Volume 11, No.4 Pages 191 - 201
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
第1期パワーユーザー活動報告(1)
光励起分子および光誘起現象の放射光構造解析、有機 − 無機複合化合物の精密構造解析
Synchrotron Radiation Structure Analyses of Photo-Excited Molecules and Photo-Induced Phenomena and Accurate Structure Analyses of Organic-Inorganic Hybrid Compounds
(1)
〔採択時課題番号/ BL〕2003A0888-PU0(BL02B1)
〔課題名〕光励起分子および光誘起現象の放射光構造解析、有機-無機複合化合物の精密構造解析
〔実験責任者〕鳥海幸四郎(兵庫県立大学(採択時は姫路工業大学))
〔実施シフト〕
2003A0888- PU0 0シフト
2003B2888- PU1 51シフト
2004A3888- PU1 54シフト
2004B4888- PU1 48シフト
2005A5888- PU1 48シフト
2005B7001- PU1 42シフト
*************************計243シフト
〔支援課題数〕
2003A/ 0 2004B/ 4
2003B/ 4 2005A/ 3
2004A/ 2 2005B/ 2
〔BL調整来所件数〕
2003A/ 0 2004B/ 3
2003B/ 2 2005A/ 0
2004A/ 2 2005B/ 3
(2)研究目標・目的
光励起構造解析用に開発した低温真空X線カメラの特徴を生かした次の3つのテーマについて、新たな研究分野の開拓と、低温真空X線カメラを使った実験の高度化およびユーザー支援の推進をめざした。
1)光励起分子および光誘起反応活性種の単結晶構造解析の方法論の開発とその応用
物質に光を照射すると、物質中の原子や分子は光を吸収して電子励起され、化学反応、電子移動、発光、物性変化等の種々の状態変化を起こす。これらは、植物の光合成反応、光触媒反応、光化学反応などを理解する上で重要な情報を提供する。これまでは、主として分光化学的な手段でこれらの構造や電子状態が研究されてきた。しかし、これらの光化学反応や光誘起物性変化においては、電子状態の変化は分子・結晶構造の変化と連動して起こることが多く、化学反応や物性の制御・設計においては基底状態の分子構造や結晶構造のみならず、光励起に伴って起こる分子構造変化や光誘起反応活性種の構造を明らかにすることは重要と考えられる。
しかしながら、X線回折法を用いて結晶中の光励起分子の三次元構造を決定しようとする時、(1)結晶中に生成する光励起分子の割合は高々数%程度と予想される、(2)励起光は分子との相互作用が大きく、吸収極大波長の光は数ミクロン程度しか結晶中を透過しない、(3)光照射に伴い結晶試料の温度が上昇し、光励起に伴う構造変化と温度上昇に伴う分子構造変化が重なってしまう、(4)光励起に伴う構造変化が大きい場合には結晶格子が破壊される、などのことが予想され、通常の単結晶X線構造解析法ではきわめて困難と考えられる。これらの問題点を克服するためには、(a)試料温度をできるだけ低温にして励起寿命を長くし、結晶中の励起分子濃度を高くする、(b)できるだけ高輝度なX線を用い、S/N比の高い高精度な反射強度測定を行う、(c)レーザー光照射に伴う結晶試料温度の上昇を防ぐ、(d)光励起に伴う構造変化に対して、結晶格子が破壊されにくい結晶構造をもつ単結晶試料を作成する、などのことが必要である。ヘリウム温度領域でのX線回折実験では、真空断熱槽をもつクライオスタットタイプが通常用いられてきたが、X線窓材のベリリウムからのX線散乱によりS/N比の高い実験は困難であった。このため、イメージングプレート検出器ごと真空断熱槽中に入れた低温真空X線カメラ(図1)を開発し、ヘリウム温度領域でもベリリウム窓や空気によるX線散乱の影響がない、S/N比の高い高精度な反射強度測定の実現に成功した。また、入射X線やX線検出器およびX線回折計の時間的・空間的なゆらぎに由来する反射強度測定上の系統誤差をできるだけ小さくするために、光照射時と非照射時のX線回折像を1枚のIPフレーム上に繰り返し露光するIP多重露光法を開発し、高精度な反射強度測定を実現した。さらに、低温真空X 線カメラをSPring-8のBL02B1ビームラインに設置して、高輝度X線の利用を可能にして、複核白金錯体の光励起構造解析などに成功した[1]。
図1 低温真空X線カメラ
