Volume 20, No.1 Pages 26 - 38
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
平成21年度指定パワーユーザー活動報告(2)
構造物性研究の基盤としての粉末回折法の開発
Development of Powder Diffraction Method for the Basis of Structural Materials Science
(1)
指定時PU課題番号/ビームライン | 2009A0084/BL02B2 | ||||||||||
PU氏名(所属) | 久保田 佳基(大阪府立大学) | ||||||||||
研究テーマ | 構造物性研究の基盤としての粉末回折法の開発 | ||||||||||
装置整備 | 粉末結晶回折装置の整備および高度化 | ||||||||||
利用研究支援 | 粉末結晶回折装置を用いた共同利用研究の支援 | ||||||||||
利用期 | 09A | 09B | 10A | 10B | 11A | 11B | 12A | 12B | 13A | 13B | 合計 |
PU課題実施シフト数 | 48 | 54 | 48 | 54 | 51 | 33 | 48 | 54 | 45 | 39 | 474 |
支援課題数 | 12 | 11 | 11 | 9 | 7 | 9 | 5 | 10 | 5 | 6 | 85 |
(2)PU活動概要
1)研究目標・目的
本PUグループは、代表者 久保田佳基と西堀英治(名古屋大学工学研究科・准教授、現筑波大学数理物質系物理学域・教授)、黒岩芳弘(広島大学理学研究科・教授)により構成される。本PU課題では、SPring-8を用いて初めて可能となる多孔性材料へのゲスト分子吸着構造解析、電荷軌道秩序可視化のための超精密構造解析、医薬品などの多自由度を持つ分子性結晶の未知構造解析、非鉛圧電材料の精密構造解析などの先端的な粉末構造物性研究を推進する。そして、それらを進めるために必要となる物性同時測定を始めとする測定技術開発や装置の高度化を行うことで、次世代のSPring-8を用いた粉末構造物性研究のグランドデザインを策定し、それを推進していくことを目標とする。申請者らがBL02B2にて培ってきた、引用数100を超える論文は16報ながらも総引用数が3,500を超える影響力の大きなものである。これらの成果をベースとして申請者らの新奇性と独創性の高い研究成果を原著論文・学会・研究会などで発表する。そして、さらに申請者らが、試料合成や物性測定の専門家が多数集う特定領域研究や新学術領域研究などの大型プロジェクト研究に参画し、SPring-8の有用性をアピールしていくことで新規ユーザーを開拓する。それらの活動を通して、様々な実験環境や測定システムに関するユーザーの要望を取り入れながら、機器開発を含めた実験計画の立案、実験支援、解析支援を行い、次世代の構造物性研究の基盤としての粉末回折のビームライン(BL)や研究分野を提案する。
これまでのBL02B2における研究成果を見渡してわかるように、対象とされる物質はセラミックス、多孔性配位高分子、医薬品有機結晶、金属間化合物、有機導体、炭素化合物など多様であり、粉末回折法は非常に幅広い分野をカバーしている。これはBLの戦略として、特に結晶構造解析が専門ではない物性研究者をターゲットとして、測定が簡便にでき、統計精度の高いデータが得られるイメージングプレートを用いた大型デバイシェラーカメラが製作・運用された結果である。それに加えて、多様化するユーザーの要望に応える形で、高温・低温、光照射やガス雰囲気の下、薄膜など特殊環境での測定技術開発が進められてきた。
現在、粉末回折専用の共用BLはBL02B2のみであり、一般ユーザーにとってビームタイム獲得は難しくなってきている。2004年のBL評価においても第2の粉末回折BLが提言され、2つのBLは従来の汎用性を重視したBLと特殊環境下での実験を重視したBLのように住み分けをすることが必要であろうと述べられている。将来的には現在の単なる粉末回折という括りだけではなく、例えば、化学反応、セラミックス・高温材料などのような、物質や目的に特化したグループ、BLの提案も視野に入れながら、申請者らがこれまで進めてきた先端的な精密構造物性研究を継続し、構造物性研究の基盤としての粉末回折法という立場から測定技術や装置の開発を推し進める。
