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Volume 14, No.2 Pages 107 - 108

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

利用研究課題選定委員会を終えて、分科会主査報告5 −産業利用分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – Industrial Application –

松井 純爾 MATSUI Junj

(財)ひょうご科学技術協会 Hyogo Science and Technology Association

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 利用研究課題選定委員会産業利用分科会での審査は、「産業技術基盤としての重要性」と「社会経済への貢献」に主眼を置く基準が優先していますが、今期もこの方針に沿って審査がなされました。この2年間の産業利用分科会審査委員は、主査:松井純爾、委員:鈴木謙爾(東北大学名誉教授)、金谷利治(京都大学教授)、梅咲則正(JASRI産業利用コーディネータ)、二宮利男(JASRI産業利用コーディネータ)の諸氏5名が選定作業に当たりました。ここに各位のご努力に謝意を表します。

 

 SPring-8が積極的に展開する放射光の産業利用運用は、まず平成13年度に利用研究課題選定委員会の中に産業利用分科会が設置され、続けて「トライアルユース」が2001B期よりスタートし、さらにこれが2003B期より「重点領域」に指定されたことなどにより、その基礎固めができました。

 

 加えて、平成17〜18年度分科会の時に文部科学省が始めた先端大型研究施設戦略活用プログラム(2005B期にスタートし2007A期に終了)に則った課題募集を「重点領域指定型」とした結果、産業界からの放射光利用課題の採択率が飛躍的に向上しました。しかしながら、「産業利用分科会の審査を四半期ごととする」ことについては要検討課題として本平成19〜20年度分科会に引き継がれました。

 

 「重点領域指定型」については、平成19年1月26日をもってSPring-8における産業利用関係の課題を対象に「重点産業利用領域」に指定することで、産業界からのさらなる放射光利用を推進することができるようになりました。この指定期間は当初は平成20年度いっぱいということでしたが、現在はさらに平成23年度末までの延長が承認されています。この制度を運用するビームラインはBL14B2、BL19B2、BL46XUの3本ですが、これらのビームラインに限定して申請される重点産業利用課題に対して2007B期から利用期を2期に分けて課題募集を行いました。

 

 上記の四半期ごとの課題募集に加えて、産業利用に特化した上記3本のビームラインにおいて「1年課題」を導入しました。1年課題に採択された課題については、年4回の課題審査時には優先的にマシンタイム配分を行うことから、極めて重要かつまとまったマイシンタイムを要する産業利用課題をじっくり推進できることになりますが、採択課題数は現在のところ数件に留まっています。表1に、当産業利用分科会が扱う「一般課題」と「重点産業利用課題」の応募課題数、採用課題数および採択率の推移をまとめます。

 

 

表1 産業利用課題の申請と採択

利用期 重点産業利用課題 一般課題(分科会扱い)
応募 採択 採択率(%) 応募 採択 採択率(%)
2007B期 76 54 71.1 42 26 61.9
54 47 87.0
2008A期 97 80 82.5 32 26 81.3
57 43 75.4
2008B期 112 65 58.0 39 19 48.7
88 30 34.1
2009A期 109 79 72.5 33 23 69.7
33 28 84.8

 

 また平成19〜20年度分科会からの特徴ある運用として、「利用報告書等の公開日延期」があります。通常は、実験終了から60日以内に利用報告書を JASRIに提出することが義務付けられていますが、産業界ではこれを厳密に適用しようとすると、報告書の中にさまざまなノウハウを記述することを余儀なくされるために、せっかく良い結果が得られてもそれに対する知財権を確立する時間が確保できないことになります。知財確保の手段には、「成果専有課題」として有償のマシンタイムを取得すればよいのですが、知財確保さえ終了すれば公開できる課題に対してまでも常に費用を要することは、結果の必ずしも見えない研究課題であればあるほど企業として対処しにくい状況となりかねません。そういう企業の「対費用効果」重視の実態を最大限に反映できるものとして、成果非専有課題ではありますが、分野の特殊性から、提出された報告書の公開を延期できる制度(報告書提出時に所定の手続きを行い認められると公開が延期される)が採用されました。これによって、産業界からの課題申請はますます促進されるものと期待されています。

 

 以上の種々の施策を実行することで、今日の産業界からの課題採択率が全体の20%近くになる勢いで、その実態はいまや世界の放射光施設からは羨望視されており、それに対する調査が行われていることも聞きます。今日のそのような繁栄に至った影には、監督官庁の財政的支援もさることながら、上に述べた JASRIとりわけ産業利用推進室のスタッフの皆さんの日頃の努力を無視できないものと思慮され、われわれ審査委員一同敬意を表します。また、お忙しい中にも関わらず四半期ごとの審査のためにこの西播磨までご足労をお掛けした審査委員の皆様、どうも2年間ご苦労様でした。

 

 

 

松井 純爾 MATSUI Junji

(財)ひょうご科学技術協会 兵庫県放射光ナノテク研究所

〒679-5165 たつの市新宮町光都1丁目490-2

TEL : 0791-58-1452 FAX : 0791-58-1457

e-mail : matsui@hyogosta.jp

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794