光励起に伴う構造変化をX線回折法で研究する場合、パルスレーザーによる光励起(pump)とX線回折像の検出(probe)を時間軸で制御して反射強度を測定する時分割X線回折実験(Pumpand probe stroboscopic experiment)が利用されることが多い。この方法では、光照射に伴って生じる準安定状態、励起状態、固相反応中間体の生成などの可逆的な光励起過程についての構造解析が可能である。しかし、現在用いられているX線検出器(CCDやIP)は時間情報が得られない蓄積型検出器のため、光照射後のある特定時間の構造を解析するには、X線源をパルス化して計測時間を認識する必要がある。また、放射光を用いても単バンチまたは極短時間に放射されるX線の強度は弱く、光励起-X線回折像の測定サイクルを十分な統計精度が得られるまで何回も繰り返す必要があり、三次元構造変化を解析するには通常の構造解析に比べ1桁以上の長時間測定が不可欠である。
一方、CWレーザーを用いて光励起定常状態で構造解析するという考え方もある。光照射後に生成する光励起状態を考えると、寿命の短い励起一重項状態と、そのあとに項間交差によって生成する寿命の長い励起三重項状態がある。したがって、光照射中に結晶中に存在する分子種を考えると、大部分は基底状態の分子であり、その中に少数の励起三重項状態が存在し、励起一重項状態やエネルギー失活途中の分子はほとんど存在しないと考えられる。低温真空X線カメラを用いて行っている光励起構造解析は、この様な考えに基づいている。CWレーザーを用いた光励起構造解析では、レーザー用シャッターと入射X線用シャッターを同期させて、光照射時と非照射時のX線回折像を繰り返し撮影する。光照射による単結晶試料の温度上昇に伴う、光照射時と照射していない時の温度差を減少させるため、シャッターの代わりに回転チョッパーを用いて、光照射のonとoffを高速に繰り返す方法へ変更した。このような 光励起構造解析の方法では、光励起直後の構造の時間変化を解析することはできないが、通常の構造解析の2倍程度の測定時間で光励起分子の構造を解析できるという大きな利点がある。この利点を生かして、できるだけ多くの物質系について光励起分子の構造を決定し、光励起分子構造から化学反応性や物性を解明する手法の確立をめざす。
2)機能性金属錯体集合体の構造-物性相関の解明へ向けた放射光構造解析法の確立と応用
金属錯体を構成単位とする一次元金属錯体は、有機伝導体や酸化物伝導体などとは異なり、金属イオンの最外殻のd電子に由来する“金属イオン周りの配位構造とd電子配置との間の強い相関(電子格子相互作用)や磁性”に特徴がある。また、σやπ電子のみが関与する有機化合物に比べて、金属錯体ではd電子が関係した配位結合や金属-金属結合など共有結合に比べて弱い結合が関係するため、分子構造は多様でフレキシブルであるという特徴がある。
最近、我々が合成したヨウ素架橋一次元複核白金混合原子価錯体Pt2 (EtCS2)4Iにおいて、部分酸化されていないPt(II)-Pt(III)混合原子価錯体にもかかわらず、室温付近では金属的挙動を示し、205K付近で金属-半導体転移を示すことを明らかにした。この種の一次元MMX型混合原子価錯体では、一次元鎖上の金属の原子価状態に関連した多様な原子価秩序配列が考えられる。低温真空X線カメラを用いてX線回折パターンを観測したところ、一次元鎖方向において平均構造の2倍周期に対応するX線散漫散乱が観測された。さらに、X線回折パターンの温度変化の観測から、X線散漫散乱の形状が2次元秩序に対応する線状(室温)から、1次元秩序に対応する面状(205K付近の相転移点近傍)、さらに3次元秩序構造に対応するブラッグ点(130K以下)へ変化することが明らかになった。また、X線散漫散乱が超格子反射に変化した48Kにおいて、弱い超格子反射を含めた構造解析に成功し、一次元鎖上の原子価秩序配列が交互電荷分極状態であることを明らかにした。さらに、相転移点前後での各原子の熱振動(温度因子)の温度依存性を結晶構造解析から求めたところ、架橋ヨウ素の一次元鎖方向の熱振動が相転移点で不連続に大きくなることを明らかにした。これらの結果から、原子価の揺動と秩序配列が架橋ヨウ素の熱運動と密接に関係していることを明らかにした[2,3]。
このように、金属錯体を構成単位とする低次元金属錯体では、固体物性を理解する上で金属のd電子に関係した構造ゆらぎやダイナミクスが重要な要素であることが多く、散漫散乱や超格子反射の測定および極低温での結晶構造解析が重要な意味を持つ。BL02B1の低温真空X線カメラは、液体窒素温度以下の低温においても、バックグラウンドの低いX線回折像を容易に測定できるため、このような研究には極めて有利と考えられる。この有利さを種々の物質系に適用して、構造-物性相関の解明へ貢献することをめざす。
3)微小結晶構造解析法の方法論の高度化と利用研究の推進