BL02B2における現在のスペックを考えると、極めて質の高い回折データにより静的な構造を精度良く調べることが基本となるが、1つの方向性としては、種々の条件下における測定技術の開発が挙げられる。これまで光照射やガス雰囲気の下での測定が進められているが、外場応答のその場測定は物性研究者からの要望が非常に多い。また、測定状態のモニターも重要なテーマである。すなわち、物性を発現していると考えられる状態で回折データと物性を同時測定することは結果の信頼性を高める有効な手段である。
もう1つは測定や解析の精度を向上し、今以上に精密な電子密度を含めた構造データを得る研究がある。PU制度が始まって以来申請者らが行ってきた実験の結果からわかったことは、中・高角度領域のデータを精度良く測定することが自由度の多い有機結晶などの未知な構造解析においてキーとなること、そして、d = 0.2 Åに迫る領域のデータを持ってすれば、理論計算と定量的に対比可能な高精度の電子密度分布を得られることである。このようなことはエネルギー分解能が極めて高いSPring-8の高輝度放射光だからできることであり、従来のConfirmationを中心とした研究から一歩先へ進んだ研究を展開できる。
以上のように先端的かつ社会的にもインパクトのある研究成果の創出を目指し、ユーザーの要望を取り入れながら測定技術の開発、装置の高度化を推進する。
2)研究成果
本課題では、SPring-8の利用により、初めて可能となる先端的な粉末構造物性研究を推進しつつ、物性同時測定を始めとする測定技術開発や装置の高度化を行うことで、SPring-8を用いた次世代粉末構造物性研究のグランドデザインを策定することを目標として、新奇性と独創性の高い研究成果の創出、ユーザー支援、新規ユーザーの開拓を進めてきた。そして、本PU課題と支援課題を合わせて査読付き論文111報が発表されている。その中には、社会的なインパクトが大きく、学術的にも評価が高いとされているScienceやNature系学術雑誌の論文も数報含まれている。インパクトファクターが高い学術雑誌の論文数は以下のとおりである。Science 1報、Nature Mater. 2報、Nature Chem. 1報、Nature Commun. 1報、Sci. Rep. 1報、Phys. Rev. Lett. 1報、Phys. Rev. B 10報、Adv. Mater. 1報、Angew. Chem. Int. Ed. 4報、J. Am. Chem. Soc. 9報。
以下に本PU課題の成果の中から主なものを示す。
2-a)ガス吸着多孔性配位高分子の構造研究
多孔性配位高分子は、金属イオンと有機分子の配位結合により構成される結晶物質であり、規則配列したナノサイズの細孔を持つ。この物質は、極めて高い設計性や柔軟な骨格構造などの特徴を持ち、従来の多孔性材料とは一線を画する新しい物質である。申請者らの共同研究グループは、2002年にSPring-8の高輝度放射光を用いて細孔内に吸着したガス分子の整列構造を明らかにし(R. Kitaura et al., Science 2002)、これが本物質の構造研究の大きなブレークスルーとなった。
この物質を用いた応用研究は実に様々なものがあり、ガス貯蔵以外にも、ガスの分離・精製や触媒、ナノ空間を用いた物質合成などが挙げられる。その中でも物理分野の研究者として興味深いものは、この物質が作る様々なナノ空間を利用したクラスターの形成や、それらとナノ細孔との相互作用、その低次元構造による特異な物性に関する研究である。酸素分子O2は、分子間力に静電的相互作用だけでなく磁気的相互作用が大きく関与していることから、制限された空間内で形成されるO2クラスターの構造と磁性の関係に着目した。Fig. 1に示すように、Cu-CHD細孔内で、窒素分子N2はShifted-parallelのS型の配列をとるのに対し、O2は20 Kにおいて平行なH型の配列をとっていることが示された。