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Volume 12, No.4 Pages 299 - 301

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2005B採択長期利用課題中間評価について
Interim Review of 2005B Long-term Proposals

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 2005B期に長期利用課題として採択となった3件の課題の中間評価実施結果を報告いたします。長期利用課題の中間評価は、実験開始から1年半が経過した課題に対して、提出書類をもとに成果報告を行い、3年目の実験実施有無の判断を行いました。以下に対象課題の評価コメントと成果リストを示します。


1.時分割ニ次元極小角・小角X線散乱法によるゴム中のフィラー凝集構造の研究

〔実験責任者〕

 雨宮 慶幸(東京大学)

〔採択時課題番号〕

 2005B0003(BL20XU)、2005B0004(BL40B2)

〔ビームライン〕

 BL20XU、BL40B2

〔評価結果〕

 3年目を実施する

〔評価コメント〕

 本長期課題は、時分割2次元極小角X線散乱(2D-USAXS)と2次元小角X線散乱(2D-SAXS)を組み合わせて、ゴム中のフィラー凝集構造、その動的変化、および、ゴム物性との関係を解明しようとするものである。当初、BL20XUとBL40B2で測定したデータ間で整合性がとれないことが懸案になっていた。本課題による測定の高精度化、広角散乱との同時測定および光学系の改良により、良い成果が系統的に得られるようになってきている。その結果、ナノメートルからマイクロメートルの広領域で精密な議論が可能になり、その達成度を高く評価する。本研究で確立された高ダイナミックレンジ測定は、他の分野にも応用可能な手法であり、本実験の意義は大きい。

 一方で、解析方法の開発がほとんど進展していないのではないかと危惧される。採択時のコメントにもあるように、再度、解析法について十分な考察を行い、より具体的な戦略を立てるよう要請したい。特に、構造因子と形状因子の分離に集中して、小角X線散乱法の限界に挑んで欲しい。この解析方法の確立には、球モデル物質や簡単な構造の試料に立ち返るのも一案かもしれない。また、q以外の方向依存性(角度依存)が観測されているので、その情報を利用することも解析法開発に役立つと考える。

 本研究課題では、USAXS/SAXSにより延伸時のフィラー凝集状態についての構造的知見がすでに得られており、研究は着実に進捗している。その成果は、本研究で開発された広いレンジでの小角X線散乱測定により初めて可能になったものであり、3年目の実施により今後更なる成果が期待できる。ただし、その戦略は、計測・解析技術の手法確立に置くのか、ゴム中フィラーの問題に絞るのか、ターゲットを整理する時期に来ている。また、どちらのテーマを選択する場合であっても、小角X線散乱法でどこまで解析できるのか、その限界を明確に示すべきである。このように要望すべきことは幾つかあるが、現在当該分野を先導しており、3年目の実施は妥当であると判断する。


〔成果リスト〕

[1]11123 Y.Shinohara et al.:“Characterization of 2D-USAXS Apparatus for Application to Rubber Filled with Spherical Silica under Elongation”,submitted to J.Appl.Cryst.

[2]11099 篠原佑也、岸本浩通、雨宮慶幸、「フィラー充填ゴムのX線小角散乱」機能材料、27(2007)83-90.

[3] 雨宮慶幸、篠原佑也「X線小角散乱の基礎と今後の展開」、放射光、19(2006)338-348.


2.ポストスケーリング技術に向けた硬X線光電子分光法による次世代ナノスケールデバイスの精密評価

〔実験責任者〕

 財満 鎭明(名古屋大学)

〔採択時課題番号〕

 2005B0005

〔ビームライン〕

 BL47XU

〔評価結果〕

 3年目を実施する

〔評価コメント〕

 本長期課題では、次世代半導体デバイス構造をもつ試料を非破壊で硬X線光電子分光法により観察することで、埋もれた界面や多層構造内部の化学結合状態の評価を行っている。現在までに、SiO2や各種誘電率ゲート絶縁膜構造、金属電極/絶縁膜/半導体ゲートスタック構造、半導体ナノ構造について、異種材料界面やその遷移領域の化学結合状態や電子状態を評価し、計画どおりの成果が得られている。

