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Volume 11, No.5 Page 286

理事長の目線

吉良 爽 KIRA Akira

(財)高輝度光科学研究センター 理事長 Director General of JASRI

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 7月のはじめにJASRIの国際諮問会議、JIACが行われた。前回の同じような会議、SACから6年振りである。このような国際的な諮問会議は、本来グローバルな性格を持つ科学の世界においては非常に重要であるが、前のSACの勧告は、会議が公式に認められたものではないということで行政には正式には受けいれられなかった。今回のJIACは、総合科学技術会議のお墨付きのもとに行われたもので、文科省はその結果を尊重する意向を示している。

 今回のJIACの時期は、たまたま改正された共用法の公布日の数日後というタイミングになってしまった。開催を決めたときには、法律の改正がこれほど急に進むとは予想もできなかったのである。理論上はこれまでと運営の枠組みが変わるわけで、しかも現在は不確定要素を抱えた経過措置の時期であるから、今後の運営について適切な提言を求めるには不適切な時期であった。今回の改革は行政的見地からなされたものであって、説明すべきわれわれも十分に理解できない部分を含んでいるのである。これは相当に悩ましい状況であった。

 しかし、この状況を別の角度から眺めてみて、行政や法律の議論が先行していた今回のSPring-8の制度変更を、学術や技術の議論にゆだねる最初の機会でもあることに気がついた。そこでこの視点に立って、今回のJIACでは、法律がどうだからこう対応すべき、などと言う細かい議論は避け、改めて、SPring-8は、あるいはSPring-8のような施設は学会、産業界から見てどうあるべきかというような大枠の議論を希望し、議論の席上でもそれに関する当方の主張を述べた。そのいくつかは、報告の中に盛り込まれているが、それはJIACがわれわれの主張を承認してくれたことだと理解している。国際的な諮問・評価会議の常として、その報告というのは、われわれを締め出して長い時間議論をして、委員自身が草稿を起こしたものであって、主催者側の事務局が準備した原案に手を入れたと言うようなものではないのである。われわれの主張も入っているなどというと、日本の常識では、JIACは馴れ合いだという批判が出かねないと思うので、あえて一言断っておく。

 8月から国の評価WGによるSPring-8の評価が始まっている。JIACの勧告はそこでも十分考慮されるものと期待している。順序はともかく、JIACと国の評価WGにおいてこの時期に議論が行われるのは大変時宜を得ていると思われる。行政的な議論が先行した新しい運営体制について、学術・産業の見地に立った十分な肉付けが行われることを強く期待している。現在の経過措置の時期が終わる来年3月までの間に、法律に基づいて大臣が定める「活動の基本的な方針」の改訂が行われることになっているが、JIACに始まる一連の議論がそこに十分に反映されることを祈っている。

 なお、JIACの正式な報告書は8月末頃に届くことになっている。その内容については、なるべく早く公開したいと思っている。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794