熱的に励起された90 Kでは、quintet状態のS型が混在するため、MEM電子密度はブロードなS型の分布を示していると解釈された。この結果は、O2ダイマーの分子配列と磁気的相互作用とが密接に関わっていることを示しており、小林らが提唱した磁場誘起再配列機構(T. C. Kobayashi et al., Prog. Theor. Phys. Suppl. 2005)を支持するものである。そして、そのモデルに基づいて酸素吸着Cu-CHDおよびCPL-1の磁化測定のデータが統一的に解釈された(Fig. 2)。両者にはギャップパラメーターに大きな違いがあり、CPL-1の方がCu-CHDに比べて、細孔ポテンシャルがO2分子の分子間ポテンシャルに対してより大きな影響を与えていることが示唆された(A. Hori et al., J. Phys. Soc. Jpn. 2013)。本研究は、多孔性配位高分子において大きな興味の1つであるゲスト-ホスト相互作用を定量的に考察した初めての成果であるといえ、本物質の物理学的研究に対して大きな波及効果があると考えられる。
Fig. 1 Cu-CHDに吸着した酸素分子および窒素分子のMEM電子密度分布
Fig. 2 酸素が吸着したCu-CHDとCPL-1の磁気測定
また、新規多孔性配位高分子が示す選択的なガス吸着特性についても新しい知見が得られている。多孔性配位高分子の細孔は、気体分子と同程度の大きさを持つことからガス分子の分離や精製への利用が期待されている。大気中から、窒素、酸素ガス分子を得ることや、二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物などの環境に影響があるとされるガス分子を除去することは、産業的にもそして環境問題の観点からも大変重要である。しかし、酸素と窒素は分子サイズや物理化学的性質が似ているため、それらの効率的な分離はきわめて難しい組み合わせの1つである。多孔性配位高分子Zn(TCNQ-TCNQ)bpyは、酸素に対して電子的に相互作用可能なTCNQ(Tetracyanoquinodimethane)分子を配位子に持つため、そのような相互作用を持たない窒素に比べて、酸素を選択的に取り込むことができる。そして、この物質がガス分子を取り込むときに、骨格構造が柔軟に変形することが粉末回折データからわかった(Fig. 3)。このような酸素分子と窒素分子の電子状態の違いを利用したガスの分離は新しい概念であり、産業的にも、また、学術的にもインパクトが大きな成果であった。この研究成果はNature Chem.誌に掲載され(S. Shimomura et al., Nature Chem. 2010)、その被引用数はすでに100を超えている。
Fig. 3 酸素分子と電子的に相互作用する多孔性配位高分子のガス吸着のイメージ図
一方、多孔性配位高分子の構造柔軟性を利用してガスセンシング機能を持つ物質を合成することに成功した。ゲスト分子の吸脱着により骨格構造が変化し、それと同期して細孔内に導入した発光性分子のコンフォメーションやパッキングが変化して発光をコントロールできる(Fig. 4)。本研究では発光性高分子であるdistyrylbenzene(DSB)をレポーター分子として導入した多孔性配位高分子複合体を合成した。この複合体は大気中の主要ガス成分において、窒素、酸素、アルゴンは吸着せず、CO2のみを選択的に吸着することがわかったが、粉末回折法により195 KにおけるCO2導入過程のホストの構造変化を調べたところ、吸着ガス圧力の増加にともなって、骨格構造は連続的に変形していることがわかった(Fig. 5)。そして、IR測定より、DSBの立体構造(ひねり度合い)変化が骨格構造の変化と同期的に起こっていることがわかった。この複合体はCO2吸着に応答して蛍光挙動を連続的に変化させ、吸着後にCO2を減圧除去すれば、もとの状態に戻ることもわかった。すなわち、CO2の導入圧に応じた蛍光挙動の変化を利用することにより、センサーとして機能することが明らかになった。本研究成果は多孔性配位高分子の最大の特徴の1つである構造柔軟性と発光性高分子をうまく組み合わせた新しいガスセンシング法を提案したものであり、Nature Mater.誌に掲載された(N. Yanai et al., Nature Mater. 2011)。
