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Volume 19, No.2 Pages 113 - 117

4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SPring-8コンファレンス2014 ~最先端光サイエンスの世界~
The SPring-8 Conference 2014

藤原 明比古 FUJIWARA Akihiko

(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門(SPring-8コンファレンス2014実行委員長) Research & Utilization Division, JASRI

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1. はじめに
 SPring-8登録施設利用促進機関である高輝度光科学研究センター(JASRI)は、2014年3月7日、グランフロント大阪ナレッジシアターにおいて、『SPring-8コンファレンス2014 ~最先端光サイエンスの世界~』を開催した。
 SPring-8では、施設の現状報告や学術界の利用成果報告を目的としたSPring-8シンポジウム(1997年から)、産業界ユーザーの交流を目指したSPring-8産業利用報告会(2004年から)を開催してきた。2009年から2011年までは、学術と産業分野との交流による相乗効果を目指し、これら二つの会を合同で開催することで利用研究の活性化を図った。その後、学術界・産業界の利用者全員で組織するSPring-8ユーザー協同体(SPring-8 Users Community:SPRUC)の創設に伴い、2012年からは、SPRUC、JASRI、(独)理化学研究所(理研)と会議開催地のSPRUC代表機関の共同主催により、ユーザーの科学技術的交流の場として、SPring-8シンポジウムを開催している。
 これらSPring-8に関連した会議の趣旨、開催状況や国によるSPring-8の評価などを鑑み、SPring-8登録施設利用促進機関であるJASRIは、先端放射光利用研究の拡大・進化、新たな利用研究開拓の場として、装いを新たにしたSPring-8コンファレンス2014を開催することとした。コンファレンスの目的を達成するために、産官学で進めているSPring-8利用研究成果の講演に加え、施設の状況、成果創出を支える先端技術や利用システムを紹介するアドレス講演とポスター掲示を設定した。また、個別の利用相談に応じる利用相談窓口を設置した。
 今回のコンファレンスは、JASRIの主催、理研、SPRUC、SPring-8利用推進協議会の共催、(公社)応用物理学会、(国)大阪大学核物理研究センター、(国)大阪大学蛋白質研究所、(公社)化学工学会、(国)京都大学産官学連携本部、(一社)軽金属学会、(一財)高度情報科学技術研究機構、(公社)高分子学会、(財)國家同歩輻射研究中心、産業用専用ビームライン建設利用共同体、(一社)触媒学会、(公社)石油学会、(一社)セメント協会、(一財)総合科学研究機構、(公社)電気化学会、(国)電気通信大学、(国)東京大学放射光連携研究機構、(株)豊田中央研究所、(公社)日本化学会、(公社)日本金属学会、日本結晶学会、日本結晶成長学会、日本原子力学会、(独)日本原子力研究開発機構、(公社)日本顕微鏡学会、日本鉱物科学会、(公社)日本材料学会、(一社)日本生物物理学会、(公社)日本セラミックス協会、日本ゾル-ゲル学会、日本蛋白質科学会、日本中性子科学会、(一社)日本鉄鋼協会、(公社)日本表面科学会、(一社)日本物理学会、(公社)日本分析化学会、(一社)日本分析機器工業会、日本放射光学会、(公社)日本薬学会、光ビームプラットフォーム、(独)物質・材料研究機構、フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体、粉体工学会、(一社)粉体粉末冶金協会の協賛、文部科学省、兵庫県の後援のもとで開催した。


2. オープニング
 SPring-8コンファレンス2014の主催者を代表して、JASRIの土肥義治理事長から挨拶があり、コンファレンスが開会した。土肥理事長は、先端放射光利用研究の拡大・進化、新たな利用研究開拓の場として設定したコンファレンスに相応しく、所属やSPring-8利用経験度が多様な参加者が集ったことを報告した。また、SPring-8からの成果創出に関しては、学術における論文の質・量と産業界の利活用とが、共に、定量的に高く評価できる現状を報告した。今後、産業界・学術界の連携を通した課題解決へ向け、さらなる利活用への期待が述べられた。
 施設者の理研を代表して放射光科学総合研究センターの石川哲也センター長から挨拶があり、放射光科学が大きく貢献した近代結晶学が創成から100周年となり、2014年が世界結晶年(IYCr2014)であること、理研のIYCr2014支援に賛同し、本コンファレンスがIYCr2014の行事の一環として位置づけられていることが紹介された。また、リング型先端放射光光源SPring-8とX線自由電子レーザーSACLAを擁し、世界の高エネルギー光科学を牽引する施設として、2030年代においても世界のトップランナーであり続けるためには、複数の先端光源のシナジー効果と、基礎と応用の垣根を取り去った学術界と産業界の連携の必要性が示された。
 文部科学省の科学技術・学術政策局から来賓として出席いただいた伊藤宗太郎次長(写真1)より、供用開始以来の産官学による利活用と継続的な高度化によって世界第一線級の成果を創出するSPring-8に対して、国としても支援しており、高い評価をしていることが伝えられた。また、昨年の国の評価に基づき、SPRUCとより一層の連携による高度化を推進し、大学の基盤と社会・産業を結びつける技術交流の場となることが期待されていると述べられた。特に、整備された基盤の利用、新しい活用への展開から、利用者の要望を受けた高度化という循環による継続的な発展が期待されているとの激励をいただいた。最後に、本コンファレンスが、まさに利用者と施設の意見交換の場として重要な位置づけである点をご評価いただいた。

