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Volume 13, No.5 Pages 362 - 363

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2007A 採択長期利用課題中間評価について
Interim Review of 2007A Long-term Proposals

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 2007A期に長期利用課題として採択となった2件の課題の中間評価実施結果を報告いたします。長期利用課題の中間評価は、実験開始から1年半が経過した課題の実験責任者が成果報告を行い、長期利用分科会が、対象課題の3年目の実験を実施するかどうかの判断を行うものです。以下に対象課題の評価結果、コメントおよび成果リストを示します。

 

 

1. 高時間・空間分解能X線イメージングを用いた凝固・結晶成長過程における金属材料組織形成機構の解明

 

[実験責任者名]

  安田 秀幸(大阪大学)

[採択時の課題番号]

  2007A0014

[ビームライン]

  BL20B2

[評価結果]

   3年目を実施する

 

[評価コメント]

 本課題は、金属材料の凝固・結晶成長プロセスにおける組織形成過程のその場観察を高輝度X線による高分解能イメージング手法により実現し、凝固組織や欠陥の形成機構を理解し、製造技術のブレークスルーに結び付けることを視野に入れた研究である。

 採択時のコメントなどを反映させて、申請者らは実用上重要であるNi合金系やFe合金系の凝固過程のその場観察を成功させることを目標に実験を行ってきた。まず高融点金属の観察手法を確立するため、高温炉・試料セルなどの改良を進め、真空中または不活性ガス雰囲気中で1700°CまでX線透過像の観察が可能なグラファイトを発熱体とした炉の開発に成功した。この炉を用いて、Fe-Si-Al合金のデンドライトの観察などを行い、更に技術的に困難とされてきた純鉄固液界面の吸収像による静的・動的X線透過像観察に成功した。このことから当初予定していた屈折コントラスト法の開発は本課題では行わないこととしている。論文等による外部発表はこれまでのところ必ずしも活発で無いが、装置開発努力を成果に結びつけることが今後期待される。

 これまでに開発した合金材料の凝固・結晶過程の観察法を基に3年目の計画を実行し、最終年において所期の目的の一つである2元型合金の2次元濃度分布を評価する定量的観察手法を確立することを期待したい。またすでにデンドライトの成長過程などのリアルタイム観察にも成功しているが、実験と解析を進め、成長初期過程の理論・モデルとの比較による合金系凝固過程の理解の進展も期待したい。予定されている装置や観察方法の改良も一層進めてほしい。

 

[成果リスト]

   なし

 

 

2. Nuclear Resonance Vibrational Spectroscopy (NRVS) of Iron-Sulfur Enzymes for Hydrogen Metabolism, Nitrogen Fixation, and Photosynthesis

 

[実験責任者名]

  Stephen Cramer(University of California Davis)

[採択時の課題番号]

  2007A0015

[ビームライン]

  BL09XU

[評価結果]

   3年目を実施する

 

[評価コメント]

 本課題は、生体にとって重要な役割を担っている鉄硫黄(Fe-S)酵素であるニトロゲナーゼやヒドロゲナーゼの構造と活性作用を、Feサイトの局所振動モードを反映する核共鳴振動分光法(NRVS)により明らかにしようとする実験及び解析法の開発を含んだ独創性の高い開発研究である。このグループは前長期利用課題から継続的にNRVS法の生体高分子への適用可能性の検証を行ってきている。本課題ではこれらの酵素の活性作用、すなわち触媒反応過程での構造変化、基質と阻害剤の結合部位などを明らかにすることを目的にしている。

 これまで、NRVS法固有の特長を他の実験手法との比較検討を行うことにより実証し、また分子シミュレーション法をニトロゲナーゼの解析に応用し、その精度の評価も行っている。ヒドロゲナーゼ(“Hmd”)においては予測されなかったFe-O伸縮モードが観察されており、今後同位体効果なども含めて研究を進めることにしている。ニトロゲナーゼ単結晶試料に対しては結晶方位依存性データの解析を進めて、またCOと結合したニトロゲナーゼのNRVSの変化の実験と解析も進めている。初期申請に計画されたNRVS/SRPAC実験は採択時のコメントにより本課題では行わないことにしている。すでに成果は4報の報文としてまとめられており、学会発表も活発に行われていることがみてとれ、研究は順調に進んでいると思われる。

 最終年には、ニトロゲナーゼのCOまたはN2との複合体や誘導体、光分解試料などのNRVS解析、さらにはNi-Fe及びFe-Feヒドロゲナーゼの解析などが予定されている。これらの計画はこれまでの発展から順当なものと考えられる。前長期利用課題を含めて6年間の研究の集大成の最終年は、これまでの成果を一層推し進めるものと考えられ、NRVS情報の一層の正確性の向上と生体高分子評価法の確立を期待したい。なお、本中間評価は提出された長期利用課題中間評価用書類及び関係書類により行われた。

 

[成果リスト]

[1] “Observation of Terahertz Vibrations in Pyrococcus furiosus Rubredoxin via Impulsive Coherent Vibrational Spectroscopy and Nuclear Resonance Vibrational Spectroscopy-Interpretation by Molecular Mechanics” Tan, M.-L.; Bizzarri, A. R.; Xiao, Y.; Cannistraro, S.; Ichiye, T.; Manzoni, C.; Cerullo, G.; Adams, M. W. W.; Francis, E.; Jenney, J.; Cramer, S. P: J. Inorg.Biochem. 2007, 101, 375-384.

[2] “Characterization of the Fe Site in Iron-Sulfur Cluster-Free Hydrogenase (Hmd) and of a Model Compound via Nuclear Resonant Vibrational Spectroscopy (NRVS)” Guo, Y.; Wang, H.; Xiao, Y.; Vogt, S.; Thauer, R. K.; Shima, S.; Volkers, P. I.; Rauchfuss,T. B.; Pelmenschikov, V.; Case, D. A.; Alp, E.; Sturhahn, W.; Yoda, Y.; Cramer, S. P.: Inorg. Chem. 2008, 47, 3969-3977.

[3] “Dynamics of Rhodobacter capsulatus [2Fe-2S] Ferredoxin VI and Aquifex aeolicus Ferredoxin 5 via Nuclear Resonance Vibrational Spectroscopy (NRVS) and Resonance Raman Spectroscopy” Xiao, Y.; Tan, M.-L.; Ichiye, T.; Wang, H.; Guo, Y.; Smith, M. C.; Meyer, J.; Sturhahn, W.; Alp, E. E.; Zhao, J.; Yoda, Y.; Cramer, S. P.: Biochem. 2008, 47, 6612-6627.

[4] “EXAFS and NRVS Reveal that NifB-co, a FeMo-co Precursor, Comprises a 6Fe Core with an Interstitial Light Atom” George, S. J.; Igarashi, R. Y.; Xiao, Y.; Hernandez, J. A.; Demuez, M.; Zhao, D.; Yoda, Y.; Ludden, P. W.; Rubio, L. M.; Cramer, S. P.: J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 5673-5680.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794