Volume 11, No.2 Page 37
理事長の目線
先日3者体制から2者体制への移行があって、2者体制がうまく動き始めたところであるが、今度は「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」(いわゆる共用促進法)の改正が進行中である。今回行われるのは手続き的には法律の一部改正であるが、その中には名称を「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に改め、対象として、特定高速電子計算施設(次世代スーパーコンピュータ、通称、ペタフロップス計算機)をあらたに含めていて、私の目には換骨奪胎と映る。いずれ他の大型施設への適用も考慮した拡張の第1歩とのことである。大型計算機は国の科学技術施策の中心の一つであり、その予算化の土台となるとあって、予算関連法案としてすでに閣議了解ずみで、今国会の審議を経て7月1日から施行予定と言う段取りが出来ていて、SPring-8の18年度の予算はそれを前提として組まれている。
共用法はSPring-8の共用体制の根幹になるもので、これが改正されれば当然SPring-8の運営およびJASRIの業務に変化が起きる。現行の共用法では、SPring-8の供用業務、支援業務、運転維持管理などを法律によって指定されたJASRIが行っているが、改正された法律では、対象とするのが利用者選定業務と利用支援業務だけとなり、国は、これらを唯一の指定機関ではなく、資格を満たして登録した登録機関(複数がありうる)に行わせる。JASRIは当然登録機関への登録を行うが、法律施行時の経過措置として、平成18年度いっぱいは、JASRIがみなし登録機関となることが決まっている。一方、施設の運転維持管理については、現行法では理研がJASRIに委託すべし、と決められているが、新法のもとでは誰がこの業務を行うかは理研の裁量に委ねられる。理研が外部に委託する場合、委託先は上記の登録機関である必要はない。言いかえると、JASRIが登録機関としての業務を行っていたとしても、理研はJASRI以外の機関に運転、維持管理を委託することが可能である。
この改正において、現在、供用業務と書かれているものが利用者選定業務と変っている。これは、利用者(課題)選定の責任が登録機関(JASRI)にあることをより明確にしたものである。これに伴って、選定委員会を設置する事が義務付けられているが、現行法にある諮問委員会は新法には記載されていない。したがって、今の諮問委員会の下の課題選定委員会という構成を変えて、新しい選定委員会を早急に設立する必要がある。
この法律は、「SPring-8は本来所有者の理研が運営すべきものであるが、理研は共同利用部分の利用者でもあるので、利用の公平性、中立性を担保するために、利用選定は別機関が行う」という趣旨で作られている。この平等・中立の原則の故に、課題選定の使命を負うJASRIの職員は、普通の共同利用には応募する事は出来ず(理研を排除したときの理屈)、代わりにJASRI職員用に設けられた枠を利用する。これで一応の辻褄は合うのであるが、外部利用者とJASRI職員の共同研究という研究上有効な手段は、平等・中立の原則に立つとむしろ否定されてしまい、それを実行するには何らかの工夫が必要になる。このような問題は、これから実際の作業を進めて行くうちにいろいろと出てくるであろう。
実際のJASRIの業務は、これから国が策定する「共用の促進に関する基本的な方針」に基づいて行われる事になる。その策定において成果の向上、利用の便宜性に対する考慮が十分なされることを願っている。