Fig. 4 CO2導入によるホスト骨格構造とレポーター分子(DSB分子)の変形
Fig. 5 CO2導入による粉末回折パターンの変化
以上のように多孔性配位高分子の構造と機能に関する研究では、PUとBLスタッフ、共同研究者の連携により整備された粉末回折データのガス吸着その場測定システムを活用することにより先端的な研究成果が得られており、ここに示した以外にも多数の論文が発表されている。
2-b)スピネル酸化物FeV2O4の構造・磁気相転移
スピネル酸化物FeV2O4は、Fe2+(Aサイト)、V3+(Bサイト)イオンがともに軌道自由度を持ち、低温下で逐次構造相転移と多段の磁気相転移を示す。FeV2O4の結晶構造は、室温の正スピネル構造から温度降下にともない、140 Kで正方晶HT (c < a)、110 Kで斜方晶、60 Kで再び正方晶LT (c > a)に転移する。そして、110 Kの転移はフェリ磁性転移をともない、60 Kではnon-collinearなフェリ磁性への転移をともなうが、60 K以下の結晶構造および、V3+の軌道状態には報告に差異が存在する。Fe2+とV3+の軌道自由度と相転移の相関を解明するため、AおよびBサイトに軌道自由度を有さないMn2+、Fe3+を段階的に置換したFe1-xMnxV2O4、およびFe1+xV2-xO4の結晶構造と磁性を調べた。
Fig. 6に本研究で得られたMn2+置換体の構造磁気相図を示す。Mn2+をドープすると、 x = 0.3で立方晶から正方晶HT (c < a)の構造相転移(TS)が消失し、代わりに正方晶LT (c > a)がフェリ磁性転移温度TN1で出現した。この結果は、Fe2+の協力的Jahn-Teller効果(3z2-r2軌道)が希釈され、代わりにスピン軌道相互作用(x2-y2軌道)が支配的になったためと考えられる。さらに、x = 0.6近傍でフェリ磁性転移温度TN1にともなった構造相転移は消失し、x > 0.6の領域ではキャントフェリ磁性温度TN2で正方晶HT (c < a)が出現した。結晶構造解析の結果(Fig. 7)によれば、FeO4の四面体の歪みは、x = 0.6でほぼ消失し、Fe2+における軌道整列の長距離秩序が、x = 0.6で破壊されていることが示唆される。一方で、Fe3+の置換体Fe1+xV2-xO4の実験結果において、x = 0.25近傍でTN2にともなったc軸方向へ小さなVO6八面体の歪み(0.01~0.02 Å程度)が消失することがわかった。これはキャントフェリ磁性にともなってV3+の軌道整列が生じていることを示唆しており、歪みの方向を考慮するとNiiらにより提案されている複素軌道整列状態が生じていると考えられる。Mn2+の置換体においても、x = 0.6まで同様のVO6八面体の歪みが観測されたが、x > 0.6以上ではその歪みの方向が変化した。この歪みはMnV2O4で提案されているA-type(yz + zx)の軌道整列によるものと考えられる。このようにFeO4の八面体の歪みの消失とともにVO6八面体の歪みの方向の変化を考慮すると、Fe2+の軌道整列がV3+の軌道整列の安定性に関与していると示唆された。この研究では、微小な八面体の歪みを観測し、軌道整列に関する知見を得た。構造パラメーターから0.01~0.02 Å程度微小な歪みを観測したことから見て、統計精度の高い回折データが得られるBLの特徴を活かした成果であると言える(S. Kawaguchi et al., J. Phys. Soc. Jpn. 2014、S. Kawaguchi et al., J. Phys.: Condens. Matter 2014)。
Fig. 6 Fe1-xMnxV2O4の構造・磁気相図
Fig. 7 Fe1-xMnxV2O4のRietveld解析の結果
2-c)粉末試料からの未知構造決定法の展開
