Volume 19, No.4 Pages 346 - 348
5. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS
SPring-8利用制度等の変更について
The New Type of Proposals in SPring-8 Public Beamlines
2015A期より、SPring-8利用制度・運用が一部変更になります。具体的な課題申請方法等の詳細は、SPring-8ホームページの課題募集ページ(http://www.spring8.or.jp/ja/users/proposals/call_for/)をご覧ください。
1. 社会・文化のための利用課題[Social Interest Proposal]の新規設定
SPring-8においては、卓越した成果の見込まれる分野や、科学技術・産業振興施策に沿った分野を重点領域として設定していますが、これら重点領域の研究活動に加え、利用成果が広く国民に享受され、また、支持される研究活動を推進する観点も極めて重要です。そこで、SPring-8にて実施される利用研究課題のうち、国民の関心や、社会的要請が高い事項に係る研究を、2015A期より新重点領域として設定します。これにより、利用研究の新規性や社会的意義等が、必ずしも既存の利用分野等に係る利用研究と同列の評価が難しい利用研究を戦略的に推進します。
(1)社会・文化のための利用領域を設定(指定)し、当該領域で実施される課題を社会・文化利用課題とします。指定期間は、2015A期から2016B期までの2年間です(社会状況を鑑み、延長の可能性あり)。
(2)想定される支援テーマ例(社会的関心や要請が高いと思われるテーマ例)は以下の通りです。
●国民生活の安心・安全に関すること
<課題・キーワード>
環境保全・除染、防災、土木、科学捜査、食の安全(産地判別技術) など
●文化的・知的関心に対応すること
<課題・キーワード>
美術・芸術、文化財、考古学、古生物学(化石等)、宇宙科学 など
●国民の生活の向上に資する科学技術
<課題・キーワード>
食品科学(農・水・畜産物)、生活の科学 など
(3)対象ビームライン(BL)は、産業利用に特化したBL3本(BL14B2、BL19B2、BL46XU)を除く共用BL23本およびビームタイムの一部を共用に供している理研BL8本ならびに加速器診断BL05SSの計32本です。
(4)配分ビームタイムは、共用BL23本が供出する全ユーザータイムの4%に相当するビームタイムを配分上限とします(理研BL8本およびBL05SSは、以下の各BL上限のみ)。各BLの配分上限は、全ユーザータイムの8%(共用BL23本)、2%または1%(理研BL8本およびBL05SS)とします。
(5)重点課題における採択機会確保の観点から、他の領域指定型重点課題と同様、社会・文化利用課題として審査のうえ不採択となった場合は、自動的に一般課題で再度審査を行います。
2. 生命科学/蛋白質結晶構造解析分野の運用変更
放射光を活用した蛋白質結晶構造解析分野は競争の激しい分野であるため研究の迅速性が重要であり、結晶が得られたのちに直ちに測定を行うことが要求されています。一方で、約半年前にビームタイム(配分シフト数および利用時期)を決定する現行のSPring-8共用BL利用制度は、当該分野における研究の実情と要求に合致していません。海外の放射光施設では、ビームタイム申請が随時可能で、申請後2週間から2ヶ月程度で測定ができる態勢が組まれているところが大半であり、従来から、SPring-8共用BLにおいてもタイムリーな測定を望む利用者が多くあります。そこで、SPring-8の共用蛋白質結晶構造解析BLに、より柔軟性の高い利用制度を2015A期より導入します。
(1)SPring-8利用研究課題審査委員会(PRC)では申請課題の優先順位のみを決定し、シフト配分数は決定しません。
(2)課題の有効期間は1年とします。なお、測定対象蛋白質を特定しないような包括的申請は認めません。
(3)対象BLは、アンジュレータBLが2本(共用BL41XU構造生物学I、理研BL32XUターゲットタンパク)および偏向電磁石BLが3本(共用BL38B1構造生物学III、理研BL26B1構造ゲノムI、理研BL26B2構造ゲノムII)です。
