Volume 20, No.1 Pages 123 - 124
5. 告知板/ANNOUNCEMENTS
平成26年度実施の水質汚濁防止法改正に伴う構造対応化工事について
Update Construction of the Drainage Pipe for the Scientific Research
平成26年4月より実施しております表記工事につきまして、工事は平成27年3月末には完了いたしますが、ユーザーの皆様にはご不便をおかけしたかと思いますので、本工事の経緯につきまして少しご説明させていただきたいと思います。
平成24年6月に水質汚濁防止法の一部を改正する法律が施行されました。これは平成13年、輸送用機械器具製造工場でトリクロロエチレンの貯蔵タンクへの移し替え作業による地下水汚染や、平成19年、金属製品製造工場で溶液槽の配管つなぎ目の劣化により六価クロムが漏えいし、床面の亀裂から地下浸透するという事件など、地下水汚染の事例が毎年確認されてきたことから法改正されることとなったものです。
環境省によると、地下水は都市用水の約25%を占める貴重な淡水資源でありますが、一方、地下水汚染は、地下における水の移動経路が複雑であるため、原因者の特定が難しく、自然の浄化作用による水質の改善が期待できないことから一度汚染すると回復が困難なのだそうです。
法改正では、有害物質による地下水の汚染を未然に防止するため、有害物質を使用・貯蔵する施設の設置者に対し、地下浸透防止のための構造、設備および使用の方法に関する基準の遵守、定期点検およびその結果の記録・保存を義務付けています。
SPring-8では、研究排水に関連する施設、配管がこれに該当しますが、配管は総延長にして8 kmを超えます。これだけの工事となると予算が手当てできないため国に予算要求が必要となりますが、幸いにも平成25年度の補正で予算は手当てできました。翌年度への繰越を含めて約15ヶ月の予算です。
工事は法の趣旨に則り、配管に亀裂などが発生した際に研究排水が地中に染み込まないこと、排水が漏れ出たことが分かるようにすることを主眼として設計会社と仕様の検討を行い、自然流下配管と真空配管のシステムを組み合わせたものにいたしました。
自然流下の配管については、地中にトレンチを設置し、その中に配管することで、仮に配管に亀裂などが発生しても地中に染み込むことがないようにし、また点検口を設けることで容易に状況確認ができるようにしました。また真空配管部については、配管内が陰圧となるため、仮に配管に亀裂が生じても外に排水が漏れ出さない構造となっており、もし亀裂などにより配管内の圧力が下がれば、その情報が中央制御室で確認できるようになっているため、至急の対応が可能となっています。さらに今回の工事では真空配管の管路を2本設置するなどのバックアップ構造としており、仮に管路に亀裂が入ってもすぐにもう1本の管路に切り替えることで排水ができなくなるような事態を回避できるシステムとなっています。
今回の工事で一番大変だったことは、岩盤の凹凸が予想以上に多かったことから岩の斫(はつり)作業が多く発生してしまったことです。蓄積リング周りの工事において岩盤が出ることは、当初より予想していたので、工事開始前に建設当時の地質調査記録を確認するとともに蓄積リング棟周りで10ヶ所程度の試掘調査を行い、本工事に臨みましたが、実際に掘削工事を始めてみると予想していなかった場所で岩盤が出てきました。岩盤の斫作業はかなりの振動が発生するため、当然ビーム運転中は実施できません。そのため、当初の工事工程をビームタイムと重ならないようにしながら何度も入れ替えて工事を進めましたが、一部ユーザーの方にはご不便をかけることとなってしまいました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。
皆様のお蔭をもちまして工事は無事に竣工を迎えられそうなところまで来ております。SPring-8は供用開始から17年、建物の建築開始から考えますと20年が経ち、設備の老朽化も進んできております。安定したビーム供給をするためには、今後も大きな設備工事を実施する必要がございますが、その際は何卒ご協力いただけますようお願いいたします。