Volume 12, No.5 Pages 421 - 423
4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第7回SPring-8夏の学校を終えて
The 7th SPring-8 Summer School
[1](財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI、[2]兵庫県立大学大学院 物質理学研究科 Graduate School of Material Science, University of Hyogo、[3](財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI
「第7回SPring-8夏の学校」は、7月6日(金)〜9日(月)の3泊4日の日程で、全国から40名の大学院生(前期課程)および学部生等の参加を得て、中央管理棟およびSPring-8蓄積リング棟・ニュースバルリング棟を会場として開校されました。この夏の学校は、(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)と姫路工業大学大学院理学研究科(当時・現在は兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科)の共催で2001年に第1回が開催され、今年で7回目となります。現在は、JASRIと兵庫県立大学大学院の物質理学研究科、生命理学研究科、高度産業科学技術研究所の共催となっており、今回も昨年度に引き続き兵庫県立大学の小原先生(物質理学研究科長)に校長をお願いしました。実行委員会は、JASRIおよび兵庫県立大学大学院物質理学研究科、生命理学研究科、高度産業科学技術研究所と、連携大学院に所属する(独)理化学研究所播磨研究所および(独)日本原子力研究開発機構関西光科学研究所のスタッフで構成され、事務はJASRIの研究調整部が行いました。
この夏の学校の開校目的は、「将来の放射光利用研究者の発掘と育成」であり、大学院前期課程と学部四年生を主な対象としています。当初は手探りの状態で始めたということもあって、募集人員は20名程度、4本のビームラインを実習に使って2泊3日の日程で開校していましたが、定員を上回る参加希望者があり、参加を断らなければならなかったため、徐々に募集人員を増やし、現在は10本のビームラインを使い3泊4日の日程で40名を対象に開催しています。
講義風景(特別講義)
実習風景
今回の夏の学校では、ここ数年の慣例に従って、初日には基礎講座を4講、2日目と3日目に2テーマの実習を行い、4日目にまとめとして応用講座を4講組みました。講義題目と講師(敬称略)は以下の通りです。
基礎講座:光源加速器(JASRI 高雄勝)
放射光の発生(理化学研究所 田中隆次)
ビームライン(JASRI 後藤俊治)
X線の強度を測る(JASRI 八木直人)
応用講座:タンパク質結晶構造解析(兵庫県立大学 村本和優)
軟X線分析(兵庫県立大学 村松康司)
XAFS(JASRI 宇留賀朋哉)
微細加工(兵庫県立大学 渡邊健夫)
実習のテーマと使用したビームラインおよび担当者(敬称略)は以下の通りです。
BL08B2:XAFS(ひょうご科学技術協会 横山和司)
BL09XU:放射光による時分割測定−核共鳴散乱を例にして(JASRI 依田芳卓)
BL14B1:水の構造の圧力変化と固化(日本原子力研究開発機構 片山芳則)
BL17SU:軟X線多層膜偏光素子による偏光測定(JASRI 木村洋昭、広野等子)
BL19B2:X線回折による材料の定性分析(JASRI 廣沢一郎)
BL24XU:X線"レンズ"を使った集光とその評価(兵庫県立大学 高野秀和)
BL26B1:タンパク質の結晶構造解析(理化学研究所 上野剛)
BL27SU:放射光アブレーションによる材料加工(大阪大学 金島岳)
BL38B2:ストリークカメラで観る電子ビームの横顔(JASRI 田村和宏)
NewSUBARU:レーザーコンプトンガンマ線の発生と応用(兵庫県立大学 天野壮)
放射光の利用分野は広いため、参加者は専門外の講義や実習も受けることになりますが、講師や実習担当の方々の努力もあって、専門外の分野の技術や研究にも十分に興味を持ってもらえたようです。実験ホール・ニュースバル・SCSSの見学も、引率者の努力に応え、じっくり時間をかけて熱心に説明を聞いていました。
夏の学校参加者にはアンケートに答えてもらいました。参加者の実習の感想は「限られた時間のなかで、すごく充実していました」「基礎から手順を丁寧に、マンツーマンで教えてもらったので、よく身についた」「放射光による測定のデータが、とてもきれいで驚きました」など、実習担当者の苦労が報われるものが多くありました。また、夏の学校全体の印象としては「あっという間の時間で、有意義な時間が過ごせました」「結晶分光器やニュースバル等、自分がユーザーとして実験しているときには関わらない場所を見学できてよかった」などの感想があったほか、「先生方がいい人ばかりでした」といったうれしい感想もありました。参加者同士の交流も重要で、「いろいろな分野の学生と話す機会が多く、研究の励みになった」「全国各地の学生と交流ができ、自分の専門以外の話を聞けたので、非常に良い経験になった」「懇親会と2次会が印象的でした。他大学の人との交流など、すごく楽しかったです」など、講義や実習以外でも刺激を受ける機会が多かったようです。
今回の特別企画として、SPring-8供用10周年事業の一環として、上坪宏道先生に特別講演をお願いしました。先生はSPring-8の生みの親として高名な方ですが、JASRIの放射光研究所長(当時)として、本夏の学校を始めるにあたって大変なご努力と支援をしてくださったことを忘れてはなりません。SPring-8の成り立ちから最近の応用研究まで、広い知識をもとに啓蒙的なお話をしてくださいました。実習生からも「SPring-8設立初期のお話が聞けて、非常におもしろかったです」「世界初にチャレンジし続けよう、という言葉に深い感銘を受けました」などの感想がありました。
3日目の夜には、食堂での懇親会のあと、研究交流施設で上坪先生もまじえて夜中まで会話がはずんでいました。
最後に、講義及び実習を担当してくださった先生方、夏の学校を開校するにあたりご協力いただいた(財)高輝度光科学研究センター、(独)理化学研究所播磨研究所、(独)日本原子力研究開発機構関西光科学研究所、兵庫県立大学大学院物質理学研究科・生命理学研究科および高度産業科学技術研究所、ひょうご科学技術協会の関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。また、夏の学校の事務局としてウェブ作成から懇親会のお世話までご努力いただいたJASRI事務局担当者に感謝致します。
記念写真
八木 直人 YAGI Naoto
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-2750 FAX:0791-58-0830
e-mail : yagi@spring8.or.jp
篭島 靖 KAGOSHIMA Yasushi
兵庫県立大学 大学院物質理学研究科
〒678-1297 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-2-1
TEL:0791-58-0230 FAX:0791-58-0236
e-mail : kagosima@sci.u-hyogo.ac.jp
鈴木 芳生 SUZUKI Yoshio
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-2750 FAX:0791-58-0830
e-mail : yoshio@spring8.or.jp
木村 洋昭 KIMURA Hiroaki
(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL:0791-58-2750 FAX:0791-58-0830
e-mail : kimura@spring8.or.jp