(4)ビームタイム配分(シフト数および日時)は、年4回(おおよそ3月、5月、9月、12月)、実験責任者に希望を聴き、課題の優先順位に基づいて決定します。
(5)課題申請時のBL指定は不可とし、ビームタイム希望時には、BLに希望順位をつけられることとします。
(6)ビームタイム割り付けは、アンジュレータBLにおいては0.5シフト単位、偏向電磁石BLにおいては1シフト単位とします。
項目 | 現行(~2014B期) | 変更後(2015A期~) |
採択課題の 有効期間 |
半年(期内) | 1年間 |
配分シフト数 および利用日 |
いずれも期開始前に確定 (配分シフト数はPRCが、利用日はBL担当者が決定) |
年4回調査のうえ確定 (いずれも新たに設置するビームタイム配分委員会が決定) |
申請時BL指定 | 優先順位付きであり | なし (挿入光源BLは上記調査時に希望を聴取) |
採否 | 採択/不採択の2者択一 | 実施の優先順位あり/不採択の2者択一 (優先下位課題の配分シフトは必ずしも保証されない) |
生命科学L1 分科会留保 |
一部BLであり | なし |
シフト配分単位 | ○下記以外:3シフト ○測定代行:0.25シフト ○成果専有時期指定(BL38B1、BL41XUのみ):0.25シフト |
○下記以外ID:0.5シフト ○ 同 BM:1シフト ○測定代行: 同左 ○成果専有時期指定:同左 |
共用BLにおける留保枠設定(当該枠での緊急、成果専有時期指定、測定代行(現状、BL38B1のみ)、インハウス課題の実施)、課題審査基準、審査体制、論文等成果公開義務および期限は変更なし。
3. 一般課題(産業利用分野)への課題申請要件の変更
産業利用に特化したSPring-8の共用BL(BL14B2、BL19B2、BL46XU)を中心に実施した重点産業利用課題(2007~2011年度)においては、それ以前に実施した戦略活用プログラムにおいて拡大した産業界ユーザーの定着と産学官連携促進を目的としたため、産業界だけでなく大学等の公的研究機関に所属する者が実験責任者として課題申請することを認めていました。
2013年には、産業界所属実験責任者による成果を専有した実施課題数が、非専有課題を含む全実施課題数の63%を占めるまでになりました。このように産業界の定着ユーザーの利用形態が成果専有課題に重点が移りつつある一方、成果非専有の一般課題(産業利用分野)を利用する産業界ユーザーの割合が漸減、大学等の公的研究機関による利用が次第に増加し、研究グループに産業界ユーザーを含まない課題が増えてきました。
産業利用分野の課題は、産業基盤技術の発展と社会経済への寄与が期待できる課題です。これら発展と寄与は、いずれも産業界の活動により実現されるものであることから、産業界ユーザーを含まない研究グループによる課題の増加は適切とは言えません。そこで、2015A期より、“研究グループに産業界およびそれに準ずる機関に所属する者を有すること”を、成果非専有の一般課題(産業利用分野)への申請要件に加えることとします。
(1)研究グループの要件を、実験責任者、もしくは共同実験者に
① 民間企業
② 産業界に準ずる機関である公設試験場および民間企業からの委託試験・研究を主な事業とする財団/社団法人
に所属する者を含むこととします。
要件に満たない例は、大学(私立大学含む)、独立行政法人、特殊法人、公社に所属する者(単独またはこれら所属者の組み合わせ)の研究グループのみの場合等です。
(2)領域指定型重点研究課題「産業新分野支援課題」(2014A期~)は、今後新たな産業化が見込まれる分野(現状、“産業化”していない分野)等を対象としていることから、産業界所属者の参画を必須とする本申請要件は課しません。従って、当該課題において「不採択の場合に自動的に一般課題(産業利用分野)として審査」ができない課題も発生し得ることになります。
<注>以上のうち、対象BL、ビームタイム配分割合、ビームタイム配分回数は、2015A期公募時のものであり、その他の事項を含め今後変更する可能性があります。
公益財団法人
高輝度光科学研究センター 利用推進部
TEL:0791-58-0961
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