極微小結晶を用いた単結晶構造解析は、単に小さな単結晶しか得られない試料について構造解析を可能にするだけではなく、研究手段としてのX線構造解析法に本質的な変革をもたらす可能性がある。例えば、吸収極大波長の光は結晶表面から数ミクロンしか透過しないため、光励起構造解析ではできるだけ薄い結晶を用いて、高いS/N比で反射強度を測定することが重要である。微小結晶を用いた光励起構造解析が可能になれば、研究対象となる化合物が拡大し、一般的な研究手法として確立することが期待される。また、結晶相反応の構造解析の分野では、反応に伴い結晶が崩壊することが多く、現状では単結晶を保持した固相反応についてのみ解析されている(例えば[4])。一方、粉末結晶解析を用いた固相反応の解析例は多く、粉末サイズの単結晶を用いた構造解析が可能になれば、広範な結晶相反応について系統的で詳細な構造解析が可能となり、化学反応過程を構造科学的視点から研究する新しい分野が展開できると期待される。
微小結晶構造解析法を確立し、以下のような研究分野に貢献することを目標として研究を進める。
(a)短寿命光励起状態の構造解析:吸光度の大きな光吸収についても光励起構造解析が可能となり、種々の物質に ついて光励起構造解析を実現する。
(b)結晶相反応のリアルタイム構造解析:「単結晶を維持した幸運な構造解析」から「固相化学反応の系統的な構造化学研究の推進」を実現する。
(c)物性発現状態での構造解析:ミクロン領域の単結晶構造解析が実現すれば、結晶の一部分の構造解析が可能になり、ガス吸蔵反応などの結晶中を進行する反応についても構造の時間変化を追跡可能となる。また、強電場下での誘電体の構造解析や電流を流した状態での伝導体の構造解析など、電極が障害となって測定が困難な単結晶構造解析が、結晶試料の一部だけにX線を照射することによって比較的容易に反射強度測定が可能になり、種々の物性発現状態での構造解析が可能になる。
(d)機能性高分子化合物などの構造解析:機能性材料として重要な高分子化合物などは粉末構造解析しかできないことが多い。また、医薬品では実際に利用される粉末状態の構造が重要であることも多い。これらのニーズに答えるためにもできるだけ極微小結晶を用いた構造解析を実現する。
(3)研究・支援の内容
1)研究内容
(1-1)光励起分子の単結晶構造解析
種々の単結晶試料について光励起構造解析を行ってきたが、種々の困難な問題点の克服を通して、下記の2つの試料について光励起状態の分子構造について有意な結果が得られた。今後、光励起構造解析の方法論の改善により、種々の光励起構造解析に成功していくと期待され、化学反応や物性の理解に大きなインパクトを与えていくと考えられる。
(a)無限鎖構造を持つヨウ化銅(I)錯体の光励起構造解析
Cu(I)とハロゲンイオンがつくる菱形ユニットがdiimine配位子で架橋されて無限鎖構造をとる[Cu2X2 (PPh3)2(BL)]∞(X=halogen, BL=diimine)は、可視光を吸収して固体状態で強い発光を示す。この光励起過程は、共鳴ラマンスペクトルなどからCu(I)からdiimine配位子への電荷移動遷移に帰属されている。光励起過程を構造化学的に明らかにすることを目的として、[Cu2I2 (PPh3)2(4,4,-bpy)]∞について、BL02B1の低温真空X線カメラを用いて光励起構造解析を行った。光照射に伴う反射強度変化の測定は、100×80×30μmの単結晶を40Kに冷却し、時分割IP多重露光法により回転写真法で行った。励起光としてはHe-Cdレーザー光(442nm, 100mW)とグリーンレーザー(532nm,100mW)を用い、50Hzの回転チョッパーを用いて放射光とレーザー光を同期して断続させて光照射に伴う反射強度変化を測定した。光照射時と非照射時の反射データについて別々に構造解析した結果、結合距離には有意な差は見られなかった。しかし、光照射時の温度上昇の影響を補正した構造因子の変化分(|Fon||- Foff| )を係数とした差フーリエ合成図を計算したところ、吸収帯に対応した442nmで光励起した場合、{Cu2I2}ユニットの面上の銅原子とヨウ素原子の近傍に有意な電子密度の山と谷が観測された(図2)。一方、吸収帯から外れた532nmで光励起した場合には有意な山は観測されなかった。この励起波長依存性から、{Cu2I2}ユニットの面上で観測された電子密度変化は光励起に伴う構造変化に対応することが強く示唆される。光照射に伴う構造変化を定量的に解析するため、反射強度の変化量について最小二乗計算により励起分子の構造を求めたところ、光照射に伴って銅原子およびヨウ素原子の約1.1%が移動し、銅-ヨウ素間距離は約0.2Å短くなり、I…I,間距離も約0.6Å短くなるという結果が得られた。一方、温度を変えて結晶構造解析した結果、光励起構造解析で観測された構造変化と類似の傾向が見られた。このことより、光励起に伴う構造変化と温度上昇に伴う変化を如何に分離するかが重要であることが改めて明らかになった。現在、両者を分離する実験的および解析的な方法の確立を目指している(学会発表2を参照)。
図2 Difference Fourier Syntheses based on(|Fon|-|Foff| )exp(-iΦoff)of {Cu2(PPh3)2(4,4-bpy)}∞.
