Volume 12, No.1 Pages 56 - 62
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
高分子科学研究会の活動
Activity Report of Polymer Science Research Group
[1]豊田工業大学大学院 工学研究科 Graduate School of Engineering, Toyota Technological Institute、[2]住友化学(株) 石油化学品研究所 Petrochemicals Research Laboratory, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
はじめに
今年度からSPring-8利用者懇談会の体制が大幅に変わり、放射光を利用する種々の分野の研究活動を支援する利用促進委員会の下、数多くの研究会が活発に動いている。ポリマーサイエンスも放射光の重要な研究分野の一つとして位置づけられ、その下に高分子科学研究会と高分子薄膜・表面研究会が属している。高分子科学研究会は大学官庁からの会員が33名、企業からの参加が12名、高分子薄膜・表面研究会は大学官庁が38名、企業が15名となっており、企業からの入会比率が高い。このことからも高分子科学が如何に産学連携色の強い学問分野であるかがわかる。
ご存知のように、高分子材料と我々人類との付き合いは極めて長い。人類がこの世に出現して以来、衣服はもとよりあらゆる面で我々は高分子材料のお世話になっている。特に、1920年代に、高分子とは「低分子量成分のモノマーユニットが互いに共有結合で結ばれてできた極めて高い分子量をもった分子である」との概念がStaudinger博士らによって確立され、本格的に高分子科学が始まって以来、目覚しい勢いで高分子科学は発展を遂げてきた。名著「歴史における科学」の中で、バナール博士は、20世紀における最も発達した産業の一つとして高分子を取り上げているが、その産業の発展を直接支えてきたのが高分子科学である。この21世紀、自動車やスペースシャトルの内装、外装から光通信用ファイバー、電導性材料や発光ダイオードとしての利用、手術用縫合糸、人口腎臓など医療関連分野での利用に至る、社会生活に不可欠なありとあらゆる分野で、高分子材料はより一層、我々の生活に密着した素材として用いられている。その分、我々、高分子科学・産業に携わるものの果たすべき責務は大きくなっている。その最たる重要課題の一つとして環境問題を避けては通れない。これまで優れた材料として利用されてきた汎用性高分子のいくつかについては、今や環境汚染問題が避けて通れないという状況になっている。近い将来、天然素材を積極的に利用した「安全安心社会のための高分子産業」への変身も高分子科学・産業の果たすべき重要テーマである。
高分子科学の現状について語ろうとする場合、高分子科学が、数多くの学問分野の中でも、産業界との繋がりの取り分け強いものであることを繰り返し指摘する必要がある。ここ数十年の間、我が国の高分子科学は、高分子産業と共に、著しい質的発展を示し、今や世界をリードする位置づけにあることは、誰もが認めるところである。しかし、アジアを中心とした高分子産業の急速な立ち上がりは本邦の繊維産業を圧迫し、決して看過できない状況になっていることも現状である。このような中で我が国の高分子科学・高分子工業を常に優位の立場に保ち、世界における我が国の競争力をより強大なものにするためには、これまで以上に優れた素材としての高分子材料の新たな開発が切実な問題として我々の前に存在している。これまでの高分子研究を振り返ると、経験的に思いついた高分子を実際に合成してはその物性を調べる、といった作業を繰り返し、数多くの失敗の中から優れた材料を偶々見出す、という研究のやり方が大勢を占めてきた。従来に無い全く新しい性能を有する新規高分子材料の開発のためには、これまでに未解決問題として棚上げしてきた数多くの基本的課題を新たな観点から徹底的に検討しなおし、その中から、実際の高分子設計に必要な様々の要因を抽出、利用することが不可欠となる。