これまで進めてきた粉末試料からの分子性材料の未知構造決定については、開発したソフトウェアの販売、世界最高自由度となる45自由度の構造決定(M. Moriya et al., Chem. Eur. J. 2012、Inside cover)、80原子を超える大型分子の構造決定(S. Maki et al., Acta Cryst. C 2013、Cover Picture & Highlighted Article)など様々な方面へと展開した。
BL02B2で得られる分子性物質の粉末回折データから遺伝的アルゴリズムを用いた実空間法による構造を決定するシステムについては、Crystal Profilerの名前で三菱化学系のソフトウェア会社である(株)菱化システムより2010年から販売を開始した。Graphic Processing Unit(GPU)を用いて計算速度を高めた本システムにSPring-8で得られるデータを組み合わせることで、医療粉末など他の市販ソフトでは構造決定が困難な物質の構造決定をも可能とするシステムになっている。欧米製のソフトウェアがほとんどを占める構造解析分野において純国産のソフトウェアとして注目を集めた。
GPUで加速したシステムの性能を最大限に活用して、45自由度からなるLiイオン電池固体電解質材料の構造を決定することに成功した。Liイオン電池の研究において、分子性の固体電解質は、軽量で形態に柔軟性を持つこと、液漏れがなく安全性が高いことから注目を集めている。名古屋大学の守谷博士のグループがボロンを含む全く新しいタイプの分子性固体電解質を開発した。Liのイオン伝導度は調べられたものの、本当に試料がLiを伝導するのか、表面だけの伝導ではないのかなど疑義があり、構造の決定が望まれていた。この試料の構造をBL02B2で得られた粉末回折データのみから決定するとともに、電解質としての機能を発揮する100℃までの構造の温度依存性を明らかにした。この物質は全く新しいタイプの分子性固体電解質として特許出願している(含ホウ素化合物、電解質材料、及びリチウムイオン電池、出願国:日本、出願日:2009年8月25日、出願番号:特願2009-194588、出願人:国立大学法人名古屋大学、発明者:守谷誠、余語利信、橋本渉、北口比呂、澤博、西堀英治)。明らかにされた構造から、Liイオン3個とB(o-C6H4O2){O(CH2CH2O)3CH3}2分子1分子および、N(SO2CF3)2 (TFSI)2分子がUnitを組んでいることを明らかにした。高分子でなく複数の分子が結びついてUnitを形成するのは分子性固体電解質としては初めて見つかった構造である。このUnitがファンデルワールス力で結びついて結晶を構成していた。結晶の構造をさらに調べると結晶のb軸に沿ってLiの1次元の伝導パスが存在していることがわかった。BL02B2で得られた高精度の粉末回折データと、本PU課題で開発された高速計算システムを組み合わせることにより、多自由度を持つ結晶構造の粉末未知結晶構造解析が可能となった。
以上のように本PU課題では、SPring-8およびBL02B2の特長を活かし、PUメンバー各自が専門とする対象物質について研究を推進し、質・量ともに確保された成果を創出した。本PU課題および支援課題を含めた5年間の論文数111報は、1年あたりおよそ22報であり、これはBL02B2で年間に創出される論文数のおよそ38%にあたる。そして、SPring-8で1年間に創出されるBLあたりの論文数およそ17報の1.3倍である。これらの論文の中には学術雑誌のEditor's ChoiceやHighlighted Article、Cover Pictureに選定されたものや、Top 20 Most Downloaded Articlesとなったものなどが11報あり、高い評価を受けた。また、解説記事等15件、国内外の招待講演等34件、特許1件など論文以外にも各研究分野で高い評価を受けた。そして、受賞関係では、本PU課題期間中にメンバーの西堀が文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞し、学生・大学院生の学会におけるポスター賞などの受賞も9件に上る。プレスリリースは9件行い、学術的、社会的にインパクトのある成果とそれらを創出したSPring-8の有用性を広く社会にアピールすることにも努めた。さらに、共同研究も含めて12報の博士論文が提出されており、人材育成にも貢献している。このように本PU課題の成果は、SPring-8における研究成果創出に大きく貢献した。
