Volume 10, No.2 Pages 63 - 80
1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
第15回(2005A)利用研究課題の採択について
The Proposals Accepted for Beamtimes in the 15th Public Use Term 2005A
財団法人高輝度光科学研究センターでは、利用研究課題選定委員会による利用研究課題選定の結果を受け、以下のように第15回共同利用期間(2005A)における利用研究課題を採択した。
1.募集及び選定・採択日程
〔募集案内・募集締切〕
(長期利用課題)
平成16年9月13日 長期利用課題の公募について
SPring-8ホームページに掲示
10月13日 長期利用課題募集締切り
(一般課題および重点領域課題)
平成16年11月15日 一般課題、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点トライアルユース課題の公募についてSPring-8ホームページに掲示
利用者情報(Vol.9, No.6, 2004.11)に掲載
平成17年1月5日 一般課題、重点ナノテクノロジー支援課題、および重点トライアルユース課題募集締切り(午前10時利用業務部必着)
(国内からの応募は平成17年1月4日消印有効)
(外国からの応募は平成16年12月20日消印有効)
〔一般課題、重点領域課題、および長期利用課題の課題選定および採択・通知〕
平成16年10月18日~25日 長期利用分科会による長期利用課題の書類審査
11月2日 長期利用分科会による長期利用課題の面接審査
平成17年2月8日 ナノテク支援課題選定委員会およびトライアルユース課題選定委員会による重点領域課題審査
2月9日~10日 分科会による一般課題審査
2月10日 第35回利用研究課題選定委員会による課題選定
2月24日 機構として採択し、応募者に結果を通知
2.公募状況
今回の公募では、一般利用研究課題の応募として644件、重点研究課題の応募として234件、これらを合わせた総応募件数として878件の課題応募があり、A期における応募数としては過去最高であり、B期とあわせた全体でも過去3番目の応募数であった。採択件数については、一般利用研究課題の採択として380件、重点研究課題の採択として167件、これらを合わせた総採択件数として547件となった。第1回から今回の公募までの、分野別及び所属機関別の応募件数及び採択件数を表1に示す。また、今期で4回目となる重点研究課題の内、重点領域指定型については表2に示す通り3領域で課題を公募した。但し、重点タンパク500課題については今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(192シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する方式で実施するので別枠にして示す。表2では、一般利用研究課題についても内訳を示している。表1のデータの内、応募・採択の推移および研究分野別・所属機関別分類の推移をそれぞれグラフ化して、図1および図2に示す。図1において、採択件数は第12回(2003B)の621件をピークにして、第13回(2004A)の595件、第14回(2004B)の562件、および第15回(2005A)の547件と33件から15件の範囲で毎年漸減してきている。第12回(2003B)から第13回(2004A)は配分シフト枠が5%程度増えているにもかかわらず採択件数が26件減少しているのは、採択課題の平均シフトが増加していることと課題選定の枠外である重点パワーユーザー課題のシフト数が増えた事が主な理由と思われる。第13回(2004A)から第14回(2004B)は重点タンパク500課題の応募時課題数が減少(但し、これは使用する予定のビームラインがこれまでの3本から2本となったことによるもので重点タンパク500課題用全シフト枠に変更はなく、重点タンパク500課題の実施の内容は従来通りである)したことと課題選定の枠外である重点戦略課題が新規に開始されたことが主な理由と思われる。第14回(2004B)から第15回(2005A)は一般課題の採択数が10件減少したことと重点戦略課題の枠がさらに増えたことが主な理由と思われる。
ここ数年、1年の前半の共同利用期間(A期)では応募が少なく、反対に後半(B期)では大幅に増加する傾向が続いていたが、今回はA期では過去最高で最近のB期並みの応募があった。これは、平成17年度前半はPFのユーザー利用が停止の予定であることも影響している可能性がある。連続する2回の公募状況を足し合わせ1年単位でまとめたのが次のリストである。応募課題数及び採択課題数は、これまで年とともに増加してきたが最近の2年間は横ばいとなっている。今後新しい共用ビームラインが増えて一般課題のシフト枠が増えることがなければ、頭打ち状態もしくは重点研究課題が増えればむしろ減少する可能性もあると思われる。
応募課題数 採択課題数
第14回+第15回(平成16年9月~17年8月) 1,764 1,109
第12回+第13回(平成15年9月~16年7月) 1,710 1,216
第10回+第11回(平成14年9月~15年7月) 1,484 1,035
第8回+第9回 (平成13年9月~14年7月) 1,262 977
第6回+第7回 (平成12年10月~13年6月) 1,084 789
3.利用期間と利用対象ビームライン
これまで、年間の前期と後期の共同利用の利用時間に長短のアンバランスが通常以上に大きくなることを緩和することに努めてきた。今回は昨年の台風被害修理のため平成17年1月から3月まで蓄積リングの運転は行わなかったので、2005A期は平成17年4月の第3サイクルから第5サイクルまで(平成17年4月から平成17年8月まで)とし、この間の放射光利用時間は約240シフト(1シフトは8時間)となっている。このうち共同利用に供されるビームタイムは共用ビームライン1本あたり192シフトとなる。