 3年目の実施計画では、次々世代のシリサイドゲート電極や希土類系高誘電率絶縁膜に的を絞っている。これらの材料について、界面や遷移層の化学結合状態を詳細に分析することで、産業技術に直接貢献する成果が得られると期待する。更に、マイクロビームX線を利用した3次元顕微X線光電子分光マッピングを積極的に開発することを強く勧めたい。この手法が発展すれば、歪み系結晶上の界面状態が解析でき、歪み分布や局所的な物性揺らぎを直接評価できる。このように顕微X線光電子分光マッピングでデバイスの信頼性を評価できれば、SPring-8発信の放射光分析技術がデバイス開発に直接関与することになり、その研究意義や波及効果は大きい。引き続き3年目の課題を実施することで大きな成果を期待する。


〔成果リスト〕

[1]10681 K.Hirose,M.Kihara,D.Kobayashi,H.Okamoto,S.Shinagawa,H.Nohira,E.Ikenaga,M. Higuchi,A.Teramoto,S.Sugawa,T.Ohmi and T.Hattori:“X-ray photoelectron spectroscopy study of Dielectric constant for Si compounds”,Appl.Phys.Lett.89(2006)154103-1~3.

[2]10694 T.Hattori,H.Nohira,K.Azuma,K.W.Sakai,K.Nakajima,M.Suzuki,K.Kimura,Y. Sugita,E.Ikenaga,K.Kobayashi,Y.Takata,H.Kondo and S.Zaima:“Study on the gate insulator/silicon interface utilizing soft and hard X-ray photoelectron spectroscopy at SPring-8”,Int.J.High Speed Electron.Sys.16(2006)353-364.

[3]10696 A.Ohta,H.Nakagawa,H.Murakami,S.Higashi,S.Miyazaki,S.Inumiya and Y.Nara:“Photoemission Study of Ultrathin HfSiON/Si(100)Systems”,Trans.of the Mater. Res.Soc.of Japan,31(1),(2006)125-128.


3.Phase-contrast imaging of lungs

〔実験責任者〕

 Rob Lewis(Monash University)

〔採択時課題番号〕

 2005B0002

〔ビームライン〕

 BL20B2

〔評価結果〕

 3年目を実施する

〔評価コメント〕

 In the Long Term proposal of 2005B0002 and the continuance,the project leader and colleagues have successfully developed the phase contrast X-ray imaging(PCI) to image and measure the rate and spatial pattern of lung aeration in spontaneously breathing newborn rabbit pups.They demonstrate the importance of respiratory activity in newborn rabbit pups from the veryfirst breath after birth and provide important information on the process leading to airway liquid clearance at birth.They also have validated the air volume measurements based on both PCI and water plethysmograph methods.Since the PCI has been established as an imaging technique for observing soft tissues and airway liquid clearance,we conclude that the project has worked out asscheduled.

 Their experiments planned for the third year include(1)the studies detailing the effect of body position and body rotation on lung aeration,(2)the imaging of mechanically ventilated anesthetized preterm rabbitpups,(3)the potential use of analyzer-based PCI,and(4)the quantitative mathematical modeling to determine thesize distribution of respiratory units of the lung.We have recommended the continuance of this project for the third year,since the biological and medicalapplication of PCI enables us to provide totally new information in diagnosis. We have great expectations that their sensitive technique can detect abnormalities intissue movement due to lung disease.This midterm review has been made through the critical reviewing for their submitted documents.


〔成果リスト〕

[1]10628 M.J.Kitchen,R.A.Lewis,S.B.Hooper,M.J.Wallace,K.K.W.Siu,I.Williams,S.C. Irvine,M.J.Morgan,D.M.Paganin,K.Pavlov,N.Yagi and K.Uesugi:Dynamic Studies of Lung Fluid Clearance with Phase Contrast Imaging,in J.-Y.Choi and S.Rah,eds.Ninth International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentation,May 28-June 2, 2006,Daegu,Korea.AIP Conference Proceedings Vol.879(2007)1903-7.

[2] S.B.Hooper,M.J.Kitchen,M.J.Wallace,N.Yagi,K.Uesugi,M.J.Morgan,C.J.Hall,K.K.W. Siu,I.M.Williams,M.Siew,S.C.Irvine,K.Pavlov and R.A.Lewis:Imaging lungaeration and lung liquid clearance at birth.FASEB J,submitted.



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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