Volume 15, No.3 Pages 166 - 168
1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH
SPring-8での測定代行の現状 タンパク質結晶測定代行について
Mail-in Protein Crystallography Data Collection Service
1.はじめに
(財)高輝度光科学研究センター(以下JASRI)は、平成18年6月より(独)理化学研究所が実施してきました「タンパク質結晶メールイン測定サービス事業」を平成21年4月1日(2009A)よりSPring-8共同利用の枠組みへ移管し、「タンパク質結晶測定代行」として利用支援を行っています。医薬品の開発や研究、未知の化学物質や環境物質等の探査に欠かせない生体高分子のX線構造解析において高精度の測定が可能な実験環境を提供し、ユーザーが実施する研究開発の進展に貢献します。以下の内容をご確認の上、是非ご利用ください。
2.概要
(1)タンパク質結晶測定代行
SPring-8におけるタンパク質結晶回折実験の成果専有利用は専用ビームラインの活用や共用ビームラインの一部利用など多様な形態で実施されています。しかし、放射光施設の利用経験が少ない研究者の利用については、そのサポートも含めた受け入れは限定的でした。本稿で紹介するタンパク質結晶測定代行は、JASRIの研究者がユーザーに代わって、タンパク質結晶の回折像の測定を行うものです。ユーザーは、試料を宅配便等でSPring-8へ送付、または持参するだけで、SPring-8の高輝度X線を利用した実験結果を得ることができます。放射光を利用したタンパク質結晶回折測定に馴染みのない方はもちろん、遠隔地から来所せずに測定したいという経験者の方のご要望にも対応します。
なお、本測定代行は『成果専有時期指定課題』の一形態として取り扱い、ビーム使用料および消耗品実費負担についても、当該制度に基づいた金額となります。また、得られた成果およびその成果に基づく特許権等を独占的に専有することができ、利用申請内容に係わる秘密は保持されますので、情報を開示することなく研究開発等を進めることが可能です。
(2)対象ビームラインBL38B1 構造生物学III
BL38B1は偏向電磁石を光源とし、安定な光を利用できるビームラインです。利用できる波長領域は0.70〜1.70 Åで、異常分散実験にも対応します。また、サンプル自動交換ロボットSPACEと専用ピンの組み合わせによって、再現性の高い試料センタリングを実現して自動測定を可能とし、Webインターフェースを備えたD-Chaによって、試料情報、測定条件、回折データなどの情報のやりとりを利用者とオペレータの間で円滑に行うことができます。さらに、最近SPACEがマグネットピンに対応し、測定代行でも対応できるようになりました。また、CMOS検出器を用いた迅速測定も可能です。
(3)利用実績
共用ビームラインBL38B1では、測定代行での利用を月1回程度受け付けられるように体制を整えております。2009A期から2010A期までの間に5回実施しており、2時間での仮照射のみの利用から、本測定を含む12時間の利用まで、様々な利用時間で行われています。測定波長は 1.0 Åでの利用がほとんどです。申請者は記録された画像をインターネット経由でリアルタイムに確認できますので、後述する実験の立ち会いは必須ではありませんが、立ち会いを希望されるケースも半数程度ありました。なお、利用者のほとんどは民間企業でした。
3.利用時期、利用料金、試料、実験への立ち会いについて
(1)利用時期
タンパク質結晶測定代行の申込書は、随時受け付けます。各種書類ごとの提出期限、実施可能な日程については、「6.その他(1)タンパク質結晶測定代行の相談窓口」にお問い合わせください。
(2)利用料金
利用料金は、次の1)および2)の合計金額となります。測定代行1回あたりの最大利用時間は12時間となります。
1)ビーム使用料
ご利用時間はまずJASRI担当者と十分に事前打合せを行っていただき、必要ビームタイムとビーム使用料(時期指定利用 成果専有時期指定料金相当:180,000円/2時間)を算出いたします。費用の確定は実際の利用時間に応じて1時間単位で算出されます。
2)消耗品実費負担相当額
消耗品実費負担相当額として、定額分(2,575円/2時間)および従量分(測定代行中に使用した消耗品等の金額)を2時間単位で算出します。
3)利用時間の目安
ビーム使用料、消耗品実費負担相当額は、仮照射、本照射を行った時間に対して請求されます。トレーセットなどの準備時間、本照射決定までの待機時間は加算されません。
仮照射例 12個の仮照射時間 = 約1時間
本照射例 10秒露光180枚で本測定 = 約40分
(3)測定試料
測定試料は、生体高分子結晶のみを取り扱います。重原子誘導体等の重金属を微量含む試料については相談窓口にご相談ください。なお、JASRIが定める「ランク4」の化学薬品、即ち、取り扱いに際し国または県の許可が必要な物質は、原則対象外とします。
(4)測定可能な試料の保存形態と数量について
液体窒素中で凍結された試料をSPACE専用トレーに専用ピンを収納(51試料/トレー)するか、UnipuckトレーにHamptonあるいはSPINEピンを収納(16試料/トレー)した状態で、2トレーを上限としています(ただし、トレータイプはどちらか一方を選択)。収納方法の詳細は、構造生物グループウェブページ(http://bioxtal.spring8.or.jp)をご覧ください。トレーや専用ピンについては貸与可能ですが事前調整が必要となります(送料は申請者負担)。
