Volume 19, No.3 Page 258
4. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS
2011A期 採択長期利用課題の事後評価について – 1 –
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2011A -1-
2011A期に採択された長期利用課題について、2013B期に3年間の実施期間が終了したことを受け、第48回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(平成26年3月)において、事後評価が行われました。
事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌225ページの「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。
なお、2011A期に採択された長期利用課題3課題のうち残り2課題については、平成26年7月に事後評価を実施し、評価結果は「SPring-8利用者情報」Vol.19 No.4(2014年11月号)に掲載する予定です。
課題名 | X線マイクロトモグラフィ法によるヒト脳神経回路の解析 |
実験責任者(所属) | 水谷隆太(東海大学) |
採択時課題番号 | 2011A0034 |
ビームライン | BL20XU、BL47XU(BL併用) |
利用期間/配分総シフト | 2011A~2013B/120シフト (BL20XU:81シフト、BL47XU:39シフト) |
〔評価結果〕
本課題は精神疾患を念頭に置いてヒト脳神経回路の解析を目指す医学的研究である。撮影手法はX線マイクロトモグラフィーであり、BL47XUにおいてはSPring-8のX線顕微鏡技術を用いて、ヒト脳組織としては世界最高の分解能(200 nm)が得られている。神経回路の可視化には重元素による染色が必要であり、染色法に独自の工夫が見られる。ヒト検体の研究においては、倫理審査で認められた条件に従って行う必要があるが、そのような審査を経て健常例と疾患例の剖検脳検体複数例に本法を適用し、組織構造の三次元比較を行ったことは評価できる。この点において、本課題の目標であった「X線マイクロトモグラフィーによるヒト脳組織の健常例・疾患例での比較」は達成されている。研究成果においては、一部の構造について興味深い観察結果が得られている一方で、細部の描出が不十分であり、全容を解明したとは言えない。今後はさらに詳細な定量的解析を行い、神経ネットワークについて健常例・疾患例の比較を十分に行い、精神医学的に有意義な結論が導き出されることを期待する。
〔成果リスト〕
(査読有論文)
[1]SPring-8 publication ID = 25158
R. Mizutani, R. Saiga, A. Takeuchi, K. Uesugi and Y. Suzuki: “Three-Dimensional Network of Drosophila Brain Hemisphere” Journal of Structural Biology 184 (2013) 271-279.
[2]SPring-8 publication ID = 24023
R. Mizutani, K. Taguchi, M. Ohtsuka, M. Kimura, A. Takeuchi, K. Uesugi and Y. Suzuki: “X-ray Microtomographic Visualization of Escherichia coli by Metalloprotein Overexpression” Journal Synchrotron Radiation 20 (2013) 581-586.