ページトップへ戻る

Volume 15, No.3 Pages 163 - 165

1. 最近の研究から/FROM LATEST RESEARCH

SPring-8での測定代行の現状 産業利用ビームラインでの測定代行について
Current Status of Measurement Service at Industrial Engineering Beamlines

廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro

(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 Industrial Application Division, JASRI

pdfDownload PDF (45 KB)

 

測定代行の経緯

 測定代行は(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室所属の職員がユーザーに代わってSPring-8を利用した測定を行う制度であり、放射光利用に熟練した専門家を確保することが困難な企業や研究組織等への利便性拡大と即時利用のニーズへの対応を目的としている。

 産業利用ビームラインにおける測定代行は2007B第2期(平成19年12月から平成20年2月)より、“試行”としてBL14B2でのXAFS測定を対象として開始され、2008B期より本格実施となった。試行期間中は測定実施日を指定し、実施日ごとに応募期間を設けて課題募集を行ったが、より柔軟で効率的な運用を目指して2008B期以降は実施日を指定することなく随時応募を受け付けている。更に、2009B第2期(平成22年1月から平成22年2月、募集開始は平成21年11月)からはBL19B2での粉末X線回折の測定代行も実施している。以下に本格実施となった測定代行の制度概要について記す。

 

 

現在の測定代行制度

 測定代行は「成果専有時期指定課題」の一形態として取り扱われるため、ビーム使用料および消耗品実費負担についても、当該成果専有時期指定課題に準じた金額となる。また、得られた成果を独占的に専有することができること、測定試料やデータ等の利用申請内容にかかわる事項は非開示であることなど、通常の成果専有課題と同様である。ただし、成果専有課題及び時期指定成果専有課題は1シフト8時間を単位とした利用であるのに対して、測定代行は2時間を単位として利用を受け付けている。このため現行のビーム使用料および消耗品実費負担相当額の定額分の最小単位はそれぞれ18万円および2,575円である。前記のとおり、測定代行の申し込みは随時受け付けている。

 測定用の試料調製は利用者が行うものとし、産業利用推進室職員は調整済みの試料を機器にセットしてユーザーから指定された条件の測定を行う。特に、粉末X線回折の測定代行(BL19B2)においては、ガラスキャピラリに封入された粉末試料のみを受け付けている。また、生物(動物、植物、微生物)試料や取り扱いに際し国または県の許可が必要な物質等は対象外としている。なお、現在のところXAFS測定代行(BL14B2)、粉末X線回折測定代行(BL19B2)ともに大気中室温環境下での測定のみを行っている。

 測定代行の申し込みはWebよりダウンロードした『測定代行申込書(様式A)』に必要事項を記入して、JASRI産業利用推進室(XAFS測定代行(BL14B2)はdaikou14@spring8.or.jp、粉末X線回折測定代行(BL19B2)はdaikou19@spring8.or.jp)宛にメール添付で送付することで行われる。申込受付後、産業利用推進室職員との測定条件や利用時間等の実施内容に関する事前打合せを経て、産業利用推進室から申請者に対し『測定代行実施内容等確認書(様式B)』が送付される。申請者は様式Bに従って通常の成果専用時期指定課題と同様にUser Informationウェブサイトから課題登録を行う。課題採択の後に利用申込書、試料および薬品等持込申請書)のオンライン提出も通常の成果専用時期指定課題と同様である。なお、測定代行の場合は上記のオンライン提出に加えてSPring-8測定代行同意書の提出もお願いしている。

 申請者より送付された試料の測定データは、電子媒体に収納し、実施報告書とともに利用者に送付される。利用者は測定データと実施報告書の確認後、ビームタイム利用報告書をUser Informationウェブサイトから提出して測定代行が完了する。なお、試料は測定後に申請者に返送されるので、申請者には試料受領後に『試料等受領書(様式C)』を返信していただいている。

 

 