(b)トランス-ジハロゲノロジウム(III)錯体の光励起構造解析
可視光を吸収して長寿命のリン光を発し、励起状態ではRh-X距離が伸びると予想されるピリジンが配位したトランス-ジハロゲノロジウム(III)錯体について、時分割IP多重露光法をもちいた光励起構造解析を行った。光励起構造解析には、光励起に伴う錯体分子の構造変化により結晶格子が壊れるのを防ぐため、かさ高い陰イオン(BPh4-)を含むtrans-[RhX2(py)4(] BPh4)(X=Cl,Br,I)の平板状結晶を用いた。光照射に伴う反射強度変化の測定は、BL02B1の低温真空X線カメラを用いて、単結晶試料を26~37Kに冷却し、励起光としては442nm(He-Cdレーザー光)、488nm(Arレーザー)、532nm(グリーンレーザー)を使って、22 keV の放射光により行った。
[RhBr2(py)]4(BPh4)について吸収極大波長に近い442nmで光照射したデータについて、光照射に伴う構造因子の変化(|F on|-|F off|)を係数とした差フーリエ合成図を計算したところ、Rh-Br結合に垂直方向に正の電子密度が有意な山として現れた。また、光照射時と非照射時の反射強度データを用いた構造解析結果を詳細に比較したところ、トランス位に配位したBrの温度因子のみが光照射時において有意に大きくなっていることが明らかになった。これらの結果は、光励起に伴ってRh-Br結合が伸びるのではなく、結合軸に垂直な方向の振動がエンハンスされたことを示唆している。
[RhBr2(py)4](BPh4)について今回得られた結果は、以前に行った結果をほぼ再現している。また、[RhI2(py)4](BPh4)の532nmで光励起した場合の差フーリエ合成図においても同様な結果が得られている。これらの結果より、トランス位のBrの振動励起は、熱によるものではなく、光励起に伴う構造変化が観測できたと考えられる(学会発表10を参照)。
(1-2)機能性金属錯体集合体の構造-物性相関の解明へ向けた放射光構造解析
我々の研究室における機能性金属錯体集合体に関する放射光構造解析の主な成果に絞って述べる。放射光構造解析は、金属-配位子間の分子内電荷移動を利用した新しいタイプの一次元金属錯体の実現に大きく貢献した。
(a)中性混合原子価単一成分伝導性高分子錯体[Rh(C6Cl2O2(C4H9)2)(CO)2]∞の単結晶構造解析
ジカルボニルキレートロジウム(I)錯体はd8電子配置を持つ平面型構造であり、金属間の軌道の重なりによって一次元鎖構造をとることが知られている。このような系に配位子として酸化還元活性なジオキソレン配位子を導入し、金属のdZ2軌道と配位子のπ軌道のエネルギーレベルを近づければ、ロジウムから配位子への電子移動によって混合原子価状態になることが期待される。このような物質の構築を目的として、電子吸引性のハロゲンを導入した3,6-ジ-tert-ブチル-4,5-ジクロロ-1,2-ベンゾキノン(3,6-DBBQ-4,5-Cl2)を用いて、直接金属-金属結合を持つ一次元混合原子価錯体[Rh(3,6-DBDiox-4,5-Cl2)(CO)2]∞(Dioxは3,6-DBBQ-4,5-Cl2のセミキノネートあるいはカテコレート体を表す)の合成に初めて成功した。BL02B1の低温真空X線カメラを用いて56Kと室温で結晶構造解析を行った結果、図3のように、中性混合原子価単一成分伝導性高分子錯体であることを明らかにした。
XPSスペクトルからRh(I,II)混合原子価状態であることが示唆され、固体状態の電子スペクトルには15000cm-1 から赤外領域にかけて、Rh(I)←Rh(II)やπ*(SQ)← π*(Cat)の原子価間電荷移動遷移(IVCT)に帰属される複数の強いブロードな吸収が観測された。また、室温での電気伝導度は17~34Scm-1と中性錯体にもかかわらず非常に高い値を示しており、Rh(I,II)混合原子価状態であることを支持する。しかし、抵抗率の温度依存性からは半導体であることが明らかになった。
302Kでの結晶構造解析の結果、錯体分子はスタッガード配座で積層し、Rh-Rh結合により一次元鎖構造をとっていることが明らかになった。高伝導性を示す室温ではロジウムの一次元鎖はユニフォームではなく、錯体分子が一次元鎖内で三量体を形成していることが分かった(Rh-Rh距離: 三量体内2.8629(2)~2.8625(2)Å、三量体間2.8942(3)~2.8984(3)Å)。一方、56Kでは三量体が六量体へ変化することが明らかになった(Rh-Rh距離:六量体内2.8059(3)~2.8180(2)Å、六量体間2.8592(3)Å)。室温では三量体あたり一つのRh(II)が存在し、このRh(II)の不対電子が低温では対を形成するとともに二量化し、六量体となると考えられる(論文発表2を参照)。
図3 中性混合原子価単一成分伝導性高分子錯体[Rh(C6Cl2O2(C4H9)2)(CO)2]∞の構造。(a) 56Kでの結晶構造、(b) 一次元鎖構造。
(b)一次元混合原子価複核ニッケル(II,III)錯体のスピンーパイエルス転移の結晶構造解析
一次元MMX型複核金属錯体[M2(RCS2)4I]∞(M = Pt, Ni; R = アルキル基)は、複核金属錯体を構成単位とした形式的酸化数が+2.5のハロゲン架橋一次元混合原子価錯体であり、以下のような多様な原子価秩序状態が可能な一次元電子系として特徴づけられる。
平均原子価状態:-X-M2.5+-M2.5+-X-M2.5+-M2.5+-X-
電荷分極状態:-X―M2+-M3+-X―M2+-M3+-X-
電荷密度波状態:-X―M2+―M2+―X-M3+-M3+-X-