3)ユーザー支援
支援課題申請者らが目的のデータを測定し、論文発表までできるように、実験の計画・実施、解析を支援した。5年間の支援課題総数は85件であった。支援課題とPU課題を合わせて、ユーザータイムの平均40%程度のビームタイムにおいてPUグループが実験に参加し、BLの円滑な運営と成果の創出に貢献した。
支援課題にはPUグループが開拓した新規ユーザーの課題が13件含まれており、その中には海外の3研究グループの課題も含まれる。特筆すべきこととして、インドのDhananjai Pandey教授グループのSPring-8での実験を支援するために、日本学術振興会の二国間交流事業(共同研究)の予算を2010年度と2011年度に獲得し、旅費や滞在費の支援も行ったことが挙げられる。
事業名:インドとの共同研究 振興会対応機関DST
研究課題名:ペロブスカイト型マルチフェロイック物質の相転移と分極構造の可視化研究
日本側代表:黒岩芳弘(広島大学)
インド側代表:Dhananjai Pandey(IIT(Banaras Hindu University))
また、研究基盤を構築できていない若手研究者に対してSPring-8を利用した成果創出が可能となるよう積極的に支援した。例えば、新規開拓ユーザーの中で、末國晃一郎助教(北陸先端科学技術大学院大学)は助教に着任直後の若手研究者であり、PUメンバーが参加した研究会をきっかけに共同研究が立ち上げられ、研究代表者としての課題申請に至った。この課題の成果は、自然界に存在する鉱物テトラへドライトが示す熱電変換特性に関するものであり、J. Appl. Phys.誌に論文掲載された(K. Suekuni et al., J. Appl. Phys. 2013)。この成果はプレスリリースされただけでなく、読売や朝日などの全国紙を含む合計9誌の新聞に取り上げられ、社会的なインパクトも非常に大きかった。
このように新規開拓した研究グループを含め、支援課題を通して、新規物質や機能性材料の合成や物性研究を行っている研究者らと共同研究を推進し、学術的・社会的に評価の高い研究成果が多数創出された。
4)測定技術開発など
測定技術開発については、主として以下を行った。
4-a)X線チョッパーを用いた電場印加時分割実験の試み
静電場印加下での構造歪みの計測がうまく行えることがわかったので、次のステップとして、誘電体セラミックに電場が印加された瞬間からの動的な格子歪みの変化を測定するために、SPring-8で開発された水平回転型X線チョッパーを用いて、BL02B2において電場印加下時分割構造計測を試みた。バンチモードとして、Dモード(1/7-filling + 5 bunches)を用いた。
チョッパー使用にあたりいくつかの問題点が明らかとなった。BL02B2のX線ビームは水平面から4 m・rad上向きに入射される。そのため、チョッパーの回転軸を鉛直方向から4 m・rad傾ける必要があり、チョッパーの回転が安定しないことがわかった。このような状況では、実験ハッチ扉の開閉による室温の変化によってもチョッパー駆動が不安定になった。一方、BL02B2ではキャピラリー封入した粉末試料の測定を標準とするため、水平方向の集光は行っていない。そのため、このような発散ビームでは、チョッパーの窓に効率よくX線パルスを通すことが困難であった。BL02B2でチョッパーを使用する場合は、回転軸を水平方向にしても同程度に高速回転できる鉛直回転型X線チョッパーを開発する必要があることを提案した。このテスト測定では、Fig. 8に示す1.4 MHzのトレインキラーモードで測定を試みた。
Fig. 8 SPring-8のDモード
全周を7等分し、1/7には連続して85 mA相当の電子が入り、残りの部分は等間隔5ヵ所に各3 mA相当のバンチがある。