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写真1 文部科学省 科学技術・学術政策局 伊藤宗太郎 次長の挨拶


3. 産官学の利活用による成果の講演
 セッション1、2、5では、産官学から講師をお招きし、分野開拓的な研究から産業界でのデバイス開発に向けた放射光活用例まで、幅広い利用分野の成果が紹介された(写真2)。また、各セッションでは、JASRIスタッフが、成果創出の基盤となった先端計測技術とその高度化の最新動向を紹介し、今後の利活用に向けた情報提供が行われた。
 セッション1では、JASRI光源・光学系部門の後藤俊治部門長より、SPring-8におけるナノメーター領域の集光、コヒーレンス特性、純度の高い偏光特性を担保する光源の安定性、低発散性などの技術基盤の紹介があり、それら光源特性を用いた講演の紹介がなされた。大阪大学の高橋幸生准教授は、非周期的な材料組織をナノメーター領域の分解能で可視化するコヒーレントX線回折イメージング(CXDI)の成果を紹介した。講演では、SPring-8の成果のみならず、SACLAでの最新の成果も紹介され、現状でのCXDIの限界とそれを超えた将来展望が示された。理研の大隅寛幸専任研究員は、円偏光ナノビーム光源を用いたカイラル結晶のドメイン構造の3次元可視化技術を紹介し、次世代スピントロニクス材料としても期待される材料への応用研究例が示された。
 セッション2では、JASRI制御・情報部門の田中良太郎部門長より、SPring-8の制御・情報プラットホームの開発状況と遠隔実験などの利用方法の多様化の取り組みに関する紹介があった。また、制御系基盤を活用した時分割実験や高速計測の講演の紹介がなされた。広島大学の森吉千佳子准教授は、放射光パルス光源と試料への電場印加、計測タイミングを精密制御することで明らかにした誘電体の電場応答ダイナミクスの研究成果を紹介した。JASRIの岩本裕之主幹研究員は、高速で羽ばたくハチの運動のメカニズムを高速計測によって初めて明らかにした成果を紹介した。
 セッション5では、JASRIの土肥理事長より、学術による知の創出・産学連携によるイノベーションの芽の育成・産業界のイノベーションを通した社会貢献において、課題解決の場としてのSPring-8の重要性が紹介された。日産アークの今井英人部長は、蓄電池の開発において、SPring-8の様々な計測手法を応用することで、これまで均一と考えられていた電極表面の被膜が充放電過程で変化することを明らかにした開発事例を紹介した。三菱化学の小島優子主任研究員は、有機太陽電池のバルクヘテロ構造とそのプロセス過程での変化を微小入射角X線回折、微小入角小角X線散乱とその時分割測定により明らかにした開発事例を紹介した。

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写真2 講演会場


4. 萌芽的研究アワード授賞式・受賞講演
 セッション3、4では、大学院生が実験責任者として課題を推進する「萌芽的研究支援課題」の中から、自主性と独創性において特に優れた課題に授与される萌芽的研究アワードの授賞式(写真3)と受賞講演が行われた。冒頭、SPring-8萌芽的研究アワード審査委員長であるJASRI利用研究促進部門の高田昌樹部門長より、課題の概要と課題を通した人材育成の取り組みが紹介された。また、SPring-8萌芽的研究アワード審査委員である特殊無機材料研究所の鈴木謙爾代表理事より、挑戦的で主体性を重視した審査基準と形式的な研究にとどまらない若手研究者育成の場の重要性が示された。
 第5回アワード受賞者の池田暁彦氏は、物質表面に物理吸着したKrからの微弱なメスバウアースペクトル検出による表面電場計測技術への挑戦について紹介した。同じく第5回アワード受賞者の松井公佑氏は、光電子回折分光法により、構造のみならず触媒特性をも明らかにする計測手法の開発について紹介した。第6回アワード受賞者の江原祥隆氏は、圧電材料の高速X線回折実験による格子変形と弾性変形の同時観測の成果について紹介した。

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写真3 萌芽的研究アワード授賞式


5. ランチタイムポスターセッション
 セッション1とセッション2の間の昼休憩時間を利用して、萌芽的研究支援ワークショップで発表した全ての成果とSPring-8の概要、利用システム、先端計測を支える基盤技術の開発動向、利活用成果事例を紹介するポスターセッションが開催された(写真4)。併設の利用相談窓口では、個別の利用相談に応じた(写真5)。

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写真4 ポスター会場

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写真5 個別利用相談


6. 総括
 総括のセッションでは、本コンファレンスの開催趣旨である先端放射光利用研究の拡大・進化、新たな利用研究開拓の効果最大化のために、JASRI利用業務部の牧田知子部長が、利用制度や利用動向を紹介した。最後に、JASRI熊谷教孝専務が、本コンファレンスで議論された内容を総括するとともに、参加者から出された質問項目について技術開発動向を整理して説明した。最後に、より一層の利活用成果の創出へむけたJASRIの取り組み姿勢を示し、閉会とした。


