Volume 20, No.2 Page 161
3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告3 -XAFS・蛍光分析分科会-
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – XAFS and Fluorescence Analysis –
SPring-8利用研究課題審査委員会 XAFS・蛍光分析分科会主査/北海道大学 触媒化学研究センター Catalysis Research Center, Hokkaido University
平成25年、26年度の分科会の主査を仰せつかり、2年間お世話になりました。前回は平成17年、18年度の2年間でしたが、当時と比べ、顕微分光がかなり盛んになってきた印象を受けました。また、18年当時は産業界の利用が進み、マシンタイムが不足気味で、宇留賀朋哉氏と何とか採択数を増やそうと苦労しました。今回は前回よりSPring-8のビームラインも増え、ビームタイムの配分が楽になってきたように感じます。とはいえ、どうしてもレフェリーの点数が低いとビームタイムの配分ができず、多くのユーザーの方には悲しい思いをさせてしまったことが、未だに悔やまれます。もちろん申請を100%受け付けることは物理的には難しいですが、それでも課題に対する申請者の思いを考えますと、残念です。またもしかして、審査では拾いきれない重要な実験・研究を見落としているかもしれません。意義や目的がわかりにくいと、傾向として点数が低くなりがちですので、ぜひ、意義と目的がわかりやすい形になるよう申請書を書いていただければと思います。
おそらく、日本の科学技術の将来を考えますと、放射光の利用はますます重要になると思います。現在の我が国の放射光に関する課題として、高機能放射光施設が世界各地で建設されている中、我が国では計画はされてもなかなか建設にまで至らないことがあります。SPring-8は今年で早いもので、17年になり、次期計画に向け、広く英知を結集し、早期のSPring-8-II計画実現に向けて活動を活発化する必要を痛感します。こうした活動を通じて、世界に誇る放射光としてのSPring-8に今後もお役に立てればと思います。
SPring-8は、世界最高水準の施設とスタッフからなり、今や国内の放射光の世界的拠点であり、日本にあるその他多くの放射光施設をリードし、将来の放射光計画を決めていくという重要な役割を一手に握っています。今大学は運営費交付金を削られ、研究室で使える校費はほとんどない状況にあります。研究を続けようとすると、目的と使途がはっきりした外部資金を利用しないといけないため、自由な発想で、多様性に富む研究はできにくい状況になっています。こうした多様性に富む学術研究にとっても、SPring-8やJ-PARC、京コンピュータという共有できる資産はますます重要になっています。研究者の自由な発想を基礎とする学術研究と社会の要請に応える戦略的研究の両方を実現することはとても大変なものと思いますが、それを行うことができる力は十二分にあり、邁進されることでしょう。
一方、もしあえて、SPring-8に欠けているものがあるとしますと、“優しさ”の概念でしょう。グローバル化した国際社会において、評点という客観的基準で、選別し、結果に対して厳格に評価する。国民の期待と付託を課せられたSPring-8にとって、世界一流、あるいはその卵たちに世界最高水準の放射光技術を提供し、負け組は一切無視する強さこそSPring-8に求められる姿と頭ではわかっていますが、これに、もし優しさという徳目が加われば、将来に憂いなく、真の放射光のリーダーとなると思います。
北海道大学 触媒化学研究センター
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