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Volume 14, No.3 Pages 197 - 198

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

ユーザー向け個人線量計が新しくなりました
New Type of Personal Dosimeter

(財)高輝度光科学研究センター 安全管理室 Safety Office, JASRI

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OSL線量計への移行

 今年度6月からSPring-8では、ユーザーの方々の被ばく管理に使用する個人線量計を、従来の蛍光ガラス線量計から新たにOSL 線量計(Optically Stimulated Luminescence Dosimeter:光刺激ルミネセンスを利用した線量計)へ移行しましたのでお知らせします。

 

 

OSL線量計の取扱い

 放射線業務従事者は、放射線管理区域(以下「管理区域」)での被ばく管理のため、個人線量計を着用することが義務付けられています。管理区域に立ち入る際は、個人線量計を適切な部位に装着しておいてください。OSL線量計(個人線量計)の装着部位は、SPring-8管理区域の場合、体幹部均等被ばくとしますので、男子は胸部、女子は腹部に、各々、OSL線量計が正面を向くように着用してください。また、OSL線量計が作業中、容易に脱落することのないようにクリップなどで固定してください(写真1)。なお、OSL線量計は、SPring-8サイト外へは持ち出さないでください。(SPring-8で使用するOSL線量計には、円形の管理区域入退域用ICタグが一体として取り付けられています。)

 

 

写真1 OSL線量計着用(男・女)

 

 

OSL線量計の原理

 ある種の物質に放射線を照射すると、蛍光(Radio Luminescence)と呼ばれる光を発しますが、放射線の照射を停止すると、短時間のうちに蛍光量は徐々に減少します。この状態の物質に蛍光より波長の長い光を照射すると、再び強い蛍光を発することがあります。

 OSL線量計は、この光刺激ルミネセンスによる蛍光を利用した線量計で、蛍光体である放射線検出素材に炭素添加α酸化アルミニウム(α-Al2O3:C)を用いています。放射線を受けた酸化アルミニウムが、放射線に比例した情報を蓄え、強いLED光で刺激されると、受けた放射線量に比例した量の蛍光を発する現象を利用します。放射線測定の際は、この蛍光の量を高感度の光電子増倍管で増幅し、線量計が受けた被ばく線量を算出します。

 

 

OSL線量計の特徴

測定線量範囲が広い

 X・γ線:0.01 mSv〜10 Sv

同一素子の線量を繰り返し読み取り可能

 刺激光源の光量を制御することにより、検出素子(OSL素子)内部の捕獲電子の一部のみが測定に使用されるため、同一素子の線量を複数回繰り返して読み取ることが可能です。

線量計の初期化や測定に加熱処理が不要

 多くの固体線量計(熱蛍光線量計(TLD)や蛍光ガラス線量計)は、線量計の初期化や測定の過程で高温処理を行います。検出素子が高い温度に曝されると、どのような物質も熱劣化による経年変化があります。OSL線量計は、OSL素子の初期化や線量の読み取りに加熱処理が不要です。

非常に軽量(約20 g)

 OSL線量計は、加熱処理を伴わない測定のための過程が簡素化され、非常に薄いOSL素子が利用可能となりました。

励起光源にLED(発光ダイオード)を使用

 OSL線量計の初期化には青色LEDを用い、線量の読み取りには読み取り装置内部の緑色LEDを発光させるため、OSL素子への影響が少ないため劣化せずに長期間安定した性能を維持します。

衝撃に強い

温度や湿度の影響をほとんど受けない

フェーディングがほとんどない

 OSL線量計の検出素材(蛍光体)である炭素添加α酸化アルミニウム(α-Al2O3:C)は、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持っており、TLDや蛍光ガラス線量計に比べ衝撃に対して強く、また物理的化学的にも安定した物質であるため、熱によるフェーディングが小さく、長期間に亘って安定している等の特徴があります。

 

フィルタ 厚さ
オープンウインドウ(OW:フィルタなし)
プラスチック(Pl) 0.7 mm
アルミニウム(Al) 0.7 mm
銅(Cu) 0.4 mm

 

 

OSL線量計の構成

 今回のOSL素子を利用したOSL線量計は、X・γ線、β線測定用の個人線量計です。直径7 mmの酸化アルミニウム粉末を塗布したOSL素子をはめ込んだスライドと、放射線の種類とエネルギーを判別するための以下の4種類のフィルタを内蔵したケースで構成されています(写真2)。通常、OSL素子は遮光されたケースに収められ、スライドとケースには各々、固有のシリアル番号を所有し、放射線測定の際に測定装置に読み込まれます。また、個人がOSL線量計を着用しやすいように、クリップなどを取り付けた専用ホルダーに収納して使用します(写真3)。

 

写真2 OSL線量計

 

 

 

写真3 OSL線量計にICタグを取り付けた状態

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794