高分子科学研究会は、このような状況の中で如何に放射光を利用して高分子科学・産業の種々の難題を解決せしめるかを共通目的として発足した。旧来立ち上げてきた高分子科学研究会において我々は、このことを様々の講演会や討論会を通じてアピールしてきたが、今回立ち上がった「新」高分子科学研究会においては、産官学の間の連携を前面に押し出し、数多くの産学協同研究を通じて、従来よりも一層積極的に放射光を利用した高分子関連実験を遂行していくことを謳っている。そして、この成果に基づいて高分子研究分野に質的革命を引き起こすことを目指す。
高分子科学における未解決課題
上述の如く、1920年代に「高」分子の存在が科学的に実証されて以来、約1世紀がたつ。他分野に比べると、高分子はまだまだ若い。しかし物理、化学、生物学、医学から生活環境学までを包含する極めて幅広い学問分野である。1930〜1940年代には、新しく合成された高分子物質の性質を構造との関わりから解明すべく、優れた研究者たちが他分野から続々と乗り込み、X線回折技術を中心に高分子鎖の集合組織構造について盛んに研究を行い始めた。1950年代には、初期の頃に提案された「単純な紐の集合体」としての高分子組織の概念から、「規則的な折りたたみ鎖」の概念への革命的展開がなされ、高分子科学は一変した。今日の高分子構造学の基本概念はおよそ50年前に構築されたといえる。それ以降、次々に開発される数多くの高分子材料について、その物性を如何に制御するか、如何にすればもっと優れた材料となり得るのか、産官学を挙げての懸命の努力が行われて今日に至る。
図1は、一般の高分子材料における複雑な階層構造を模式的に示したものである。例えばポリエチレンを溶融状態から室温までゆっくりと冷却すると、図1(a)のように球状の集合体ができる。これを球晶とよぶ。球晶は薄い板状のラメラから構成されているが、一枚一枚のラメラは球晶の中心から外に向かって放射状に拡がる。しかも各ラメラはある一定のピッチでもって捩れている(図1(b))。一枚のラメラの中では分子鎖が幾度も入っては出ていき、いわゆる折れたたみ鎖結晶を形成している(図1(c))。ラメラ内の分子鎖は伸びきった形をし、平行に充填されて結晶格子を形作る。ラメラ表面には折りたたまれた鎖部分が非晶状態として存在し、一部はタイ分子として隣接ラメラの内部へと侵入していく。このように高分子はÅの原子レベルからミクロンサイズの球晶まで、極めて複雑な階層構造を形成している。この階層構造は、材料の処理条件や加工の仕方によって極めて敏感に変化する。その結果、高分子材料の物理的性質も非常に敏感に変わってくる。
図1 ポリエチレン球晶における階層構造の模式図
文献をひもとくと、1930年代初期の頃、既に、「高分子の構造と物性との関わりを分子レベルから明らかにする」ことの重要性が世界中で強調された。しかしながら、現在の高分子科学の目覚しい発展の中において、果たして我々は、当時に疑問とされた数多くの基本的問題にどこまで明確な解答を提出し得ているのであろうか?例えば、図1に示した複雑な階層構造にしても、大まかな構造は前述したとおりであるが、例えば分子鎖がラメラの内外をどのように出入りしているのか、詳細は依然として未確定である。このような未解決問題は、高分子が関与する殆ど全ての点に認められる。例えば、PETボトルの各場所で分子鎖がどのような集合組織を形成しているのか、簡単に答えることは出来ない。繊維にしても事情は同じである。溶融状態からの紡糸によって作製される一本の極細繊維フィラメントの中味について、我々は、中心から表面にいたる各部位における分子鎖の集合状態、運動性、そしてモノフィラメントの性質との関わりをどこまで解明し得たであろうか?もう少し具体的に未解決問題を列挙すると.....(A)溶融状態からの冷却過程における分子鎖の規則的集合組織の成長機構解明、(B)溶融あるいは溶液状態からの紡糸過程における繊維構造形成プロセスの解明、(C)成形品の変形加工に伴う内部構造変化の機構解明、(D)高分子コンポジット材料中でのフィラー(充填剤)の空間分布と物性との関わり、(E)溶液からのキャスティングプロセス中での表面構造および物性変化の解明、など枚挙に暇がない。このように、今日に至る長い間、高分子科学の発展に不可欠と考えられ基本的なテーマが難題のまま引きずられてきている。これらの基本的重要課題の解明が、企業における新規素材開発の上における根本的指導原理となることは言を待たない。
高分子科学における基本的課題解決のためには?
