Volume 15, No.2 Pages 145 - 146
5. 告知板/ANNOUNCEMENTS
最近のSPring-8関係功績の受賞
SPring-8 Related Achievements
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※功績が認められ最近受賞されたSPring-8利用者等を掲載しています。
ゴットフリード・ワグネル賞2009 3等賞 主催:ドイツ商工会議所
受賞者 | 岩田 忠久 |
東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 高分子材料学研究室 准教授 (独)理化学研究所 高田構造科学研究室 客員研究員 前田バイオ工学研究室 客員研究員 |
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ビームライン | BL45XU、BL47XU |
研究業績 | 生分解性バイオポリエステルの高性能化 |
受賞理由 | 岩田忠久氏は、糖や植物油などの再生可能な資源から生分解性繊維を製造するという今までになかった技術を提案した。生分解性バイオポリエステルが最初に発見されたのは実に1925年にまで遡るが、機械的物性に問題(特に引張強度の低さ)があるため実用的な応用は極めて限られていた。 同氏は、1 GPaを超える引張強度を持つ世界最強の生分解性繊維の製造に成功した。この成功は、繊維の新規な紡糸法と延伸法の開発によってもたらされたものである。同氏は生分解性についても詳しく検討し、分解速度を制御する因子も見つけ出した。 すでに80年前から知られていながら、実用に至らなかったポリマーから実用的な生分解性材料が作り出されたことが示すように、この研究成果はきわめて高い独創性と創造性によってもたらされたものである。遺伝子組み換え大腸菌の使用と培地の改良が超高分子量ポリマーの合成を可能にし、革新的な紡糸プロセスを開発することによって極めて強度の高い繊維の製造法が実現された。 これらの生分解性バイオポリエステルは、その優れた強度と生分解性を利用して農業用多層フィルム、砂袋、漁網、屋外レジャー用品(ゴルフティー、釣り糸など)、食品包装フィルム、使い捨てカップ、コンポストバッグ、さらには細胞増殖用の足場や骨固定ボルトなどの医療用品に至る非常に幅広い製品への応用が期待されている。 |
第11回高エネルギー加速器科学研究奨励会西川賞 主催:(財)高エネルギー加速器科学研究奨励会
受賞者 | 冨澤 宏光 |
(財)高輝度光科学研究センター 加速器部門 副主幹研究員 | |
受賞テーマ | 高輝度フォトカソード電子銃のための高品質レーザー光学システム |
加速器 | 入射器(線型加速器) |
研究内容 | XFELやERLなどの次世代放射光源加速器やライナックベースの小型X線源などの高輝度電子源として有望なフォトカソード電子銃の研究開発を目的とする。フォトカソード電子銃では、レーザーをカソードに照射して電子生成を制御する。そのため、生成された電子ビームがこれらの将来計画で要請される性能を満たすには、レーザーの品質および制御性の向上が大前提となっている。特に、RF電子銃から低エミッタンスビームを生成するための、レーザーパルスの3次元形状最適化に関する研究をしている。また、マルチバンチや最終的にはCW運転までの高繰り返し運転の要求にフォトカソード電子銃が応える必要性から、ファイバーベースのレーザー光源のシステム設計やレーザー偏光制御による電子生成方法の基礎研究をしている。 |
受賞理由 | フォトカソードRF電子銃でレーザーパルスの3次元形状最適化を世界に先駆けて実現し、低エミッタンスビームを生成可能とする光源レーザーをシステムとして完成させたことから、フォトカソード電子銃全般におけるレーザー光源システムの研究開発、およびレーザーを応用した加速器要素技術の新規提案などの一連の業績を評価された。受賞理由として評価された具体的内容を以下に略記する。 カソード上で均一なレーザースポットを実現するために遺伝的アルゴリズムの援用による補償ミラーでの自動最適化技術を、矩形時間パルス形状を実現するためにパルススタッカーを、それぞれ世界に先駆けて独自に開発した。両技術を組み合わせることで、レーザーパルスの3次元形状最適化によるエミッタンスの低減の実証に成功した。このような整形システムには、レーザー光源が常に安定であることが求められることから、湿度を55%に保ったクリーンルーム(レーザー環境試験室)による光学系損傷の低頻度化、温調プレートによる光学アライメントの恒常化を実現し、アクティブなフィードバック制御を用いることなく長期安定化に成功した。この安定化技術でレーザーパルスが精密に調整可能となり、様々な実験要求に同時に応える自動最適化システムをメタヒューリスティックなアルゴリズムにより実現することに成功し、光源レーザー制御技術とその応用技術の発展に貢献した。 |
※ゴットフリード・ワグネル賞2009 3等賞を受賞の岩田忠久准教授の記事はSPring-8利用者情報Vol.15 No.3(2010年8月号)に掲載予定です。
※第11回高エネルギー加速器科学研究奨励会西川賞を受賞の冨澤宏光副主幹研究員の記事はFASだより第71号((財)高エネルギー加速器科学研究奨励会発行)に掲載されています。
※第60回金属組織写真賞 最優秀賞受賞の小嗣真人((財)高輝度光科学研究センター所属)研究員の記事はSPring-8利用者情報Vol.15 No.1(2010年2月号)に掲載されています。