今回の募集で対象としたビームラインは前回同様総計34本で、その内訳は、共用ビームライン25本(R&Dビームライン3本を含む)とその他のビームライン9本(原研ビームライン4本、理研ビームライン4本、及び物質・材料研究機構ビームライン1本)であった。
4.採択結果
今回の採択結果は、一般利用研究課題と重点研究課題を合わせた総件数では応募878件に対し採択547件であり、採択された課題(重点タンパク500課題(シフト枠は192シフト)を除く)のシフト数では表3に示すように要求4,596シフトに対し配分3,890シフト(平均のシフト充足率85%)であった。また、採択された課題の平均シフト数は8.7であり前回の9.1よりやや少ない。今回の共同利用の対象としたビームライン毎の応募・採択課題数、課題採択率、採択された課題の要求シフト数・配分シフト数、シフト充足率、平均シフト数を表3にまとめて示す。
重点研究課題の内「重点ナノテクノロジー支援」は、今回、応募課題数111件に対して採択課題数が52件で採択率47%となり、一般利用研究課題の成果非専有課題における平均採択率53%よりさらに厳しくなっている。「重点トライアルユース」は、応募課題数21件に対して採択課題数が13件で採択率62%となった。また、「重点タンパク500」は、今回採択された課題を重点タンパク500シフト枠(192シフト)内で個別に調整して実施1ヶ月前までにシフト配分を確定する方式で実施する。
今回の応募課題数と採択課題数を、研究分野と実験責任者の所属機関別にまとめたものを表4に示す。なお、重点タンパク500課題は全応募課題を実施シフト枠(今回は192シフト)の範囲内で調整して実施する方式を採用しているので、採択率等を示すときは基本的に除外して示す。
長期利用(通常課題の実施有効期限が6ヶ月(一部分科会では1年課題もある)であるのに対し、3年間にわたって計画的にSPring-8を利用することによって顕著な成果を期待できる利用)では、表2に示すように今回の公募で4件の応募があり1件が採択された。なお、審査は外部の専門家を含む長期利用分科会での書類審査、及び面接審査の2段階で行われ、面接審査は3件に対して行った。
成果専有利用としては、表2に示すように民間から9件、国立研究機関等から4件、国立大学法人から2件、合計で15件の応募があった。これらの課題について公共性・倫理性の審査と技術的実施可能性及び実験の安全性の審査が行われ全件採択された。
萌芽的研究支援は、将来の放射光研究を担う人材の育成を図ることを目的として、萌芽的・独創的な研究テーマ・アイデアを有する大学院学生を支援するものである。平成17年度の2005A期に放射光を利用する萌芽的研究支援による利用研究課題を一般利用研究課題の成果非専有課題に含めて募集・選定した。大学院学生が実験責任者として応募できる初めての試みであるが、課題の選定はあくまで他の一般利用研究課題と同じとして扱って選定された。2005A期は応募40件に対して採択は18件であった。
5.民間企業の利用と産業利用
表4に示すように今回の公募で、民間からは各研究分野に合わせて83件の応募があり、53件が採択された(採択率64%)。前回が応募78件で採択58件(採択率74%)であったので、今回は応募数が少し増加し、採択数・採択率は少し減少した。産業利用分野の課題は、今回もBL19B2(産業利用)に加えて、BL01B1(XAFS)、BL13XU(表面界面構造解析)、BL46XU(R&D(2))等合計11本のビームラインで産業利用分野課題が採択された。これにより、産業利用分野の課題は、各研究機関から合わせて82件の応募に対して45件の採択で、採択率が55%となっている。最後に、今回の民間からもしくは産業利用分野いずれかへの応募総数は116件で、採択総数は66件(採択率57%)であった。前回の民間または産業利用の応募は105件で採択が67件(採択率64%)であったので、今回は応募件数が増加し選定件数が前回並みで採択率が前回より低下したが、重点タンパク500課題を含まない平均採択率(57%)と同じ採択率となっている。
6.課題選定審査における留意点
(1)これまでと同じく、平和目的の確保、一般利用研究課題の占める割合が全放射光利用時間の50%以上となること、選定した課題について高いシフト充足率を確保すること、および挑戦的な課題の確保を念頭においた審査を行った。
(2)1年課題はA期には受け付けないので、2005A期は2004B期採択の17件に4本のビームライン合わせて208シフトを割り当てた。今後も4本のビームラインでB期のみ1年課題を受け付ける方式で継続する。
(3)生命科学分野の留保ビームタイムは、2本のビームラインを合わせて18シフト確保した。産業利用分野の留保ビームタイムは、BL19B2(産業利用)で一般課題と重点トライアルユース課題を合わせて93シフト確保した。
(4)成果の審査へのフィードバックについては、平成16年秋のSPring-8シンポジウムでアナウンスした。これに従い、2005A期課題募集案内では「過去に利用実績のある申請者に対し、成果の公表状況を評価し、課題選定に取り入れる」と記述し、以下の評価方法を試行した。なお、産業利用分科は現在成果の中身を検討中のため今回試行を見送りとした。
1)対象者の範囲は、ビームライン毎に1論文をまとめるのに必要な標準のビームタイムを割り出し、各申請ビームラインで過去3年間(今回は2001A-2003B)にその2倍以上のビームタイムを実験責任者として利用した申請者とした。ただし、立ち上げなどに使ったビームタイムは除いた。
2)成果の公表の対象は、JASRIに登録された原著論文の件数とした。
3)評価方法は、申請者が申請ビームラインで実験責任者として過去に実施した課題の成果の登録が0の場合は減点し、利用シフト数に対して標準の2倍以上の論文登録がある申請者に加点した。
4)試行の結果としては、減点の対象者は1.7%、加点の対象者は2.6%となり当初目標の範囲内であった。次回試行に向けて問題点を検討していくこととした。
7.採択課題
表5に今回採択された利用研究課題の一覧を示す。表5-1は一般利用研究課題の分であり、表5-2から表5-4は重点研究課題の分である。
詳しくは、PDFファイルをご参照下さい。