上記のそれぞれの問題を解く上で最大の武器となるのが広角および小角X線散乱技術である。得られたデータの解析から、分子鎖配向、ラメラサイズ、ラメラ積層周期などいくつもの重要なパラメータが評価され、高分子高次組織についての定量的議論が可能となってきた。しかしながら、高分子材料特有のX線散乱強度の弱さやデータの曖昧さが、解析に不確かさを与えており、これらの限られた構造パラメータだけでは、図1に示すような高分子鎖の集合組織構造の具体的かつ完全な描像を導き出すことは出来ない。言い換えると、極めて限られた情報に基づいた、殆ど推定の域を出ないレベルのモデルに甘んじてきているのが高分子固体科学の現状である。ましてや、成型加工や紡糸過程の中で時々刻々変化する高分子鎖の動きを具体的イメージとして描くことは、殆ど不可能な状況にある。広角X線回折データに基づく結晶構造解析は高分子の極限状態における構造を知る上で不可欠であるが、これについても事情は同じである。低分子化合物の単結晶についてのX線結晶構造解析においては、数千個以上のシャープなX線反射データを用いることで非常に精度の高い構造情報を得ることができる。しかし、結晶サイズが数百Åしかない高分子の場合、結晶領域からのX線反射は極めてブロードで、数もせいぜい数十個が得られれば良かった。「一つでも多くの反射を、如何に精度高く、どれほどに幅広い散乱角度範囲にわたって収集できるか?」これこそが信頼性の高い構造情報を得るための絶対的必要条件である。しかし従来のように研究室レベルでの低い輝度のX線発生装置を利用している限り、信頼性の高い構造情報を得ることは至難の技である。ましてや、時々刻々変化する高分子鎖の動的構造情報を定量的かつ高精度に時間の関数として描き切ることなど、とても出来ない。つまり、1930年代からの研究の繰り返しにとどまってしまいかねない。
何故、放射光が必要なのか?
高分子科学が何十年にもわたって解決できなかった上記の重要課題について、それらを一気に解決してくれる強力な手段としては、放射光源からの超高輝度X線ビームの利用以外にはあり得ない。強力なX線ビームは、高感度検出器との組み合わせによって、微弱な反射ですら極めて高速、短時間に集めることを可能にせしめる。研究室での数日の測定と違って、僅か数ミクロンの厚さの薄膜試料について小角X線散乱2次元データを数秒で集めることが出来る。これは、単に高分子からのX線散乱強度を増しただけではなく、長時間の露光に由来する空気散乱、検出強度の減衰、外部ノイズの蓄積、反射そのもののにじみなど、数多くの不要なノイズのカットにも益している。その結果、高分子鎖集合組織におけるミクロン秒から秒オーダーで急速に起こる構造変化を素早くキャッチすることが可能となり、従来見つけられなかった新しい事象を発見できる。もう一つ、放射光使用で重要な利点は、高平行性、高指向性、偏光性などX線ビームそのものの特質である。中でも、ミクロンサイズにまでビームを絞り込むことが出来るのは、高分子研究の上で極めて大きな意義を持っている。例えば、溶融紡糸過程における極細モノフィラメント中での構造変化を精細に調べ上げるためには、ミクロン〜サブミクロンに絞ったX線ビームを照射して、試料の様々の部位における広角および小角散乱データを広い散乱角度にわたって「同時に」収集し、様々の次元から総合的に眺めることが不可欠である。複雑な球晶内部におけるラメラ集合状態の解析においてもミクロンサイズのX線を各場所に照射し、一つ一つトレースしていかねばならない。回折データの集積だけではない。いわゆるイメージング測定を行うことで、モノフィラメント断面における様々の構造欠陥の空間分布やコンポジット中での充填剤の分布などが具体的なイメージとして描かれる。
このように、通常のラボ施設では殆ど不可能に近かった様々の種類の実験を、放射光の利用により、着実に成功させることができるはずである。もちろん、実際の実験には、強力X線源と高感度検出器だけではなく、紡糸装置や力学変形器械などをビームラインに持ち込み、工場で行われている内容に近い「実装」レベルでの実験システムの立ち上げが必要となる(図2)。
図2 高分子の溶融紡糸過程における小角X線散乱測定用システム