テスト測定にはチタン酸バリウムセラミックスを用いた。セラミックス(=粉末試料)からの瞬間の回折強度は極めて弱いため、繰り返し電場反転を起こさせながら同じ位相の強度をイメージングプレートに多重露光する必要がある。試料には、静電場実験と同様に、このような長時間の繰り返し電場反転にも耐えられる積層セラミックコンデンサ型に加工したセラミックス棒を用いた。Fig. 9に、チタン酸バリウムの回折プロファイルを通常測定のプロファイルと比較したものを示す。通常の5分露光の測定に匹敵する強度を得るには、測定時間を約20倍、イメージングプレートの読み取り感度を10倍にする必要があることがわかった。つまり、チョッパーを使用すると通常の1/200程度の強度となることがわかった。一方、水平方向のサジタルフォーカスがうまく機能するモノクロメータを備えたBL02B1で同様のテスト測定を行ったところ、チョッパーを傾ける必要がなく、極めて効率よく実験を行うことに成功した。したがって、このようなBLでは現状のまま、通常の水平回転型X線チョッパーを導入すれば、粉末試料に対しても時分割実験ができることがわかった。
Fig. 9 BaTiO3(立方晶相)の回折プロファイル
チョッパー有りの測定では、イメージングプレートの読み取り感度を通常の10倍とした。通常の測定と比較して、1/200程度の強度となることがわかった。
4-b)ダイヤモンド・アンビル・セルを用いた高圧実験の試み
台湾の研究グループとの共同研究において、ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)を用いた高圧実験を試み、スピン転移を示すCo錯体の4.2 GPaにおける粉末回折データを得ることができた(Fig. 10)。物性研究において高圧下の測定の要望は多い。SPring-8には高圧実験用BLとしてBL10XUが唯一存在するが、必ずしも高圧実験専用BLほどの高精度のデータではなくても十分に有用であるケースもあり、他のBLにおいてもDACを設置することができれば簡単な実験は可能である。ユーザーの幅広いニーズに応えるためにもこのような取り組みは有用であると考えられる。
Fig. 10 デバイシェラーカメラに設置されたDAC(左)とCo錯体の高圧下粉末回折データ(右)
4-c)BL02B1との複合活用による成果創成
BL02B2には、大気下で安定な試料の粉末回折データの温度変化測定はシステムとして完備されており、目的とするデータを確実に測定することができる。一方で、結合長の高精度計測や構造決定、微弱な超格子反射の測定などは、BL02B2を用いて未だなかなか困難である。本PU課題のメンバーは、BL02B2とBL02B1の2本のBLのPUを務めた西堀PU(~2008Bまで)の継続メンバーであり、メンバーの何名かは、BL02B1のPUメンバーと同じ研究室に所属していたため、BL02B2とBL02B1を融合して活用した研究も推進した。その成果は、Science誌、Nature Commun.誌、Angew. Chem.誌などのインパクトの高い成果へと繋がっている。
5)本課題のまとめ
始めに先端的な粉末構造物性研究の推進について述べる。本PU課題および支援課題を含めた5年間の発表論文は111報あり、その内容は、近年注目されている多孔性配位高分子、新規超伝導体、強誘電性物質、単分子有機伝導体など幅広い物質を対象とし、また、手法もRietveld解析や精密電子密度解析、未知結晶構造解析など様々である。それらの中には、Science誌やNature Mater.誌を始めとする評価の高い雑誌の論文も含まれており、質・量ともに十分なものであると考えている。
ユーザー支援については、PUビームタイムもうまく活用して、ユーザーが成果を出せるように実験から解析、論文投稿まで綿密なサポートに努めた。その結果、支援課題においても新規物質や物性に関して多数の成果が得られた。PUメンバーが参加した研究会などをきっかけとして開拓された新規ユーザーは、海外のグループも含めて13グループであった。今後特に、X線回折を専門としない物質合成や物性を専門とする研究者に対しても積極的に働きかけ、さらなる潜在的なユーザーの新規開拓に努力すべきと考えている。