交互電荷分極状態:-X―M2+-M3+-X-M3+-M2+―X-
一次元MMX型複核白金錯体[Pt2(RCS2)4I]∞は、RCS2-配位子の側鎖のR基の長さを変えることによって一次元鎖間の相互作用が影響を受け、パイエルス転移を含む結晶構造と物性の顕著な変化を観測している。白金と同じd電子数と配位構造を持つニッケルの一次元MMX錯体[Ni2(RCS2)4I]∞を合成し、その構造と物性を調べた。SPring-8低温真空カメラを用いた26Kでの単結晶構造解析、X線回折像の温度変化の測定、および物性測定から、[Ni2(RCS2)4I]∞(R = Et,n-Pr)においては、白金錯体とは異なりパイエルス転移ではなく、スピン・パイエルス転移が観測されることを明らかにした。
[Ni2(RCS2)4 I]∞(R = Et,n-Pr)についてSQUIDを用いて磁化率の温度依存性を測定したところ、47K以下で磁化率の急激な減少が観測された。これはスピン・格子相互作用によって一つのスピンを持つ複核金属ユニットどうしが二量化して磁性を失うスピン・パイエルス転移と考えられた。BL02B1の低温真空X線カメラを用いて[Ni2 (EtCS2)4I]∞についてX線回折像を測定したところ、スピン・パイエルス転移に伴い低温相では二倍周期の格子長に対応する超格子反射が観測された。この超格子反射を含めて26Kでスピン・パイエルス相の単結晶構造解析を行ったところ、二倍周期構造である交互電荷分極状態に類似した一次元鎖構造を明らかにすることに成功した(学会発表3を参照)。
(1-3)微小結晶構造解析
構造未知の新奇化合物について、極微小な単結晶を用いた構造解析に成功している。キラルな有機化合物を付加したC60フラーレン誘導体は、極めて大きな円偏光二色性を示し、その絶対構造と円二色性スペクトルとの相関に興味が持たれていた。しかし、他のフラーレン化合物と同様に、極めて薄い板状結晶しか得られないため、厚さ2ミクロンの単結晶試料(100×75×2μm)について低温真空X線カメラを用いて反射強度を測定したところ、構造解析に成功した(図4)。この結果、C60フラーレンに付加したキラルな有機化合物の詳細な立体構造の解明に成功し、円偏光二色性と立体構造の相関の解明に貢献した(論文発表3を参照、東北大学多元研原田教授との共同研究)。
長鎖アルキル基をもつ脂肪族アルコールのキラルエステル化合物について、長波長X線(1.4546Å8.5keV))と低温真空X線カメラを組み合わせて、タンパク質並みの大きな格子定数(c=84.399Å)をもつ微小結晶(200×20×5μm)の構造解析(R=0.079)に成功した。このキラルエステルは、アセチレン体では光学分割が容易であるため、接触還元することにより長鎖アルキル基をもつキラルアルコールの合成が可能となる(東北大学多元研原田教授との共同研究)。
図4 キラルなフラーレン誘導体の結晶構造と構造解析に用いた微小結晶試料
2)ユーザー支援内容
以下のようなユーザー支援を行い、ユーザーの研究目的にあった低温真空X線カメラの利用、データの確実な取得、およびハイスループット化に対応した。
(2-1)ユーザー支援の具体例
ユーザー支援は、低温真空X線カメラの利用経験の浅いユーザーと頻繁に利用しているユーザーを区別して行った。利用経験の浅いユーザーに対しては、研究目的から測定試料の性質までユーザーと情報交換をした上で、測定方法の細かい指導から解析方法まで実験グループに加わって対応した。
一方、結晶学の専門家であり放射光利用経験も豊富であるが、低温真空X線カメラの性能を最大限に利用したX線回折実験を行うために、共同研究として一緒に実験をした例もある。物質・材料研究機構の山本昭二博士とP型正20面体対称Zn-Mg-Ho準結晶について、S/N比の高い回折像から多くの反射強度測定に成功し、山本氏により構造解析が進行中である。この結果は、山本氏により9-th International Conference onQuasicrystals(2005年5月、米国)で発表され、論文発表5として報告された。
海外ユーザーへの支援例としては、台湾国立大学のYu Wang教授グループへの支援がある。結晶解析の専門家であるが、極低温における光誘起スピン転移状態の構造解析という特殊な実験であったため、研究内容に立ち入って共同研究を行った。低温での光照射によって生成する準安定な鉄錯体の高スピン状態の構造解析に成功した。
利用頻度が高いユーザーに対しては、必要以上に研究内容に関与しないように、装置の利用に関する支援のみを行うようにしている。京都大学北川進教授のグループに対する支援がその例であり、現在ではユーザー支援はトラブル対応のみになっている。
(2-2)新規ユーザーの獲得に向けたPU課題での共同研究の推進
新規ユーザー獲得と放射光構造解析の必要性の高い研究に対応するため、積極的に共同研究を行っている。特に結晶構造解析のニーズが高い科学研究費特定研究「配位空間の化学」の研究メンバーと共同研究を行っている。一例として、筑波大学の大塩寛紀教授グループと共同で、三安定性鉄四核錯体について40Kで光誘起準安定状態の構造解析に成功している。このような研究成果を宣伝することにより、SPring-8を利用した結晶構造解析の利用促進を図っている。
(2-3)ハイスループット化に向けた問題点
