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Volume 10, No.6 Page 384

4. 告知板/ANNOUNCEMENTS

最近のSPring-8関係功績の受賞
Award-winning Achievements of SPring-8

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「文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)」を大阪大学大学院基礎工学研究科菅滋正教授、今田真助教授、関山明助手のグループ及び独立行政法人理化学研究所播磨研究所北村英男主任研究員が受賞


 この賞は我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究または発明を行った個人またはグループに与えられるものです。今回、2件の受賞につきまして以下に紹介します。


受賞者紹介

 菅 滋正 国立大学法人大阪大学大学院基礎工学研究科教授

 今田 真 国立大学法人大阪大学大学院基礎工学研究科助教授

 関山 明 国立大学法人大阪大学大学院基礎工学研究科助手


 業績名:広エネルギー電子による高分解能光電子分光装置の研究


 菅氏、今田氏、関山氏のグループはSPring-8で最初に建設予算がおりた4本のビームラインのうちBL25SUビームラインならびに3つの実験ステーションについて利用者の力で建設するようにとの境界条件の中で設計建設調整を行い、これらを用いた物性研究で世界に誇る成果をあげられたものです。光源のtwinヘリカルアンジュレーターは理化学研究所の北村英男氏のグループによって建設され、ビームライン光学系については日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の斉藤祐児氏を中心に菅研究室の院生を常駐させ、1999年に光学系までは立ち上がりました。

 このビームラインの第1ステーションとして光電子分光系を設置・調整し、強相関電子系物質中の電子状態の測定に、220eVから1500eVの高分解能の軟X線放射光を用いる事で、これまでの表面敏感な手法では観測する事の出来なかった固体内部のバルク電子状態を世界に先駆けて測定できる装置を開発し、強相関電子系の研究に画期的なブレークスルーをもたらしたものです。さらにこれまで不可能とされてきたバルク敏感な軟X線励起角度分解光電子分光にも世界で初めて成功し現在に至るまで先端研究をリードしている事も高く評価されました。

 さらに1999年には第4ステーションに光電子顕微鏡(PEEM)を持ち込み磁気円偏光2色性と数eVの低速2次電子を利用した測定によりナノ磁性研究の先駆的研究も行い多数の論文を発表してきた。これらの業績がわが国の科学技術の進歩に著しく貢献したことが評価され、今回の受賞となりました。




写真は左から今田助教授、菅教授、関山助手



参考文献

1.Probing bulk states of correlated electron systems by high resolution resonancephotoemission Nature 403,pp.396-398(2000).

 A.Sekiyama,T.Iwasaki,K.Matsuda,Y.Saitoh,Y.Onuki and S.Suga.

2.High energy angle resolved photoemission spectroscopy probing bulk correlatedelectronic states in quasi-one-dimensional V6O13 and SrCuO2 Phys.Rev.B 70, 155106-1~7 (2004).

 S.Suga,A.Shigemoto,A.Sekiyama,S.Imada,A.Yamasaki他

3.Mutual Experimental and Theoretical Validation of Bulk Photoemission Spectra of Sr1-xCaxVO3

 Phys.Rev.Lett.93,156402-1~4(2004).

 A.Sekiyama,H.Fujiwara,S.Imada,S.Suga他

4.Quantitative X-Ray Magnetic Circular Dichroism Microspectroscopy of Fe/Co/Cu(001)Using a Photoemission Microscope

 J.Appl.Phys.87,pp.5747-5749(2000).

 W.Kuch,J.Gilles,S.Kang,F.Offi,J.Kirschner,S.Imada and S.Suga



受賞者紹介

 北村 英男 独立行政法人理化学研究所播磨研究所主任研究員


 業績名:真空封止短周期アンジュレータの研究


 北村英男氏はこれまで東大物性研究所、高エネルギー物理学研究所、理化学研究所を歴任し、放射光加速器科学の研究、とくに挿入光源の開発において国際的な貢献をされてきました。良く知られるように、バイオ科学や創薬産業において不可欠なタンパク質構造解析は、電子ビームエネルギーが6~8GeV級のSPring-8等大型放射光施設で得られる高輝度X線が用いられてきました。しかしこの種の施設は世界に3箇所しかなく、ビームエネルギーが低い中規模施設においては、従来のアンジュレータからの放射光エネルギーは数keV以下に限られていたため、10keV以上の高輝度X線が発生できる短周期アンジュレータの研究開発への要望が高まっていました。短周期アンジュレータを実現するには、永久磁石を超高真空内に設置し磁石間ギャップを狭くすればよいが、永久磁石からのガス放出、電子ビームによる永久磁石の発熱、永久磁石の熱減磁や放射線減磁といった問題によりこれまで実用化には至りませんでした。

 北村氏はこれらの問題についてまず、多孔性の永久磁石材表面へコーティングを施すことによって脱ガスが抑制できることを明らかにし、機械的強度に優れた窒化チタン(TiN)がコーティング材として最適であることを見出しました。また、電気伝導性に優れた銅箔にニッケルメッキを施した、永久磁石との熱接触性のよい金属シートで磁石列表面を覆うことにより、電子ビームの鏡像電荷による発熱を減少させる方法を考案されました。さらに、最適な条件下で熱処理した永久磁石が、放射線や熱に対して優れた耐減磁特性を示すことを見出し、熱処理方法の開発などを行って、従来4~6㎝であった周期長を1から3㎝短周期化した真空封止短周期アンジュレータの実用化に成功しました。




上記のそれぞれの授賞式は文部科学大臣の列席の下で4月20日に虎ノ門パストラルで行われました。



 本成果により、他の同種大型X線放射光施設と比較してSPring-8のX線輝度が3倍~1桁高くなっただけでなく、ビームエネルギーが3GeV以下の中規模施設においても高輝度X線を利用した実験研究が可能になりました。

 現在、世界各地の中型放射光施設において本真空封止アンジュレータが導入され始め、いずれの施設においても、タンパク質構造解析に基づく医薬品開発のための基盤装置として期待されています。北村氏の研究はこのように世界の放射光科学の進歩に極めて大きな貢献を果たしたので科学技術賞にふさわしいものです。


参考文献

1.“Present Status of SPring-8 Insertion Devices”,Journal of Synchrotron Radiation,Vol.5,p.184-188,May(1998).

2.“Recent Trends of Insertion Device Technology for X-ray Sources”,Journal of Synchrotron Radiation,Vol.7,p.121-130,May(2000).



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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