ページトップへ戻る

Volume 19, No.1 Pages 42 - 43

4. SPring-8通信/SPring-8 COMMUNICATIONS

2010A期 採択長期利用課題の事後評価について
Post-Project Review of Long-term Proposals Starting in 2010A

(公財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

pdfDownload PDF (615 KB)

 

 2010A期に採択された長期利用課題について、2012B期に3年間の実施期間が終了したことを受け、第46回SPring-8利用研究課題審査委員会長期利用分科会(平成25年10月)による事後評価が行われました。
 事後評価は、長期利用分科会が実験責任者に対しヒアリングを行った後、評価を行うという形式で実施し、SPring-8利用研究課題審査委員会で評価結果を取りまとめました。以下に評価を受けた課題の評価結果を示します。研究内容については本誌7ページの「最近の研究から」に実験責任者による紹介記事を掲載しています。

 

課題名 次世代光ストレージ開発のための相変化微粒子材料のピンポイント構造計測
実験責任者(所属) 山田 昇(京都大学)
採択時課題番号 2010A0030
ビームライン BL40XU
利用期間/配分総シフト 2010A~2012B/216シフト

 

 

〔評価結果〕
 本長期利用課題は、ハードディスクドライブ(HDD)と相補的に利用される相変化光ディスクの実用化をめざし、高速・高密度記録用ナノ構造体の作製とその相変化過程を計測することで、高速・高密度記録の原理検証を行う事を目標としている。
 急速に増大するデジタルデータの記録システムとして、長期保存、省エネルギー、低コストの観点から、HDDと相補的に光ディスクを活用するシステムが期待されている。一方で、光ディスクの活用には、読み書き速度、容量に課題が残されていた。本長期利用課題では、この問題を解決する新しいデバイス構造を提案し、その有効性を放射光ピンポイント構造計測で実証した。課題は、1)デバイス構造の設計・作製、2)検証のための放射光ピンポイント構造計測システムの最適化、3)放射光ピンポイント構造計測による原理検証で構成されている。
 デバイス構造の設計・作製では、現在の光ディスクの課題である読み書き速度、容量を改善するナノドット構造を提案した。シミュレーションによって、20 nmナノドット構造体が実用デバイスとしての仕様を満たすことを確認し、ナノ構造体の作製に成功した。原理検証実験にはGe10Sb90の組成の50 nmサイズのナノ構造体を作製した。
 放射光ピンポイント構造計測システムの構築では、実デバイス相当の励起パルスレーザー光源、高強度ピンクビームの活用、パルスセレクターによるバンチの選択的利用、レーザー変位計を用いた試料位置精密制御を実現し、これら要素技術のシステム化、最適化を行った。
 原理検証実験では、300 psの励起レーザー光照射によって、約70 nsの遅延後に、15~20 nsの短時間で相変化することを確認した。実デバイスのディスク回転速度、ナノ構造体の記録サイズを考慮して実験結果を評価した結果、現行光ディスクで問題となっている書き込み速度、容量の問題が解決されることを明らかにした。
 以上のように、本長期利用課題は、SPring-8で開発されたピンポイント計測基盤をデバイス開発の評価装置として最適化し、新しい光ディスクの有効性を原理検証したもので、非常に高く評価される。今後、SPring-8の多様なバンチモードやXFELの短パルス光を用いた構造ダイナミクス解析による現象理解の深化が期待される。

 

 

〔成果リスト〕
(査読有)

[1] SPring-8 publication ID = 21503
K. Ohara, L. Temieitner, K. Sugimoto, S. Kohara, T. Matsunaga, L. Pusztai, M. Itou, H. Ohsumi, R. Kojima, N. Yamada, T. Usuki, A. Fujiwara and M. Takata: "The Roles of the Ge-Te Core Network and the Sb-Te Pseudo Network During Rapid Nucleation-Dominated Crystallization of Amorphous Ge2Sb2Te5" Advanced Functional Materials 22 (2012) 2251-2257.

[2] SPring-8 publication ID = 25202
T. Matsunaga, R. Kojima, N. Yamada, Y. Kubota and K. Kifune: "Structural transformation of Sb-based high-speed phase-change material" Acta Crystallographica Section B 68 (2012) 559-570.

[3] SPring-8 publication ID = 23877
N. Yasuda, Y. Fukuyama, S. Kimura, K. Ito, Y. Tanaka, H. Osawa, T. Matsunaga, R. Kojima, K. Hisada, A. Tsuchino, M. Birukawa, N. Yamada, K. Sekiguchi, K. Fujiie, O. Kawakubo and M. Takata: "System of laser pump and synchrotron radiation probe microdiffraction to investigate optical recording process" Review of Scientific Instruments 84 (2013) 063902.

[4] SPring-8 publication ID = 25201
N. Yamada, R. Kojima, K. Hisada, T. Mihara, A. Tsuchino, N. Fujinoki, M. Birukawa, T. Matsunaga, N. Yasuda, Y. Fukuyama, K. Ito, Y. Tanaka, S. Kimura and M. Takata: "Phase-Change Nanodot Material for an Optical Memory" Advanced Optical Materials 1 (2013) 820-826.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794