ユーザー支援を行っていて明らかになってきたのは、低温真空X線カメラを用いた微小結晶構造解析の問題点である。第1の問題としては、放射光で測定可能な微小結晶の回折パターンを実験室系ではまったく測定できないことである。このため、測定可能な試料の選択に時間がかかったり、また放射光で回折像を測定して初めて双晶であることが明らかになって構造解析ができなかった例も少なくない。第2の問題としては、目的の結晶試料が結晶溶媒を含む場合、結晶の崩壊を防ぐためにガラスキャピラリー中に溶媒とともに封入するため、ガラスキャピラリーと溶媒からの散乱X線が大きく、低温真空X線カメラの特性が失われて良質な反射強度データが収集できないことである。最近注目されているホスト-ゲスト化合物の構造解析では日常的に起こる問題であり、このような結晶解析では、窒素冷気吹き付け型低温装置を附属した通常のX線回折計の方が有利である。京都大学の北川進教授グループの試料が一つの典型であり、真空中では結晶が崩壊することが多く、ガラスキャピラリー中に結晶を封入して測定しているため、十分な精度で構造解析できないことが多いと聞いている。これらの問題は、有機化合物や有機金属化合物の微小結晶構造解析のユーザーにとっては深刻な問題であり、SPring-8としての対応が期待される。
3)測定技術開発など、その他内容
主として以下の6点について、低温真空X線カメラの利用に関係した高度化を行い、光励起構造解析および微小結晶構造解析の精度向上およびハイスループット化への対応を行った。
(3-1)回転式チョッパーを用いた時分割IP多重露光法の開発(光励起構造解析の高度化)
X線構造解析から短寿命の光励起状態の分子構造を決定するとき、「光照射に伴う結晶全体の温度上昇に伴う構造変化」を、「光励起に伴う構造変化」から如何にして分離するかが、光励起構造解析を成功させる上での鍵になることが明らかになってきた。このため、小澤は回転式チョッパーを用いて励起光と入射X線を同期させて断続させ(50Hz程度)、光照射時と非照射時の反射強度変化を繰り返し測定する時分割IP多重露光法を開発した(図5)。この方法により、光照射時と非照射時の結晶試料の温度差を1/3以下に減少させ、構造因子の差(|Fon||- Foff| )を係数としたフーリエ合成図における温度の影響を小さく抑えることに成功した。この時分割IP多重露光法を用いることにより、光励起構造解析の信頼性が向上し、無限鎖構造を持つヨウ化銅(I)錯体の光励起構造解析などにおいて有意な結果を得ることが可能になった。
図5 回転式チョッパーを用いた時分割IP多重露光法
(3-2)種々のCWレーザーの導入と光励起構造解析における励起波長依存性の実験(光励起構造解析の高度化)
光励起構造解析では、解析する試料ごとに光励起する吸収帯の波長および吸光度が異なり、最適な波長のレーザーの利用が不可欠である。我々は、科学研究費補助金を利用して、He-Cdレーザー(325nm, 442nm)、Arイオンレーザー(488nm)、グリーンレーザー(532nm)および色素レーザー(600~700nm)を購入し、最適な波長の励起用レーザーを使用した光励起構造解析を行うようにしている。
(3-3)レーザー光照射系の改良(光励起構造解析の高度化)
低温真空X線カメラにおいては、単結晶試料へのレーザー光照射は光ファイバーを利用して、X線カメラのφ回転軸に平行に照射している。試料への照射強度を高めるため、また試料以外の部分を照射して試料温度を余分に上げないために、照射系を改良して、レーザー光をレンズで適切に集光して試料に照射している。
(3-4)長波長X線を利用した微小結晶構造解析の実現(微小結晶構造解析の高度化)
軽元素のみからなる有機化合物の結晶解析では、X線の散乱能の観点から、長波長X線の利用が微小結晶構造解析には有利である。このため、真空パスの整備を行うとともに、長波長X線の有効性の評価を行った。この結果、シチジン標準結晶では、1.55ÅのX線を使うと5ミクロン角の微小結晶でも構造解析が可能であることが明らかになった。また、1.45ÅのX線を利用して格子定数が約85Åの有機化合物の微小結晶(200×20×5μm)について構造解析に成功した。
(3-5)リブなしモノクロメータの試用、入射X線の集光度の高度化試験(微小結晶構造解析の高度化)
低温真空X線カメラを使った微小結晶構造解析において、従来から問題となっていた入射X線ビームの集光の向上に向けて、リブなしモノクロメーターを利用した集光度の高度化試験を行った。この結果、X線ビームの水平方向の広がりが3000μmから220μmと狭くなり、試料位置でのX線強度が1桁以上向上することが期待される。また、微小結晶構造解析では、結晶試料以外の支持棒等によるX線散乱がS/N比を下げる原因となっている。これらのことより、リブなしモノクロメータの導入により、データ精度の向上やハイスループット化が期待される。
(3-6)新しい解析ソフト(HKL2000)の導入(微小結晶構造解析の高度化)
SPring-8の高輝度X線を利用すると微小結晶についても構造解析が可能になる。しかし、これまでの低温真空X線カメラを利用した微小結晶構造解析から、微小結晶しか得られないものは一般的に結晶性が悪いことが多いことが分かってきた。このような場合、ブラッグ反射の半値幅が広く、一枚のIPフレームでは積算できない。このため、複数のIPフレームについても反射強度を積分できる新しい解析ソフト(HKL2000)を導入した。これにより、結晶性の悪い微小結晶の構造解析にも対応できるようになると期待される。
(4)研究成果目標達成度の自己評価
1)光励起構造解析について
複核白金(II)錯体(n-Bu4N)2H2[Pt2(pop)4](pop=H2O5P22-)についての光励起構造解析の成功の後、複核白金(III)錯体を含めて種々の金属錯体および有機化合物について光励起構造解析を試みてきた。しかし、レーザー光照射に伴う結晶試料の温度上昇、試料冷却に伴う結晶性の劣化、光照射に伴う結晶試料の崩壊などの困難な問題により、光励起構造に関する有意な結果がなかなか得られなかった。
