの重要性が指摘されています。

 

 

3. 利用研究成果集Section Cについて
 JASRIスタッフが行う調査研究の成果には学術論文として発表可能なものもあり、これらは各種学術雑誌に投稿し掲載するよう務めています。その一方で、実験技術開発や機器の改良、試行実験などの結果には、学術論文としては発表しにくいものもあります。しかし、学術的な意義はともかくとして、共用ビームラインにおいてどのような技術開発・高度化活動が行われているかを利用者の方々に知っていただくことは、ビームラインを活用していただくために重要と思われます。
 SPring-8/SACLA利用研究成果集は、平成25年に、SPring-8やSACLAの研究成果を広く公開し、社会に還元する目的で発刊された査読付き論文集で、当初から技術開発成果を取り上げるSection Cが設けられています。そこで、各共用ビームラインにおける開発研究の現状と成果を、年に一度まとめて利用研究成果集Section Cで公表することにしました。査読付き学術雑誌にふさわしいレベルの原稿を各ビームラインで作成し、投稿後レフェリー審査を経て、平成27年2月発行の第3巻第1号に、全26共用ビームラインの原稿が掲載されました。今年は初めてということもあって、各ビームラインのスペックも合わせて掲載しました。利用者の方々には、共用ビームラインの活用に役立てていただければと思います。
 今後も継続的に共用ビームラインにおける開発状況を利用研究成果集Section Cに掲載していく方針です。課題申請時にどのような装置や実験技術が利用可能であるかなど、多くの情報を含んでおりますので、ぜひ課題申請前にご一読をお願い致します。

 

 

 

参考文献
[1] 登録機関利用研究活動評価報告書(平成25年)
http://www.spring8.or.jp/pdf/ja/jasri_review/130620.pdf
[2] 大型放射光施設(SPring-8)中間評価報告書(平成25年)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu17/houkoku/1342511.htm

 

 

 

八木 直人 YAGI Naoto
(公財)高輝度光科学研究センター
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : yagi@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794