このような、かなり大掛かりなシステムを必要とする基礎的研究課題への挑戦に加えて、高分子産業においては、もっと短期的な問題解決への放射光利用の要求もきわめて高い。すなわち、クレームがついて戻ってきた不良製品の原因解明のような即時的問題の解決や、既製品の性能アップのための改良に必要なデータ集めなどである。例えば、成形不良品の中に存在する(であろう)極微量の欠陥の検出や極細フィラメントにおける局所的な構造不整の検出、薄膜表面における配向状態の検討など、非常に具体的な問題解決に際して、放射光の利用によって信頼性高いデータが極めてスピーディに獲得できれば、企業の抱える短期的、中期的難題解決に大きく貢献できるはずであり、企業が放射光を利用する頻度を増すことにもつながる。
国内外の放射光施設等における現状と問題点
高分子科学における上記の基本課題については、既に国内外の放射光施設において数多くの研究報告がなされてきている。中でも、図3に示した如く、ESRFやアメリカの数多くの放射光施設での実績は高く、上記に掲げたテーマについてもアクティブな研究が行われてきている。小規模ながら韓国や中国を始めアジア諸国でも次第に取り組みが始まっている。西欧諸国では、マイクロフォーカスX線ビームを用いた小角広角X線散乱高速時間分解測定やイメージング実験、あるいは紡糸装置や延伸装置を設置した高分子専用ビームラインの常設が当たり前のように進められており、「今更何が故にSPring-8で」との意見があってもおかしくはない。しかし、これらの施設からの論文、報告書を詳細に読むと、確かにデータ収集は極めて精力的に行われているが、実験装置の粗雑さ、ルーチンにとどまったデータ解析など、数多くの問題点が見られる。つまりテーマの種類は多く、測定後に報告が速やかになされてはいるものの、議論は粗く、その課題における指導的論文となり得る質の高い仕事は非常に少ない。また、測定試料の設定についても、一般の市販品を対象にした測定が多く、例えば分子量分布や立体規則性などを精密に制御した試料による実験は限られている。本来、高分子材料は「汚い」ものであるが、立体規則性や分子量をコントロールした高品質の試料をシステマティックに利用することで、その材料に及ぼす分子量効果や規則性効果が具体的に抽出されるはずである。
図3 放射光を用いて行った繊維の研究論文数の推移。国名は、First authorの所属機関の国籍を示している。ドイツ以外の欧州の国々の実験のほとんどがESRFで実施。日本は、米国、フランス、ドイツ、英国についで発表論文数は多いが、その7割は海外放射光施設での実験である。
確かに、我が国の高分子科学における放射光利用について眺めたとき、世界の放射光施設に遅れをとっていることは否めない。しかし、高分子科学の質の高さでは引けをとらない我が国の高分子科学者がSPring-8の利用により、高分子放射光実験で世界をリードすることは決して不可能ではない。
今後の高分子科学研究とSPring-8
我が国における高分子関連の放射光実験施設としては、フォトンファクトリー(PF)およびSPring-8が代表である。数十年にわたって高分子溶液、高分子固体に関わる数多くの実験がPFで行われてきた。しかしながら、装置周辺の制約が大きく、例えば広角小角同時測定技術なども、ここ5年ほどの間にようやく使用できる体制になってきた程である。また、ビームラインの維持も困難で、特定のチームがある種のボランティア的活動でようやく維持している。紡糸実験などの大掛かりな試みは極めて困難である。上掲の様々の本格的実験を西欧諸国に負けずに遂行し、緻密なデータ解析と相まった優れた業績として積み上げるためには、どうしても、超強力なX線源と超高感度検出器に実装機器を取り付けた本格的システムをSPring-8に築き上げることが必要となる。実際、ここ数年、SPring-8において、紡糸過程や変形過程に際して生じる高分子構造変化の高速追跡実験を数社の企業が始めつつある。具体的には、(A)溶融状態のポリエチレンやポリエチレンテレフタレートの高速押出成形過程における小角、広角X線測定実験(口金から出た高分子の流れの各部位にX線を照射し、散乱パターンを測定、シシュカバブ構造への構造発展過程を追跡した)、(B)超小角X線散乱測定による高分子ブロック共重合体中の分子鎖凝集構造の解明(通常の小角散乱データと組み合わせることにより、ナノスケールからミクロンスケールまでの連続的階層構造を推定した)、(C)天然ゴム中での充填剤の分布ならびに変形時の構造変化(イメージングの技法を用いて充填剤の空間分布が高分解能で撮影された。