しかし、2つの回転チョッパーを用いて放射光とレーザー光を同期させて断続させる時分割IP多重露光法の導入により、レーザー光の照射時と非照射時の結晶試料の温度差の低減に成功した。また、結晶試料の支持棒への接着方法についてノウハウが蓄積され、試料の冷却時によく見られた結晶性の劣化の問題もほぼ克服された。このような光励起構造解析における測定法の改善により、光励起構造解析の信頼性、再現性が高まった。このような背景のもと、無限鎖構造を持つヨウ化銅(I)錯体などについて有意な光励起構造変化を観測できるようになった。さらに、無限鎖構造を持つヨウ化銅(I)錯体については、光励起構造と光物性との相関も示唆され、単に“光励起構造が見えた”という段階から“光励起構造から光物性や光化学反応機構を解明する”段階に進みつつあると考えられる。
また、我々のCWレーザー光を用いた光励起構造解析法は、欧米で利用されている時分割X線回折実験(Pump and probe stroboscopic experiment)に比べて測定時間が短いため、多くの結晶試料について光励起構造解析することが可能であり、今後の光励起構造と機能・物性・反応性との相関の解明には有利と考えられる。
2)機能性金属錯体集合体の構造-物性相関の解明について
低温真空X線カメラの最大の特徴は、低温においても極めてバックグラウンドが低くS/N比の高いX線回折像が測定できることであり、散漫散乱や超格子反射の解析が構造-物性相関の解明に重要な意味を持つ場合、例えば低次元化合物の構造解析には大変有利である。この特徴は、一次元金属錯体の原子価秩序配列と物性相関に関する我々の研究においては極めて有効に機能した。また、物質・材料研究機構の山本昭二氏らの準結晶の構造解析、岡山大学の野上由夫氏やJASRI(現岡山大学)の池田直氏らのガンダルフィーカメラ法を利用したトポロジカル結晶の構造解析などにおいても顕著な成果を上げている。しかし、測定可能な最低温度が20K程度であるため、物性物理の研究者のニーズとのミスマッチがあった。この点に関しては、野上氏や池田氏らの努力により、10K以下まで測定可能な新しいクライオスタットが開発されており、今後の利用研究が期待される。
3)微小結晶構造解析について
厚さが2ミクロンと極めて薄い板状晶のキラルなフラーレン誘導体の構造解析にも成功しており、一定の評価は得られると思われる。しかしながら、BL02B1の光学ハッチのミラーおよびサジタルモノクロメーターによる入射X線の集光が十分ではないため、結晶位置でのビームサイズは3000(W)×300(H)ミクロン程度と広く、また強度分布にもモノクロメーターのリブの形状が現れている。このため、シチジン標準結晶を用いたテスト実験では、10ミクロン角程度の有機結晶では通常の解析精度が得られるが5ミクロン角程度になると構造は決定できるが解析精度は不十分という結果が得られている。
一方、リブなしモノクロメーターを利用した集光実験がJASRIの安田らによって行われ、結晶位置でのビームサイズが1桁小さくなり、微小結晶に照射されるX線強度が1桁以上強くなることが期待される。低温真空X線カメラでは、結晶を支持する棒に入射X線が当たらなければ試料の蛍光X線以外にバックグラウンドの原因はない。この意味からも、入射X線の集光度が向上すれば、偏向電磁石のビームラインにおいても数ミクロン角の有機結晶の構造解析をルーチン的に行える可能性がある。この方向での高度化を進めたい。
4)ユーザー支援について
低温真空X線カメラのユーザー支援については、化学関係は我々が対応しているが、物理関係はビームライン担当の池田直氏が主として対応し、ユーザーへのきめ細かな対応と、負荷の分散を行ってきた。
準結晶の構造解析など低温真空カメラの特徴が十分に生かされる研究においては、ユーザーの満足度は高い。一方、研究対象が金属錯体を用いたホスト-ゲスト化合物などの場合、結晶試料を真空中におくとゲスト分子が結晶中から抜けて結晶が崩壊するため、ガラスキャピラリー中に結晶試料を封入して測定されていることが多い。このような場合には低温真空カメラの特徴が十分に発揮されず、目的を達成できないことも多い。この問題に関連して、化学分野の研究者分布を見ると合成化学者が約半数と考えられ、これらの研究者は合成した化合物の構造決定のためX線構造解析を利用する頻度が増加している。しかし、結晶作成は一般に水溶液や有機溶媒から行うため結晶溶媒を含むことが多く、これらのユーザーのニーズに対応するためには低温真空X線カメラとともに、大気中で利用可能な微小結晶用のX線回折計の利用を選択できることが理想と考えられる。このような利用形態が実現すればさらにハイスループット化が進むと思われる。
最後に、パワーユーザー制度の利点を強調しておきたいと思う。光励起構造解析は、先駆的な研究の一つと考えられ、予想を超えた種々の困難さに遭遇したために信頼性のある結果を得るのに時間がかかった。しかし、パワーユーザー制度のお陰で、光励起構造解析という新しい実験手法の開拓に十分な時間をかけることが許された。このため、光励起構造解析で信頼性のある実験結果が得られるようになったと思われ、大きな意義があったと考えられる。
(5)成果リスト
(論文発表)
1.M.Mitsumi,S.Umebayashi,Y.Ozawa,M.Tadokoro,H.Kawamura and K.Toriumi“Rational Syntheses of Linear Chain Rhodium(I)-Semiquinonato Complexes Using Redox Reactionof Rh4(CO)12 Cluster with o-Benzoquinone”,Chem.Letters 33(8),970-971 (2004).
