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Volume 12, No.4 Pages 343 - 346

4. 告知板/ANNOUNCEMENTS

最近のSPring-8関係功績の受賞
Award-winning Achievements on SPring-8

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平成19年度「文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)」を独立行政法人理化学研究所 石川哲也放射光科学総合研究センター長が受賞


 文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の文部科学大 臣表彰を定めている。開発部門は、我が国の社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った研究者に対して贈られる賞である。


受賞者紹介

石川 哲也 独立行政法人理化学研究所 播磨研究所放射光科学総合研究センター長


功績名:大型放射光X線光学系の開発


 石川氏は、世界一の第3世代放射光源であるSPring-8の建設以前には未開発であった数々のビームライン技術を実用化した。この技術が世界標準となった今では、世界中の放射光施設のユーザーがその恩恵を受けている。このような「大型放射光X線光学系の開発」への功績が高く評価され、今回の受賞となった。

 授賞式は4月17日に東京虎ノ門パストラルにおいて行われた。



「本多記念研究奨励賞」を財団法人高輝度光科学研究センター 中村哲也主幹研究員が受賞


 本多記念研究奨励賞は、わが国の金属・磁性研究の礎を築かれた、本多光太郎博士の学徳を顕彰するために設立された財団法人本多記念会が設けている賞で、金属に関連する研究で優れた業績を上げた若手研究者を対象として贈られる賞である。


受賞者紹介

 中村 哲也 財団法人高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 主幹研究員


功績名:放射光を用いた新しい磁気測定に関する研究


 磁性体は身の回りのさまざまな場面に役立っていますが、その磁性体の構成元素に円偏 光をあてると、円偏光の回転方向と磁化の方向に応じて光の吸収強度に差が現れる。この磁気円2色性現象は、SPring-8のような高輝度放射光施設における物質研究の有力な手法 になっている。中村氏はSPring-8において、サンプルの温度が可変で、磁界も1.9テスラまで連続的に変化させることができる装置を開発し、多くの興味深い磁性体の研究を行ってきた。また、磁気円2色性のみならず放射光を用いた他の手法による磁性研究も推進している。これらの功績が大きく評価され、今回の受賞となった。

 授賞式は5月11日(金)に東京神田の学士会館において行われた。



「アレキサンダー・フォン・フンボルト研究賞」を愛媛大学 入舩徹男 地球深部ダイナミクス研究センター長が受賞


 アレキサンダー・フォン・フンボルト研究賞は、ドイツのフンボルト財団によって1972年に創設された賞であり、文系・理系を問わず、幅広い研究分野において国際的に優れた研究業績をあげた研究者に対して贈られる賞である。


受賞者紹介

 入舩 徹男 愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター長


 この賞は受賞者のこれまでの研究業績全体に対して授与されるもので、これまで入舩氏が行ってきた

 (1)マントルと海洋プレート物質の高温高圧相転移

 (2)SPring-8や超高圧装置を用いた地球深部物質の性質の解明

 (3)超高硬度ナノダイヤモンド(HIME-DIA)の合成と応用

などの研究成果が総合的に評価されたものである。

 授賞式は2008年4月にドイツにおいて行われる予定である。



「平成18年度高分子学会賞」を京都大学化学研究所 金谷利治教授、名古屋大学大学院工学研究科 松下裕秀教授が受賞


 高分子学会賞は高分子科学、技術(工学、工業化技術を含む)に関する独創的かつ優れた業績を挙げた研究者に対して贈られる賞である。


受賞者紹介

 金谷 利治 京都大学 化学研究所 教授


功績名:高分子結晶化と高次構造形成機構の精密解析と制御


 高分子材料は金属材料、セラミック材料とならび我々の生活に必要不可欠な材料である。 高分子は結晶性高分子と非晶性高分子に大別されるが、ともに材料としてそれぞれの特性があり重要である。結晶性高分子の場合は結晶の構造およびその高次構造が物性に大きく影響を及ぼすことが知られているが、非晶性高分子においても、透明性の制御などでは非晶中の構造が大きな問題となる。これらの高分子材料の構造を制御し、高性能・高機能材料の創製はこれまでも求められてきたが、結晶性高分子と非晶性高分子の研究の流れはあまり交わることがなかった。

 金谷氏は、中性子や放射光の高輝度X線を利用して、高分子結晶化過程の研究を行うと同時に、非晶構造やガラス転移の問題について同時に研究を進めてきた。その結果、非晶高分子にもある種の構造が存在することを示すと同時に、結晶化過程においても結晶核生成以前において非晶構造中に構造形成があり、それが最終的な高次構造を大きく支配していることを見出した。これは、「中間相」を経由する新たな結晶化機構研究領域の開拓につながり、今後の高分子結晶化研究の方向性を示す先駆的な仕事となった。これらの功績が大きく評価され、今回の受賞となった。

(高分子学会誌「高分子」 56巻5月号(平成19年5月発行)より一部転載)


受賞者紹介

 松下 裕秀 名古屋大学 大学院工学研究科 教授


功績名:複合高分子の精密分子設計と階層的多相構造制御


 複合高分子は、高度情報化社会で必要とされる高機能物質への要求の一端を背負っており、ブロック共重合体は担い手の一つである。ブロック共重合体がその擬集状態で示す周期的な自己組織化構造については、半世紀近い研究の歴史があり、機能材料への応用も試みられて久しい。

 松下氏は、分子構造の明確な試料を用いて複合系高分子が分子の凝集状態で示す多相構造に関する先端的な研究を展開し、アルキメデスパターンなど多くの階層的新規モルホロジーの構築に成功することで、国際的にも注目される大きな功績を挙げ、例えばChemical & Engineering News誌 Vol.85(21)にも紹介されている。その研究の特徴は、研究目的にかなった試料の分子設計から調製・分子特性評価、多相構造制御まですべてを通して自らの手で完遂させたことにあり、世界的にもあまり類を見ない。同氏が研究遂行上で最重要視した点は、異種高分子間のトポロジカルな結合性と、その空間的拘束が生み出す階層的な擬集構造特性との関連である。そして、アニオン重合技術を基盤として、種々特色のある単分散ポリマー・コポリマーの精密合成・分離に成功し、それらが凝集状態でつくるミクロ相分離構造を綿密に調べた。構造解析においては、常に顕微鏡による実空間の観察と、大型放射光のX線散乱や中性子散乱等の散乱法を相補的に用いて新規な階層的凝集構造の確固たる証拠を示した。これらの功績が大きく評価され、今回の受賞となった。

(高分子学会誌「高分子」 56巻5月号(平成19年5月発行)より一部転載)



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794