測定代行のこれまでの実績

 XAFS測定代行では試行期間中の2007B、2008A期を含めて2009B期まで合計59課題が401時間(測定中に約1時間のビームアボートに見舞われた課題があったため、半端な時間となっている)で実施された。図1はXAFS測定代行の実施課題数と総利用シフト数の利用期ごとの推移を示したものである。この図が示すように、08B期の本格実施を境に課題数、シフト数ともに大幅に増加している。2010A期も6月下旬までの利用実績から20課題程度の実施が見込まれ、今後もこの水準で推移するものと予想している。なお、09A期の利用は極端に少なくなっているが、これは世界的な規模でおこった金融恐慌(いわゆるリーマンショック)の影響によるものと考えている。一方、BL19B2での粉末X線回折測定代行は2009B第2期(2010年1〜2月)に6件の課題が18時間で実施され、半期に10件前後の実施が見込まれる。なお、利用者の所属機関は民間企業が圧倒的に多いが、大学等の公的研究機関の研究者にも利用していただいている(2009B期はXAFS測定代行のうち28%が公的研究機関の利用)。また、新規利用者ばかりでなく放射光利用経験が豊富なユーザーによる利用も多い。

 図2はXAFS測定代行(BL14B2)が本格実施となった2008B期から2009B期までの課題、およびBL19B2の粉末回折測定代行の2009B期の1課題あたりの利用時間のヒストグラムである。この図が示すようにXAFS測定代行においては2時間から10時間の利用が全体の9割を占め、最頻値は6時間、平均6.75時間である。一方、粉末X線回折測定代行は2時間の利用が中心で、平均利用時間は3時間となっている。粉末X線回折測定代行に比較してXAFS測定代行の方が1課題あたりの利用時間が長いことの原因は、XAFS測定代行は透過法の測定ばかりでなく、転換全電子収量法や半導体検出器を用いた蛍光法など、調整や測定に比較的長い時間を要する測定手法も受け付けているためと考えている。

 

 

図1 XAFS測定代行 課題数と実施シフト

 

 

図2 測定代行 実施時間/課題

 

 

 XAFS測定代行および粉末X線回折測定代行ともに、申請者の立会を必ずしも必要としていない。これはSPring-8への来所やそれにかかわる諸手続き(放射線従事者登録や従事者教育など)を省略することでSPring-8を一層利用しやすくすることを意図したものであるが、図3に示すようにXAFS測定代行では半数以上の課題がユーザー立会のもとで実施されている。また、粉末X線回折測定代行においても2009Bに実施された6件の課題のうちユーザーが立ち会わなかった課題は1件のみである。このことは、“随時受付”という測定代行のフットワークの良さが高く評価されていることを示すものと解釈している。

 

 

図3 XAFS測定代行立会の割合

 

 

図4 XAFS測定代行 利用者アンケート(2009B)

 

 

 2009B期よりXAFS測定代行の利用者に対して行っているアンケート(図4)では、測定前の相談や測定については回答者全員からよい評価を頂いている。また、回答者の90%が測定代行の現行制度に満足と回答しているが、“手続きをもっと簡素に”、“申し込みから測定までの期間を短縮して欲しい”との要望も寄せられている。測定代行の場合は課題申請の前に職員と綿密な打ち合わせを行うため、利用者が“手続きの重複”と感じる可能性があることは認識している。しかし、課題申請前の打ち合わせは、良質なデータを確実に得るために必須な事項であるため、残念ながら手続きの簡素化に向けての妙案は得られていない。また、申し込みから測定までの期間短縮も、JASRIの留保枠内で行う測定代行はビームタイム確保の融通が利かない上に試料の安全審査にも一定の時間が必要であることから、劇的な短縮は困難である。その上、利用制度に加えて、試料雰囲気や試料温度等の制御や硬X線光電子分光、光電子顕微鏡といった現行のXAFS、粉末X線回折以外の技術にも測定代行を拡大することも要望されている。いずれの要望も直近の対応は難しいが、可能な事項から改善をすすめて測定代行が多くのユーザーにとって一層有用な制度になるよう今後も努力する所存である。

 

 

 

廣沢 一郎 HIROSAWA Ichiro

(財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室

〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1

TEL:0791-58-2804 FAX:0791-58-0988

e-mail : hirosawa@spring8.or.jp

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794