2.M.Mitsumi,H.Goto,S.Umebayashi,Y.Ozawa,M.Kobayashi,T.Yokoyama,H.Tanaka,S.Kuroda and K.Toriumi,“A Neutral Mixed-Valent Conducting Polymer Formed by Electron Transfer between Metal d and Ligand π Orbitals”,Angew.Chem.Int.Ed.,44,4164-4168 (2005).
3.S.Kuwahara,K.Obata,K.Yoshida,T.Matsumoto,N.Harada,N.Yasuda,Y.Ozawa and K.Toriumi,“Conclusive Determination of the Absolute Stereochemistry of Chiral C60 Fullerene cis-3 Bis-Adducts by X-ray Crystallography and Circular Dichroism”,Angew.Chem.Int.Ed.,44,2-5(2005).
4.M.Tadokoro,Y.Ozawa,M.Mitsumi,K.Toriumi and T.Ogura,“Raphide Crystal Structure in Agave Tequilana Determined by X-ray Originating from Synchrotron Radiation”,Chem.Letters 34(2),236-237(2005).
5.H.Takakura,A.Yamamoto,T.J.Sato,A.P.Tsai,Y.Ozawa,N.Yasuda and K.Toriumi,“Ab Initio reconstruction of p-type icosahedral Zn-Mg-Ho quasicrystal structures”,Phil.Mag.86, 621-627(2006).
(主な学会発表)
1.M.Mitsumi,H.Goto,S.Umebayashi,Y.Ozawa,M.Tadokoro and K.Toriumi,“Novel Linear Chain Mixed-Valence Rhodium-Dioxolene ComplexFormed by Frontier Orbital Control”,ICCC36(México,2004)O6.06.
2.Y.Ozawa,S.Yoshida,M.Mitsumi,K.Toriumi,N.Yasuda,TK.suge,H.Araki and Y.Sasaki,“Photo Excited State Crystallography of Iodo-bridgedDicopper(I)Complex”,20th Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography,Florence,2005/8.
3.K.Toriumi,M.Mitsumi,Y.Yoshida,A.Kohyama,N.Ikeda,N.Yasuda and Y.Ozawa,“Spin-Peierls Transition in Halogen-Bridged Mixed-Valence MMX Chain Compounds”,20th Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography,Florence,2005/8.
4.M.Mitsumi,H.Goto,S.Umebayashi,Y.Ozawa and K.Toriumi,“Single-Component Molecular Conductor Formed by Electron Transfer between d and π Orbitals”,20th Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography,Florence,2005/8.
5.N.Yasuda,Y.Ozawa,K.Toriumi,S.Kuwahara,K.Obata,K.Yoshida,T.Matsumoto and N.Harada,“Microcrystal X-ray Analysis using LTV Camera at SPring-8 BL02B1 Beamline”,20th Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography,Florence,2005/8.
6.Y.Wang,C.F.Sheu,I-J.Hsu,Y-C.Lin,B.N.Wang,K.Toriumi and Y.Ozawa,“Pump and Probe the Structure and Electronic Configuration of LIESST State”,20th Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography,Florence,2005/8.
7.S.Yoshida,Y.Ozawa,M.Mitsumi,K.Toriumi,N.Yasuda,K.Tsuge,H.Araki and Y.Sasaki,“X-ray Structure Analysis of Photo Excited State of Iodo-Bridged Dicopper(I)Complex”,First International Symposium on Chemistry of Coordination Space-ISCCS 2005,Okazaki,2005/11.
8.M.Mitsumi,H.Goto,S.Umebayashi,Y.Ozawa,M.Kobayashi,K.Toriumi and T.Yokoyama,“Neutral Mixed-Valent Conducting Polymer Formed by Electron Transfer between Metal d and Ligand π Orbitals”,First International Symposiumon Chemistry of Coordination Space-ISCCS 2005,Okazaki,2005/11.
9.M.Mitsumi,H.Goto,S.Umebayashi,Y.Ozawa and K.Toriumi,“Single-Component Molecuar Conductor Formed by Electron Transfer between Metal d and Ligand π orbitals”,The 2005 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies(Pacifichem),Honolulu,USA,2005/12.
10.合内佑紀、長谷川三紗、小澤芳樹、満身稔、鳥海幸四郎、安田伸広、“ヨウ素が配位したロジウム(III)ピリジン錯体の光励起構造解析”、日本結晶学会年会(姫路、2005).
参考文献
[1]Y.Ozawa, M.Terashima, M.Mitsumi, K.Toriumi, N.Yasuda, H.Uekusa and Y.Ohashi: Chem. Letters 32(2003)62-63.
[2]M.Mitsumi, T.Murase, H.Kishida, T.Yoshinari, Y.Ozawa, K.Toriumi, T.Sonoyama, H.Kitagawa and T.Mitani: J. Am. Chem. Soc., 123(2001)11179-11192.
[3]M.Mitsumi, K.Kitamura, A.Morinaga, Y.Ozawa, M.Kobayashi, K.Toriumi, Y.Iso, H.Kitagawa and T.Mitani: Angew. Chem. Int. Ed., 41(2002)2767-2771.
[4]M.Kawano, T.Takayama, H.Uekusa, Y.Ohashi, Y.Ozawa, K.Matsubara, H.Imabayashi, M.Mitsumi and K.Toriumi: Chem. Letters 32(2003)922-923.