Volume 15, No.2 Page 53
理事長室から - The Best and Brightest –
Message from President - The Best and Brightest –
4月12日から14日にかけて、SPring-8のサイトで二年ぶりとなるAPS-ESRF-SPring-8三極会合が開催され、第三世代の三大大型放射光施設からおよそ180名の参加者があり(今回、特別に招待されたDESYのPETRAIIIからの参加者を含む)、各施設の現状や将来計画などについて活発な議論が行われました。その詳細は、本誌「SPring-8利用者情報」でも紹介があると思いますので割愛しますが、各極がお互いにもっとも関心を示したのは、成熟期を迎えようとしている各施設の、リニューアル、アップグレード等の将来計画でした。ご承知のように、現在世界中で中規模ではあるが最新の技術を取り入れて、先行の大型施設に引けをとらない性能を発揮しつつある放射光施設の建設が盛んに行われています。これ自体は放射光の有用性が世界に広く認識されてきた証で、歓迎すべきことでありますが、他方で放射光の世界も一段と激しい競争の時代に入りつつあり、うかうかしていると日本も経済などと同様に世界のトップランナーから滑り落ちてしまう恐れなしとしません。
このような中で、SPring-8でも10年後を見据えた大改修計画の検討が進められており、昨年6月にはその検討状況を利用研究者の方々と共有するための第一回シンポジウムが開催されました。また、SPring-8のサイトでは今年度中にはXFELが完成し、光科学の全く新しいページが開かれようとしています。これらは、SPring-8のサイトを世界の光科学の中で、文字通りThe Best and Brightestに保ち続けたいという施設者側の努力の現われです。今後ともJASRIは理化学研究所とともに、SPring-8の高度化を強力に推し進めて参ります。
他方で、施設者側のこの努力は、ひとえにSPring-8で展開される利用研究もThe Best and Brightestであって欲しい、と願ってのことであります。もちろん、いきなり全てのユーザーがそうであることは望めませんし、まずは放射光科学の裾野を広げ、新しいユーザーを開拓し、その中から世界最高性能の放射光を最大限に活かした利用成果が出て来ることを期待する訳ですが、少なくとも利用研究は常にそれを目指すものであって欲しいと願っています。
この点で、今回の三極会合に出席しての感想は、残念ながらSPring-8の利用成果はESRFやAPSのそれに比して今一歩と言わざるを得ない感がありました。特に、材料評価などにSPring-8を活発に利活用して成果を挙げつつある産業利用に比べて、学術面での利用成果が他の施設に比べて必ずしも十分とはいえない印象を受けました。昨年の事業仕分けでも、国民の税金によって支えられているSPring-8はこれまで以上に目に見える形での成果を挙げることが求められた訳ですが、そのためには利用研究の8割を占める学術利用面で世界が刮目してみる成果を出し続ける必要があります。JASRIでは選定委員会の先生方の御意見も伺いながら、そのためにどのような方策があり得るか、真剣に検討を始めています。利用研究者の方々、とりわけ学術利用のユーザーの方々に、The Best and Brightestを目指して今一層の奮起をお願いしたいと思います。