7. おわりに
 SPring-8登録施設利用促進機関であるJASRIのミッションである利用研究成果の最大化に向け、先端放射光利用研究の拡大・進化、新たな利用研究開拓の場として、装いを新たにした『SPring-8コンファレンス2014 ~最先端光サイエンスの世界~』は、175名の参加者によって盛況のうちに閉幕した。今回、より多くの利用者に先端計測基盤を有効に活用していただくことを目的とし、施設側からの技術開発動向の紹介とそれを活用した研究成果の講演を組み合わせたプログラムを企画した。本企画が、今後の利活用の深化と成果の創出につながることを期待する。
 最後に、新しい歩みを始めたSPring-8コンファレンスは、施設内外の多くの方々の有形無形のご支援によって成功裏に終わりましたことをご報告し、講演者、参加者、関係者の皆様方に感謝の意を表します。


SPring-8コンファレンス2014 プログラム

開会
司会:高田 昌樹
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 部門長
10:00-10:20 開会挨拶
土肥 義治
(公財)高輝度光科学研究センター 理事長
挨  拶
石川 哲也
(独)理化学研究所 放射光科学総合研究センター センター長
来賓挨拶
伊藤 宗太郎
文部科学省 科学技術・学術政策局 次長
10:20-10:50 オープニングアドレス「SPring-8の概要」
熊谷 教孝
(公財)高輝度光科学研究センター 専務理事
セッション1 SPring-8ビームで観る世界
司会:後藤 俊治
(公財)高輝度光科学研究センター 光源・光学系部門 部門長
10:50-11:00 セッションアドレス「SPring-8が創る光と計測」
後藤 俊治
(公財)高輝度光科学研究センター
11:00-11:40 講演「コヒーレントX線によるナノイメージング」
高橋 幸生
大阪大学
11:40-12:20 講演「物質の右手左手を見分けるイメージング~機能構造の走査型顕微観察~」
大隅 寛幸
(独)理化学研究所
ランチタイムポスターセッション
12:20-13:20 ポスター:施設紹介、利用案内、萌芽的研究支援課題成果
セッション2 瞬間を捉える放射光計測
司会:田中 良太郎
(公財)高輝度光科学研究センター 制御・情報部門 部門長
13:20-13:30 セッションアドレス「SPring-8の高速制御・計測」
田中 良太郎
(公財)高輝度光科学研究センター
13:30-14:10 講演「パルス放射光活用による格子ダイナミクスの可視化」(パワーユーザー課題成果)
森吉 千佳子
広島大学
14:10-14:50 講演「ハチの羽ばたきをとらえて筋肉の働きを知る」
岩本 裕之
(公財)高輝度光科学研究センター
セッション3 大学院研究者による挑戦的研究:萌芽的研究アワード授賞式
コンダクター:高田 昌樹
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 部門長
14:50-15:10 SPring-8萌芽的研究アワード審査委員長による概要説明
高田 昌樹
(公財)高輝度光科学研究センター
SPring-8萌芽的研究アワード審査委員会による講評
鈴木 謙爾
特殊無機材料研究所 代表理事
セッション4 原子レベルで起こる機能の可視化~大学院研究者による挑戦的研究~
司会:高田 昌樹
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 部門長
15:10-15:25 講演「放射光核共鳴散乱法による表面吸着系測定への挑戦」(萌芽的研究支援課題成果)
池田 暁彦
東京大学
15:25-15:40 講演「光電子回折分光法による新規触媒解析手法の開発~水素化脱硫触媒Ni2P表面を舞台とした種々の構造形態と触媒特性~」(萌芽的研究支援課題成果)
松井 公佑
奈良先端科学技術大学院大学
15:40-15:55 講演「NEMS用圧電体膜のナノドメインスイッチングのナノ秒での高速応答の測定」(萌芽的研究支援課題成果)
江原 祥隆
東京工業大学
(15:55-16:10 休憩)
セッション5 放射光活用による産学連携イノベーション
司会:廣沢 一郎
(公財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 室長
16:10-16:20 セッションアドレス「SPring-8を基点にした産学連携の展望」
土肥 義治
(公財)高輝度光科学研究センター
16:20-16:50 講演「先端燃料電池・蓄電池開発に向けた放射光マルチ評価」
今井 英人
日産アーク
16:50-17:20 講演「放射光を用いた有機薄膜太陽電池の構造評価」
小島 優子
三菱化学
総括
司会・モデレーター:熊谷 教孝
(公財)高輝度光科学研究センター 専務理事
17:20-17:40 利用制度案内
牧田 知子
(公財)高輝度光科学研究センター
17:40-18:00 自由討論・閉会
熊谷 教孝
(公財)高輝度光科学研究センター
併設
利用相談窓口(10:30-18:00)

 

 

 

藤原 明比古 FUJIWARA Akihiko
(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-2750
e-mail : fujiwara@spring8.or.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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