ゴム変形における高分子の結晶化と充填剤の構造変化の相関について知ることが出来た)、(D)生分解性高分子のモノフィラメント各部位の結晶変態分布測定ならびにX線トモグラフィー測定(微小ボイドの空間分布がひと目で読み取れるような像の観察)、(F)高分子マトリックスに分散させたカーボンナノチューブの小角X線散乱測定(二層構造のナノチューブが分散されていることを散乱曲線フィッティングによって定量的に解明。電子顕微鏡観察との間に極めてよい対応)、(G)高分子の相転移過程における小角、広角X線散乱データおよびDSC曲線の同時測定(図4(a)。DSCセルにセットした試料を加熱させ、その過程における発熱吸熱カーブを測定すると同時にWAXD, SAXSデータをイメージングプレートおよびCCDカメラにより同時に測定し、相転移の生じる温度域での結晶格子中での構造変化とラメラ積層構造との相関を定量的に解明)、(H)試料の応力歪曲線測定時における小角X線散乱測定(引張り開始時からの2次元散乱パターン変化の測定により、ラメラ積層構造からミクロフィブリル構造への変化と応力値との相関を解明)、(I)加熱過程における広角、小角X線散乱、ラマン散乱のトリプル装置同時測定の試み(図4(b)。高温セルにセットした試料にX線ビームとレーザービームを同時に照射し、結晶格子の変化、ラメラ積層構造の変化に加えて、分子鎖形態変化を同時に追跡した。様々の階層からの情報が一度に得られる)。これら以外にも数多くの高分子関連実験が、SPring-8の種々のビームライン利用によって行われてきている。しかしながら、紡糸機械のような大掛かりな装置の設置には、予算に加えて時間と人手が必要であり、非常に限られたマシンタイムの中でのじっくりとした実験遂行は極めて困難である。西欧諸国が既に完成させているような、専用ビームラインにおける常設システムの確保が絶対に必要とされる。
図4(a)広角小角X線散乱ならびにDSC同時測定システム(BL402)
図4(b)広角小角X線散乱およびラマンスペクトル同時測定システム(BL40B2, BL45XU)
高分子科学研究会における活動
平成18年4月に「新」高分子科学研究会が発足して以来、我々は様々の活動を展開している。平成18年7月6日〜8日にはSynchrotron Radiation in Polymer Science(SRPS)の第3回国際シンポジウムが理化学研究所、JASRI、姫路市などの財政的援助の下、SPring-8にて開催され、世界中から高分子放射光実験の専門家が集まった。高分子科学研究会は高分子薄膜・表面研究会とともに全面的にこれを支援した。また平成18年9月29日には、高分子材料のためのSAXS実験法に関する研修会がJASRI主催でBL40B2を利用し行われたが、それにリンクして9月30日には高分子科学のための小角散乱実験法に関する講演会を開催した。今後も様々の講演会や勉強会を予定している。特に、高分子関連企業の実験に役立つ様々の放射光実験手法ならびに実験機器のノウハウについての討論や若手研究者のための高分子放射光実験入門講演会などの啓蒙活動も積極的に行う予定である。
以上の如く、高分子科学研究会としては、我が国の高分子科学・高分子産業の今後の発展を目指し、SPring-8における放射光実験を通じた産学連携共同研究を強力に推進すべく、種々の活動を計画している。皆様方の御支援、御協力を心より願うものである。
SRPS-Ⅲ参加者(SPring-8普及棟玄関前にて)
謝辞
本記事を執筆するに当たっては高分子科学研究会の会員諸氏の様々の情報を利用させていただいた。ここに感謝の意を表したい。また、本文中に紹介した具体的研究内容については、逐一、参考文献を引用していない点、ご了解を得たい。
田代 孝二 TASHIRO Kohji
豊田工業大学大学院 工学研究科 極限材料専攻
〒468-8511 名古屋市天白区久方2-12-1
TEL:052-809-1790 FAX:052-809-1793
e-mail : ktashiro@toyota-ti.ac.jp
山口 登 YAMAGUCHI Noboru
住友化学㈱ 石油化学品研究所
〒299-0295 千葉県袖ヶ浦市北袖2-1
TEL:0436-61-5340 FAX:0436-61-5198
e-mail : yamaguchin@sc.sumitomo-chem.co.jp