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Volume 11, No.4 Pages 281 - 284

5. 告知板/ANNOUNCEMENTS

最近のSPring-8 関係功績の受賞
Award-winning Achievements on SPring-8

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平成18年度「文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)」を兵庫県立大学大学院生命理学研究科 吉川信也教授 村本和優助教授 伊藤恭子助手が受賞


 この賞は我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究または発明を行った個人またはグループに与えられるものである。


受賞者紹介

 吉川 信也  兵庫県立大学大学院 生命理学研究科 教授

 村本 和優  兵庫県立大学大学院 生命理学研究科 助教授

 伊藤 恭子  兵庫県立大学大学院 生命理学研究科 助手

 

功績名:チトクロム酸化酵素のX線結晶構造の研究


 我々は肺から酸素を取り入れ、摂取した食物を燃焼させてエネルギーを得ている。摂取した食物を直接燃焼させてしまっては、熱が出るばかりで、細胞が利用できる形のエネルギーは得られない。そこで、細胞の中のミトコンドリアという器官には、呼吸鎖電子伝達系というしくみがあり、効率良くエネルギー変換を行っている。吉川教授らの研究グループでは、その過程で働いているチトクロム酸化酵素(呼吸酵素)というタンパク質の構造研究を行った。タンパク質の反応のしくみを明らかにするためには、まずその構造を決定することが不可欠である。そのためにはタンパク質の結晶を作成し、X線結晶構造解析により構造を決定する。ところが、呼吸酵素は脂質膜の中に埋まっていて、全く水に溶けないため、結晶を作ることが困難であった。そこで「ウシ心筋の呼吸酵素を膜から取り出し、それを水の中に安定に存在させる」方法を長い年月をかけて開発を行った。さらに、SPring-8を用いたX線結晶構造解析により、その立体構造を解明した。このタンパク質の反応のしくみを明らかにすることによって、生命理学の中心課題であるだけでなく、今後は医薬品の開発にも重要な貢献をすると期待されている。これらの功績が高く評価され、今回の受賞となった。

 

 (取材協力:兵庫県立大学大学院生命理学研究科 小倉尚志教授)




左から伊藤助手、吉川教授、村本助教授



平成18年度「文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)」を科学警察研究所 鈴木真一室長、滋賀県警察本部科学捜査研究所 鈴木康弘所長、科学警察研究所 笠松正昭研究員が受賞


 この賞は、我が国の社会経済、国民生活の発展向上等に寄与する画期的な研究開発若しくは発明であって、現に利活用されているものを行った個人若しくはグループ又はこれらの者を育成した個人に与えられるものである。


受賞者紹介

 鈴木 真一  科学警察研究所 法科学第三部 化学第三研究室 室長

 鈴木 康弘  滋賀県警察本部 科学捜査研究所 所長

 笠松 正昭  科学警察研究所 法科学第三部 化学第三研究室 研究員


功績名:科学捜査技術における超高感度分析法の開発


 近年、犯罪はますます、悪質・巧妙化する傾向にあり、犯行現場に目立った証拠となる物証が残されなくなっている。そのような状況の中で、犯行現場から採取された極微細な証拠物から犯罪を解明することが求められている。

 上記受賞者の方々は、このような困難な状況を打破すべく、従来の実験室における分析装置では分析困難な、非常に微細な種々の科学捜査資料(亜砒酸結晶、ガラス片、ハンダ片、銃弾片等)を、SPring-8のシンクロトロン放射光を用いて非破壊的に、かつ、超高感度で分析する手法を開発し、新しい科学捜査手法を確立した功績が高く評価され、今回の受賞となった。

 前述2件の授賞式は文部科学大臣の列席の下、4月18日に虎ノ門パストラルで行われた。




授賞式の写真



平成18年度「とやま賞」を独立行政法人日本原子力研究開発機構 片山芳則主任研究員が受賞


 「とやま賞」は、富山県の置県百年を記念し、富山県の将来を担う有為な人材の育成に資する目的をもって昭和59年に創設された。受賞対象者は、富山県出身者、または富山県内在住者とし、学術研究、発明発見(技術開発・応用を含む)、芸術文化、スポーツの分野において、顕著な業績を挙げ、かつ、将来の活躍が期待される人に対して、賞状、奨励金を贈呈して、その活動を奨励することを本旨としたものである。


受賞者紹介

片山 芳則   独立行政法人日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門

        放射光科学研究ユニット 放射光高密度物質科学研究グループ 主任研究員


 片山氏は放射光と高圧装置を組み合わせた実験手法を開発し、液体や非結晶の構造の系統的な研究を行った。特に、液体リンが二つの異なった構造を持ち、約1万気圧、1000℃で急激な構造変化を起こすことをX線回折その場観察法によって初めて見出し、この構造変化が大きな密度の変化を伴うこと、変化に伴い相分離が起きることを明らかにした。これは、純物質において液体-液体1次相転移が起きる例があることを初めて直接的に示したものである。この成果は、液体の変化は連続的であるというこれまでの常識を覆す画期的なものであり、科学の広い分野に大きなインパクトを与えた。近年盛んになってきている高圧下での液体・非結晶の構造研究の先駆的な業績と評価されたのが今回の受賞理由である。

 授賞式は平成18年5月11日(木)、富山国際会議場メインホールにて行われた。




片山氏



第4回産学官連携功労者表彰「日本学術会議会長賞」を独立行政法人日本原子力研究開発機構 西畑保雄副主任研究員、ダイハツ工業株式会社 田中裕久エクゼクティブ・テクニカル・エキスパートが受賞


 産学官連携功労者表彰は大学、企業等における産学官連携活動において、大きな成果を収め、あるいは先導的な取り組みを行う等、産学官連携の推進に多大な貢献をした優れた成功事例に対し、その功績が称えられるもので、「日本学術会議会長賞」は、学術の視点から特に顕著な功績又は功労があったと認められる人へ贈られる賞である。


受賞者紹介

 西畑 保雄  独立行政法人日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門

        放射光科学研究ユニット X線量子ダイナミックス研究グループ 副主任研究員

 田中 裕久  ダイハツ工業株式会社

        材料技術部 エクゼクティブ・テクニカル・エキスパート(ETE)


功績名:インテリジェント触媒の開発


 受賞理由は、置かれた環境の変化を自ら察知し自己修復する機能により原理的に劣化しないという特性を有する「インテリジェント触媒の開発」である。これは環境浄化技術であるとともに大量の貴金属の省資源を可能とする革新的技術でもある。原子力機構によるSPring-8を用いた新しい科学的原理の発見と、その原理に基づいたダイハツによる新しい工業製品の開発が行われたところに特長を有するもので、「インテリジェント触媒」は2002年10月に実用化されて以来、累積200万台以上の自動車に搭載されるに至った。更に、本事例の新たな高性能触媒活性原理に基づいた異なる分野への研究展開も期待されると評価された。

 授賞式は平成18年6月11日(日)に国立京都国際会館で開催され、日本学術会議の黒川清会長より賞状と盾が手渡された。




左から田中氏、西畑氏



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794