(5)実験への立ち会いについて
測定代行は、立ち会いなしで回折実験を行えますが、試料を送付あるいは直接持ち込み、立ち会う事も可能です。立ち会いには2通りの方法がありますので、事前に担当者とご相談ください。
1)担当者と細かい打ち合わせを行いながら、測定代行実施中に常に立ち会う場合:立ち会い者は、来所の10日前までに『放射線業務従事者登録申請書(様式5-1)』の提出が必要です。
2)試料の持ち込み、測定の様子を見学されたい場合など、短時間の来所の場合:来所される人数とお名前を来所3日前までに測定代行担当者にご連絡ください。
4.申込方法
申込方法の詳細および各種様式は、以下のウェブサイトをご覧ください。
タンパク質結晶測定代行の実施について
http://www.spring8.or.jp/ja/users/proposals/call_for/protein_substitu
構造生物グループウェブページ
(1)申込受付と事前打ち合わせ
測定代行を希望される方は、JASRI利用研究促進部門・構造生物グループ担当者宛(mail-in@spring8.or.jp)に申込書をメール添付で送付していただき、相談の上、申請内容を決定いたします。
(2)課題登録(オンライン申請)
決定内容を担当者から申請者に対しタンパク測定代行実施内容等確認書として送付しますので、課題登録(オンライン申請)を行ってください。実施予定日14日前(土日祝を除く)の午前10:00までに、オンラインによる課題登録を完了してください。
(3)測定代行実施前に必要なオンライン提出書類
利用業務部から審査結果通知後、必要書類をUser Informationウェブサイトからオンライン提出する必要があります。
5.申請後の測定代行の流れ
(1)測定代行実施前の試料準備
試料は、SPACE専用トレーもしくはUnipuckトレーに収納し、測定代行実施日の前日まで必着にてご送付ください(送料は申請者負担)。試料の送付、持ち込みに関しては事前に担当者とご相談ください。
また、仮照射条件指定書に記入の上、電子メールもしくは郵送でお送りください。なお、初めてD-Chaを使用される方はD-Chaへのユーザー登録を行っていただきます。
(2)測定代行の実施
送付された試料を担当者がビームラインのロボットにセットし、実験の準備を行います。事前に入力した条件に沿ってトレーに収納された各試料について仮照射(X線回折像を数枚記録)を行い、試料の性状を確認します。申請者は記録された画像をWebデータベースD-Chaを利用し、リアルタイムにご確認いただけます。仮照射が終わった時点で、データセットを収集する本照射の条件をご決定いただき、本照射を行います。
(3)測定代行実施後の流れ
申請者に、測定データと実施報告書を送付します。測定データは、インターネットでのダウンロード、もしくは申請者から送付された電子媒体に収納し、お渡しします。なお、解析はサービスには含まれておりませんのでご注意ください。解析ソフトの紹介、解析方法の説明などのご相談は、「6.その他(1)タンパク質結晶測定代行の相談窓口」にて承ります。
申請者の方は、測定データと実施報告書の確認後、ビームタイム利用報告書を提出してください。
測定後の試料の返送方法については、凍結状態、室温での返却どちらにも対応いたします。立ち会いがなかった場合、JASRIスタッフが試料を申請者に返送します(送料は申請者負担)。試料および測定データを受領後、JASRIまで『試料等受領書(様式C)』をご返信ください。受領書の受け取りを確認した後、測定データは消去いたします。利用成果(測定データ)は申請者の所属機関に帰属します。申請者の所属機関に利用料金の請求書を送付しますので、利用料金をお支払いください。
6.その他
(1)タンパク質結晶測定代行の相談窓口(申込先)
タンパク質結晶測定代行のお申込、ご質問、試料の事前調整に関するお問い合わせ、試料送付はこちらになります。試料の受け取りは、平日のみとなります。
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
財団法人 高輝度光科学研究センター
利用研究促進部門構造生物グループ 馬場 清喜
TEL:0791-58-0833
e-mail:mail-in@spring8.or.jp
(2)オンライン課題登録/書類提出に関する問い合わせ先
ユーザー登録やオンライン課題登録/書類提出に関するご質問、同意書送付はこちらになります。
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
財団法人 高輝度光科学研究センター 利用業務部
TEL:0791-58-0961
e-mail:sp8jasri@spring8.or.jp
馬場 清喜 BABA Seiki
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒678-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0833 FAX:0791-58-0830
e-mail:baba@spring8.or.jp
熊坂 崇 KUMASAKA Takashi
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒678-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-0833 FAX:0791-58-0830
e-mail:kumasaka@spring8.or.jp