BL装置開発として、結晶構造・誘電率同時計測システムと電場印加時分割実験システムを構築した。その結果、電子デバイスが動作している環境下で、結晶構造と電気物性を同時計測できるようになったことは、産業的にもデバイスの故障解析において重要な意味を持つと期待される。また、X線チョッパーを利用した時分割測定については、実験条件や問題点が明らかにされ、粉末結晶による電場印加下時分割測定の目途が立った。
6)粉末回折BLのグランドデザイン
最後に本PU活動から導かれるグランドデザインについて述べる。SPring-8の共用開始当初の頃と比較すると、現在では物性測定などにおいてPhysical Property Measurement System(PPMS)を始めとして温度変化の一連の測定は汎用化してきている。また、成果を挙げている多くのSPring-8ユーザーには、複数のBLを使いこなしているケースが多く見られる。このような状況に鑑みれば、今後、BL02B2は、EXAFSや簡単な単結晶の実験なども可能な“物質科学のための複合計測BL”になっていくことが望ましい。例えば、SPring-8のタンパク質結晶構造解析BLでは、試料中の金属イオンを同定するためのXAFS測定が単結晶データを測定するセットアップのまま平易にかつ迅速に行えるシステムが運用されており、BL02B1では粉末・単結晶両者を測定することが可能となっている。BL02B2は現状の装置のままでもタンパク質BLと同様のXAFSシステムは容易に導入可能であり、また、簡単なソフトウェアを作成するだけで単結晶構造解析も可能であると考えられる。対象物質として、無機、低分子、高分子材料まで含めた生体を除くほとんどの材料をカバーするBL02B2にとって、粉末回折を核に多様な測定を(専用BLと比べて精度は落ちたとしても)平易に可能にすることは物質科学の成果をこれまで以上に挙げていくために重要である。
放射光科学の進歩と同様に物質科学の進歩は著しい。強相関電子系、熱電変換材料、強誘電体、多孔性配位高分子などいずれの物質系においても新規機能や新規材料が見出され急速に発展を続けている。申請者らは、BLの円滑な運用と成果創出のためにSPring-8に協力する形でスタートしたPU制度において3期、計11年にわたり活動してきた。その中では、特定領域研究や新学術領域研究、CRESTやERATOなどの大型プロジェクトに参画しながら研究分野の動向を把握し、上記のようなBLの高度化を常に考えてきた。その結果、本PU課題および支援課題を含め100報を超える研究成果を挙げることができ、また、粉末回折BLの新しい方向性を見出した。今後も申請者らの経験とアイデアを活かし、これまで以上にBLの研究成果創出力をアップし、SPring-8を活用した物質科学研究に貢献する所存である。
(3)成果リスト(査読有り論文)
SPring-8利用研究成果登録データベースに登録済みで、PU課題番号が関連づけられた査読付き論文のみを掲載します。(その他、PUとして支援した一般課題の発表論文やポスター発表、受賞歴など多数の成果がありますが、掲載スペースの都合上割愛しています。)
[1] SPring-8 publication ID = 15261
C. Moriyoshi et al.: "Charge Density Study on Phase Transition in BaTi2O5 Ferroelectric" Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 09KF06.
[2] SPring-8 publication ID = 17193
S. J. Kim et al.: "Direct Observation of Deuterium in Ferromagnetic Zn0.9Co0.1O : D" Physical Review B 81 (2010) 212408.
[3] SPring-8 publication ID = 18435
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